武闘大会(後編)
何とか書き終わりました。
さて、武闘大会優勝の座は、一体誰の手に!?(ちなみに、武闘大会の話はそこまでメインではありません。)
さあ、いよいよ武闘大会当日となりました。武闘大会という名前ですが、ここは魔法学園なので、参加者の多くは魔法を用いて戦い合い、その実力を競う大会となっています。
この武闘大会は、『聖女伝説2』でもかなり重要なイベントとなっていて、この大会で上位に入賞することで、攻略対象者の好感度を一気に上げることが出来るようになっています。特に、ガイアス様ルートの場合、ガイアス様が登場するのが二年生になってからなので、武闘大会での優勝は必須条件とも言われていました。
さて、そんな重要な武闘大会で、私が今何をしているのかというと・・控え室の中で、ある人物と向かい合っています。
その人物は、肩まで伸ばした白に近い薄緑色の髪の毛・・これはお母様譲りです。貴族の令嬢にしては髪が短いとよく言われますが、長いと修行の際に邪魔になりますし、それにお母様も似合ってると褒めてくださるので、私はこの髪型を気に入っています。そして、ルビーのように赤い瞳・・これはお父様譲りです。この目の色と髪の色のせいで、アズリエル様にはウサギみたいだとからかわれたこともありましたっけ。
・・はい、どこからどう見ても、何度も鏡で見てきた私、アンジェリカ・スパルタンそのままです。私の目の前に居る“私”は、自分の身体をひとしきり眺めた後、私の方を見てこう言いました。
「・・まさか、この俺がアンジェリカ・スパルタンになった自分の姿を見ることになるとは思わなかったぞ。」
「・・私も、ガイアス様の姿になる日が来るとは想像していませんでしたよ。」
そう、今、私とガイアス様は、ゼル君の魔法によってお互いにその姿を取り替えているのです。
何故、私たちがこんなことをしているか・・その理由を語るには、私とガイアス様が初めて会ったあの時に遡る必要があります。
私がうっかりガイアス様の目の前に出てしまったあの後、当然私は帰ることが出来るはずもなく、ガイアス様は私を親の敵でも見るような目で睨み付けてきました。
「アンジェリカ・スパルタン・・!!ここで会ったが百年目!!俺の兄上を奪ったその罪・・死んで詫びろぉぉ!!」
ガイアス様はそう叫ぶと共に氷魔法で作った氷塊を私目掛けぶつけてきました。私は、とっさにその氷塊を拳で砕いたのですが、砕いた破片の一部がちょうどガイアス様の顔面へと飛んでいってしまい、ガイアス様は眼鏡が割れる音と共に一撃でノックアウトしてしまいました。
「ああ!?ご、ごめんなさい!!わざとじゃないんですぅぅ!!」
慌てて駆け寄った私に対して、ガイアス様は悔しそうな表情を浮かべ、こう言いました。
「く・・殺せ!!」
・・貴方はどこの女騎士ですか?
私は勿論、ガイアス様を殺すつもりはなかったので、ゼル君にも手伝って貰ってガイアス様の怪我を手当てすることにいたしました。私が手当をしている間、ガイアス様はずっと不思議そうな様子で私のことを見つめておられました。
「・・何故俺の手当をするのだ?俺は、先程貴様を殺そうとしたのだぞ?」
ガイアス様はそう私に尋ねてきましたが、私からすればガイアス様が何故そのような疑問を持つかの方が不思議でした。
「何故って・・私が怪我をさせてしまったのですから、治療するのは当たり前ではないですか。それに、あれくらいの攻撃じゃあ、私は殺されませんし。」
「・・成程、強者故の余裕という奴か。ははっ!これではまるで道化だな。」
ガイアス様は、そう言うと乾いた笑いを浮かべます。そんなガイアス様を見たゼル君は、ふん!と鼻を鳴らしました。
「今更そんなことに気がついたのか?実際、全く関係のないアンジェリカ様に対し嫉妬するお前は、見ていて滑稽でしかなかったぞ?」
「そうだな・・。確かに、私が幼稚だった。アンジェリカ・スパルタン。先程は、いきなり攻撃してしまって、すまなかった・・。」
