武闘大会(前編)
ガイアスとの出会いのシーンとかを考えたら一話じゃ納めきれませんでした・・。
今回はこんな終わり方ですが、次回はもう武闘大会当日から話が進みます。
光陰矢のごとし、という諺が日本には存在しましたが、この世界においても月日が経つのは早いもので、私はこの度魔法学校の二年生に進級いたしました。
この一年、思い返せばいろいろなことがありましたが、やはり一番印象深いのは初めての魔物討伐クエストのことですかね。あの事件をきっかけに、私はようやくヒロインのルルーシュとも仲良くなることができました。
今では、ルルーシュは私にとっての大親友です。最近は、親しみを込めて『ルル』と呼ぶようにいたしました。
しかし、ルルの方は何故か私のことを『お姉様』と呼ぶようになりました。私は、同い年なんだし、名前で呼んでくれと頼んだのですが、
「私にとってお姉様は尊敬すべきお姉様ですから!!」
とミカルダ様のようなことを言って全く呼び方を変えようとしなかったので、またしても私が折れる形となってしまいました。
また、一年生の終わりには、一度ルルを実家へと連れて行ったこともありました。
私のお父様のパパイラス・スパルタンも、お母様のマミア・スパルタンも、二人とも私と同じ転生者であり、『聖女伝説2』の大ファンだったので、二人とも大興奮でルルを歓迎してくれました。
ただ、少し気になるのは帰り際にルルがお母様に私の幼い頃の衣服をくれないかとねだっていたことです。出来れば下着を貰いたいと言っていた気もするのですが、一体私の幼い頃の下着を貰って何をするというのでしょうか・・?
・・とまあ、こんな形で、ルルとも友達になれた一年生の一年間は、私にとってかなり充実したものだったことは間違いないですね。
そして、二年生のクラスですが、魔法学校は基本一年生の時からクラスが変わることはないため、アズリエル様やミカルダ様、ルルとはまた一緒のクラスです。
最近は、もっぱら私を含めたこの四人で集まって話をすることが多くなってきました。最も、アズリエル様はまだルルに苦手意識を持っているようですが。ミカルダ様に関しては、あのクエストの三日後にはルルと一緒に私の稽古を受けるくらい打ち解けるのが早かったです。これに関しては、流石ミカルダ様、というところですね。
そして、今日も昼休みにいつものように四人で集まって話をしていたのですが、ミカルダ様がおもむろに発した言葉により、今年入学して来たアズリエル様の弟君、第二王子のガイアス・ルミエール様のことに話題が移りました。
「そういえば、アズリエル殿の弟君は今年入学されたのでしたな。私はまだ顔を拝見してことがないのですが、一体どのような御仁なのでしょうか?」
ミカルダ様のその問いかけに答えたのは、何故かアズリエル様ではなくルルでした。
「ガイアス様は、そのクールな見た目、そして『氷魔法レベル9』という適性から、令嬢の間で『氷の貴公子』と呼ばれ、大変話題になっている方ですわ。確か、入学時の筆記試験では満点をとったとか。」
「ルル、貴女とっても詳しいのですね!!」
「お、お姉様に褒めて頂けるなんて・・!!ルルーシュ、今最高に幸せですぅぅ!!」
ルルはそう叫ぶと鼻血を出して床に倒れてしまいました。しかし、その光景はここ数ヶ月何度も見たモノだったため、私たちは特に気にすることなく会話を続けます。
「ガイアスはそんな風に呼ばれていたのか・・。僕、全然知らなかったな。」
「ふむ?弟君から話を聞いたりなどはしなかったのですか?」
「僕たち、家でもあんまり話さないしねぇ。・・それに、あいつは僕のこと嫌いみたいだし。」
「ええ!?アズリエル様、ガイアス様と仲が悪いのですか!?」
アズリエル様の口から語られた衝撃の事実に、私は思わず目を丸くします。そんな私の反応に対して、アズリエル様は困ったように眉を下げました。
「うーん・・仲が悪いって言っても、喧嘩したりとかはないんだけれどね。ただ、何となく話しづらいというか・・。昔はよく、僕のやったことを何でも真似するような可愛い弟だったんだけど。」
ガイアス様のことをそう語るアズリエル様は、どことなく悲しそうに見えました。いつも明るいアズリエル様にそんな顔をされると、こちらまで悲しい気持ちになってきます。
「アズリエル殿も苦労されているのですなあ。私は、一人っ子なので兄弟故の悩み、というのは正直よく分かりませんね。」
確かに、私もミカルダ様と同じで兄妹が居ないので、アズリエル様の抱える悩みはよく分かりません。しかし・・兄妹が居ないからこそ、兄妹を持つ方々には仲良くしてほしいと思ってしまうのは、私のエゴでしょうか?