あら?ガイアス様、思っていたよりも素直ですね。当然、私は既にガイアス様のことは許していたので、にっこりと微笑んでこう言いました。
「そのことに関しては既に気にしていません。私の方こそ、怪我をさせて申し訳ありませんでした。」
お互いに謝罪しあったところで、私たちの間にあった気まずい雰囲気はすっかりなくなり、私は、ここでようやく本題のアズリエル様たち兄弟の話に入ることが出来たのでした。
「・・というわけで、アズリエル様はガイアス様から避けられている気がすると仰っていたのです。」
「何と言うことだ・・!!俺はてっきり兄上が俺のことを避けているとばかり・・。」
成程、つまり、お互いがお互いのことを避けていると思ってしまったせいですれ違ってしまったのですね・・。しかし、それだけが理由ではないでしょう。兄弟の仲がぎくしゃくしてしまったのは、ガイアス様が言っていたようにアズリエル様が私の家に遊びに来る頻度が増えたことで兄弟の時間が減ってしまったことも理由の一つだと思います。改めて私がそのことも謝罪すると、ガイアス様はもう気にしていないと仰ってくださいました。
「・・それに、兄上が貴女に惹かれた理由も何となく分かった気がするしな・・。」
「?ガイアス様、何か仰いましたか?」
「いや、何でもない。・・それよりも、兄上ともう一度仲良くなるには、一体どうしたら良いか・・。」
ガイアス様がぼそりと何か呟いたような気がしたのでそう尋ねたのですが、ガイアス様には上手いことごまかされてしまいました。むむ・・何を言ったのでしょうか?少し気になりますが、確かに今はアズリエル様とガイアス様が仲直りする方法について話し合う方が大事です。
「そうですね・・。実は、それに関しては一つ案を持っております。」
「何!?それは本当か!?」
私の言葉に、ガイアス様が恐ろしい形相で食いついてきます。そんなガイアス様に対して、私は得意げに胸を張りつつ、そのアイデアを述べました。
「簡単なことです!!仲直りするには、拳で語り合うのが一番!!お互いの気持ちを拳に込め殴り合うことで、どんなにいがみ合っている者同士でも仲良くなることが出来るのです!!」
そう!!これに関しては、私とルルが良い例です。ルルと私は、最初は悪役令嬢とヒロインという相容れない関係だったにも関わらず、決闘をした後は大親友になることが出来たのですから。
「な、殴り合うだと!?し、しかし何年もまともに話をしていないというのに、いきなり決闘を申し込むというのはちょっと・・。」
ふふふ・・。ガイアス様がそう答えるのは予想済みですよ!
「問題ありません。私、実は武闘大会でアズリエル様と戦う予定になっているのです。」
「そ、それがどうしたと・・。ま、まさか!?」
そう、そこで私がガイアス様に提案した策・・それこそが、私とガイアス様が入れ替わり、武闘大会に出場するというものだったのです。
さて、話は現在に戻ります。事前の打ち合わせ通り、私の姿に変身したガイアス様は二年生の生徒たちが集まる控え室に、ガイアス様の姿になった私は一年生の控え室へと向かいます。
「それでは、お互いに頑張りましょうね!!」
「ああ、もちろんだ。・・そうだ、アンジェリカ・スパルタン。一つ言いたいことがあるのだが、いいだろうか?」
「はい?何でしょうか?」
そう尋ねた私に対し、ガイアス様はふっと笑みを浮かべ、唐突にしゃがみました。そして、おもむろに私の手を取るとそこにそっと唇を落とし・・ってえええ!?
「・・ありがとう。アンジェリカ・スパルタン。貴女のおかげで、私は兄上と仲直り出来るチャンスを得た。貴女から貰ったこのチャンス、決して無駄にはしないことを誓おう。」
ガイアス様は、そう口にすると、再び笑みを浮かべて去って行きました。私は、思いもよらない事態にしばらく呆然としていましたが、それでも一つ言えることがあります。
・・ガイアス様、何故私の姿に変身している時にあんなことをされたのですか!?自分自身に口づけされたような感じでとても複雑なのですけど!?
私は、複雑な気分を抱えたまま、一年生の参加者が待つ控え室へと向かうことにしたのでした。
やがて、待ちに待った武闘大会がついに始まりました。武闘大会は一年生からなので、ガイアス様とアズリエル様の試合はもう少し先になります。そして、私・・つまり元々はガイアス様の対戦相手ですが、ガイアス様は一年生の最優秀成績者だったため、特別枠として二年生の誰かと対戦することになっているそうです。
ガイアス様は自分の対戦相手については私に教えてくれなかったので、私も対戦相手が誰なのかは知りません。さて、一体誰が対戦相手なのでしょうか。出来れば、知り合いでない方がやりやすいのですが・・。
「・・ガイアス様?ここにおられたのですね。探しましたよぉ・・。」
その時、ふいに後ろから耳元でそう囁かれ、私はつい「ひぃっ!?」と悲鳴を上げそうになるのを何とかこらえました。おそるおそる後ろを振り向くと、そこには、私が見知った顔の人物が、うっすらと目を細めてこちらを見つめていました。
「る、ルルーシュ・ポルカ・・。い、いつからそこに?」
私は、なるべくガイアス様の喋り方を意識しつつ、彼女・・私の親友である、ルルにそう話しかけました。
「先程こちらに来たばかりですわ。対戦相手の貴方様に、挨拶をしておこうと思いまして。」
よ、よりによってルルが対戦相手ですか!?確かに、ルルはまだ昨年の罰が残っていて魔法が使えないため、特別枠での出場というのは理解できますが・・。ど、どうしましょう。私、正体がバレないように戦うことは出来るでしょうか?
「そ、そうなのか。お、お互いベストを尽くそうじゃないか。」
私は、何とか平静を装いつつ、ルルに握手を求めました。ルルは、にっこりと微笑んで私の手を取ると、またしても耳元に顔を近づけ、こう囁きかけてきました。
「・・ところで、貴方からお姉様の香りがするのですが、貴方、お姉様と一体どのような関係なのですか?返答次第では・・もぎますよ。」
も、もぐってナニをですか!?ひいっ!?ルルのこの目、よく見たら全く笑っていません。ほ、本気です・・!!
『さて、次の試合はー・・一年生の最優秀成績者、第二王子、ガイアス・ルミエールと、聖魔法を持つ伝説の聖女、ルルーシュ・ポルカの対戦だー!!』
ぎゃー!?そうこうしている内に、もう出番が来ちゃいましたよ!!どうしましょう、私、今のルルに勝てる気が全くいたしません!!
「ふふふ・・。楽しみですね♡」
さっきまでは楽しみでしたけれど、今は恐怖しか感じていないです!!
『さあ、両者ステージに入場してきました。情報によると、ルルーシュ・ポルカは魔法の使用を禁じられているようですが、『氷魔法レベル9』の使い手のガイアス・ルミエールに対して、一体どのように戦うつもりなのでしょうか!?』
解説の声を聞きながら、私とルルは武闘大会のステージである闘技場に入場し、お互いに向かい合います。見た目がガイアス様でも、中身は私なので、実は私も魔法が使えないのですが、入れ替わっていることがバレたら不味いため、私は一応形だけいつもガイアス様が使っているレイピア型の杖を構えます。
そんな私に対して、ルルはトンファーと呼ばれる武器を構えて私を正面から睨み付けています。ルルの格闘スタイルは、あのトンファーを使った素早い動きが特徴です。ずっとルルと一緒に稽古をしてきた私は、彼女の実力を知っているだけに、より一層警戒を高めます。
私は、あくまでガイアス様として戦わなければならないため、私だと特定出来るような攻撃・・例えば、指で空気を弾いて空気弾を飛ばしたり、空中を蹴って歩くといった行為は避けなければなりません。また、ゼル君には事前に、この変身は一定以上のダメージを受けると解除されてしまうと警告されています。
つまり、私は実力の半分も出せない状態で、ルルからダメージを受けないよう立ち回りながら戦わなければいけないのです。これは、なかなかに難しい注文ですが・・ガイアス様がアズリエル様と戦う前に私の正体がバレては意味がないので、一生懸命バレないよう頑張りたいと思います!!
試合開始の合図と同時に、ルルは早速高速で私の懐へと飛び込んできました。そして、そのままトンファーを振り上げ、私の顎を狙ってきます。
そのスピード、そして思い切りの良さといい、一年前決闘した時とはまるで別人のようです。私は、とっさに杖でトンファーの攻撃を受け止めますが、ルルはもう一方のトンファーを私の腹へ向け回転させます。
私は、右足を蹴り上げることで、そちらの攻撃も何とか防ぐことができました。私の蹴りにより、ルルのトンファーは飛ばされ宙に舞います。しかし、ルルはそのことを気にかける様子もなく、一旦残るトンファーで私の杖を弾き、後ろに跳んで体勢を整えました。ちょうどそこに先程私が飛ばしたトンファーも帰返ってきます。
時間にしては一秒にも満たない間に行われたその凄まじい打ち合いに、観客席からはおおーっ!?と歓声が巻き起こります。
しかし、私とトンファーで打ち合ったルルは、不満気な顔でこちらを睨み付けています。
「・・ガイアス様、何故魔法を使われないのですか?まさか、手加減しておられるわけではないですよね?」
・・不味いですね。やはり、魔法を使わないことに疑問を持たれましたか。これは、完全に勘づかれる前に早くけりをつけなければ!!
私は、ルルの問いかけにはあえて答えず、今度はこちらからルルの元へと向かいます。私の速度に、ルルが目を丸くしたのが見えました。
「は、早い!?この早さは・・。」
流石に怪しまれていますが、こうなったら一瞬で倒してしまいます!!
私は、ルルがガードする前にその懐に入り、肘で鳩尾に攻撃を与えます。もろにその攻撃を喰らったルルは、「うっ・・!」とうめき声を上げて地面に倒れました。
うう・・。少し心が痛みますが、これもあの二人のためなのです!!ルルには後でクッキーを焼いてあげますから、どうか許して・・!?
「こ、この衝撃・・間違いありません!!やはり貴女はお姉様だったのですね!!」
う、嘘!?何と、地面に倒れたと思ったはずのルルが、口から血を吐きながらも笑みを浮かべて私の足を握りしめてきたのです。そして、私を見つめるその瞳は、先程までとは違い爛々と怪しく光り輝いています。
こ、これは、完全にバレたーー!?
「は、放してくださいルル!!これには深い事情が・・。」
「・・お姉様に何か事情があるのは何となく察しました。恐らく、最近時々姿が見えなくなる時があったことが関係しているのですよね?」
私が小声で話しかけたのに対し、ルルも小声でそう答えてくれます。さ、流石ルル。やはり鋭いです・・。実際、ルルたちに会っていなかった時、私はこっそりガイアス様に稽古をつけていました。
私は、ルルの言葉に頷いて、再び小声で頼み込みます。
「はい、そうなのです。ですから、どうかここは私に協力していただけないでしょうか・・?」
しかし、いつもは喜んで!と私の頼み事を聞いてくれるルルが、今回は私の足を放そうとしませんでした。それどころか、より一層強く私の足を掴んで、にっと笑みを浮かべます。
「・・すいません、お姉様。お姉様の頼みでも、それは聞けません。私、お姉様とこうして再び戦う時のために、ずっとある秘策を用意していたのです!!それも全て、お姉様に私の力を認めて貰うため・・!!さあ、お姉様!!私の愛を!!どうか受け止めてくださいませぇぇぇ!!!!」
ルルはそう叫ぶと、ばっと立ち上がり、そしてポケットに手を突っ込むと、そこから取り出したモノをおもむろに頭に被りました。あれは一体何でしょうか?ぱっと見、白い布のような何か・・。
「すうーーー・・・!!ぷはあ!!お姉様エキス、補給完了!!さあ、お姉様、イキますよぉぉぉ!!!イエーーーーーイ!!!!」
ルルはそう叫ぶと、両手を広げながら私の方へと向かってきます。ルルの姿が近づいたことで、私はようやく、ルルが頭に被っているモノの正体に思い当たり、そして思考がフリーズしました。
・・あれ?あの布、よく見たら平仮名で『あんじぇりか』と書いてある気がするんですけれど。そういえば、ルルが家に来たときお母様に私の幼い頃の下着をねだっていたような・・。
もしかして、いや、もしかしなくても、あれ私が昔履いていたパンツじゃないですかぁぁ!?いやああああ!?何をしているんですかルル貴女ぁぁぁ!?
「ひいいい!?無理無理無理です!!降参!!降参しますぅぅ!!」
『おーっと!?ガイアス選手、突然パンツを被って突進してきたルルーシュ選手にたまらず降参!!この勝負・・ルルーシュ・ポルカの勝ちでーす!!』
解説の方の叫び声に、観客席から再び歓声が巻き起こります。そんな歓声と一部の罵倒を受けつつ、ルルは、パンツを被ったまま満足げにこう言いました。
「ふふ・・。どんな手を使っても、勝ちは勝ちです。私は、たとえ変態と罵られようとも、お姉様に一度勝ちたかった!!」
成程・・。私は、覚悟の上で完全にルルに負けていたという訳ですね。この勝負、私の完敗です。
・・ところで、それはそれとして、パンツは返してもらえませんか?え、無理?・・ですよねー。
・・さて。ルルとの戦いでは、私は情けないことに完敗してしまいましたが、ルルが黙ってくれたおかげで、観客に私の正体がバレることはありませんでした。
そして、いよいよ闘技場では、アズリエル様とガイアス様が戦う番になりました。
「アンジー、お互い全力で戦おうね?」
アズリエル様は、笑顔で私の姿をしたガイアス様に話しかけます。そんなアズリエル様を正面から見つめ、ガイアス様は一切私の口調を真似ることなく、こう答えました。
「そうですね、兄上・・。俺の全力を、貴方にぶつける!!そして、貴方に俺が成長したことを認めて貰います!!」
「そ、その喋り方・・。お前、まさか、ガイアスなのか!?」
流石にこれにはアズリエル様も一発で正体に気付き、驚いて目を丸くします。そんなアズリエル様の問いかけへの返事とばかりに、ガイアス様は宙に無数の氷の槍を浮かべます。
「俺はある女性に教えて貰った・・。大事な人と仲直りするためには、殴り合うのが一番だと。そして、その女性のおかげで俺は今ここにいる。兄上!!もしこの戦いが終わったら・・また一緒に遊んでくれませんか!?」
そんなガイアス様の声を聞いて、アズリエル様ははぁーっとため息をついて、観客席にいるガイアス・・つまり、本物の私へと視線を向けます。
「・・そんなことを言う女性を僕は一人しか知らないんだけれど、まあ、十中八九アンジーの仕業だよね。・・まあいいさ。アンジーには後でたっぷり文句を言うとして・・!!」
アズリエル様は、ぶん!と手を振ると、そこから宙に無数の光の玉を出現させます。そして、ガイアス様に対して初めてにっと不敵な笑みを浮かべると、こう叫びました。
「今は・・久しぶりの兄弟げんかを楽しもうじゃあないか、ガイアス!!さあ、いくぞぉぉ!!!」
「うおおおおおお!!!!」
二人は、雄叫びと共に一斉に互いの魔法をぶつけ合いました。その魔法のぶつけ合いは、二人の魔力が無くなるまで延々と続けられ、その戦いが十分近く続いた頃、ようやく勝者が決まりました。
最後まで立っていたのは、ガイアス様の方でした。ダメージを受けすぎてとっくに元の姿に戻ってしまっていたガイアス様は、魔力切れでふらふらになりながらも、天高くガッツポーズを決めます。それを合図にして、一斉に歓声が湧き起こります。
『突如始まった世紀の兄弟決戦!!何と、勝利を収めたのは、弟のガイアス王子だぁぁぁ!!!!!』
イエーーーーーーーイ!!というサンシャイン家式の歓声が響き渡る中、ステージ上でガイアス様がよろけて倒れます。
「良かった・・。大丈夫でしたか?」
しかし、ガイアス様が地面に倒れる前に、何とか滑り込んで受け止めることが出来ました。勝ったからには最後まで立っていたいものですからね!!
「・・アンジェリカ・スパルタン。すまないが、少し顔を近づけてくれないか?」
「はい?こうでしょうか?」
私は、ガイアス様が突然言ったその申し出に、何も考えることなく顔を近づけました。
ー次の瞬間、ガイアス様はおもむろに私の腕の中で起き上がり、そしてその唇を私の唇に重ね・・えええええええ!?
「ああああああ!?ガイアス、お前、僕の婚約者に何をしているんだ!!」
「このブラコン野郎!!私のお姉様に何しやがったゴラァァ!!!!!」
倒れていたアズリエル様はその光景に慌てて起き上がり、そして観客席にいたルルも罵声を上げながら飛び込んできました。
二人によってあっという間に私から引きはがされたガイアス様は、ボコボコに殴られていましたが、私は一人、その光景を見ながらドキドキする心臓を押さえ込んでおりました。
はあーっ!!大変びっくりいたしました!!まさか、あんなところでキスをされるとは・・しかし、まあ、キス自体はお父様とよくしていましたから別に慣れているのですが・・。感謝の気持ちを伝えるのにキスをするなんて、ガイアス様も意外に情熱的なところがあったのですね。
あ、ちなみに、武闘大会はミカルダ様が優勝いたしました。それというのも、有力候補だった私やガイアス様、ルルなどがそろいもそろって反則負けという形になってしまったからです。まあ、無断で入れ替わったり会場に乱入してきたりしたらそうなりますよね。
一人だけ今回の件に関して置いてけぼりだったミカルダ様は少し寂しそうにしておられたので、後で優勝祝いにプリンを渡してあげることにいたしました。ゼル君お墨付きの味ですから、絶対に美味しいですよ!!
感想など気軽に書いてくださいねー。いつでも待っていますよ!!
次回はいよいよ卒業式!!ただ、明日は忙しいのでもしかしたら書けないかもしれません。まあ、土日中にはかならず完結させます!!楽しみに待っていてください!!