「・・私、アズリエル様とガイアス様が仲直り出来るよう、何かお手伝いしたいです!!」
「アンジーが僕たちのことを心配する必要はないよ。・・僕たち兄弟の話はもういいからさ、もうすぐ武闘大会だよね?皆、最近調子はどうなの?」
「おお!!そういえばそうでしたな!!私は、師匠の指導のおかげで以前よりもより効率的に音魔法を使うことが出来るようになりましたぞ!!腹から声を出すことがより大きな声を出す秘訣だそうで・・。ほら、この通り!!イエー---イ!!!!」
むむ!!アズリエル様、あからさまに話をそらしてきましたね。単純なミカルダ様が武闘大会の話に乗ってしまったせいで、結局ガイアス様のことはうやむやなままこの日は解散となってしまいました。
私は、ルルを回収して彼女の部屋へと送り届けた後、自室にてゼル君と作戦会議を始めます。
「ゼル君、どうしたらいいと思いますか?」
「そうですね・・。私が愚考いたしますに、まずはそのガイアスとやらがどのような人物かを知ることが大事かと。」
「ガイアス様に会ってみるということですか?」
「はい。アンジェリカ様は今、アズリエルから話を聞いただけです。しかし、問題を解決するには、双方の視線に立って物事を見ることが大事になってきます。」
「成程・・!!確かに、何でガイアス様がアズリエル様を避けているのか、アズリエル様の話だけでは分かりませんものね!!流石はゼル君!!頼りになります!!お礼にプリンあげちゃいます!!」
「アンジェリカ様に褒めて頂けるとは、この私、下僕として最高の幸せでございます・・!!」
うーん、この反応。やっぱり、ルルとゼル君って少し似ていますね。まあ、ゼル君は鼻血を出すようなことはありませんが。でも、プリンに反応して涎が垂れちゃってますよ?ふふふ、可愛いです。
さて・・と、私は尻尾があったら絶対に振っているくらい目を輝かせてプリンを頬張っているゼル君を横目に、ガイアス様とどうやって会うかを考えます。
出来れば、アズリエル様には気付かれないようにして会いたいのですが・・アズリエル様は、婚約者という立場からか、基本いつも私のそばにいて見守ってくださることが多いので、なかなか彼の目を盗んで弟君にお会いすることは難しいです。
「・・というわけで、アズリエル様を何とか引き留めてくれませんか?ルル。」
「お姉様のお頼みとあれば何でもいたしますわ!!・・それに、個人的にアズリエル様とは一度じっくりお話ししてみたいと思っていましたし。フフフフ・・。」
そこで、ルルに頼んでみたところ、快く引き受けてくれました。まあ、ルルは元々アズリエル様の大ファンだったそうですし、彼女にとってもこの依頼は喜ばしいモノだったのかもしれません。・・何か少し目が怖い気もしますが、何も問題はないでしょう!!
さて、これでアズリエル様のことに関しては何とか解決?いたしましたが、まだどうやってガイアス様を見つけるかという問題が残っています。
しかし、まあ、そちらに関しては既に策は考えてあります。私は、一旦校舎から外に出て、そこから空中歩行を使って空を飛び、魔法学校の中でも一番高い塔の頂上まで一気に登ります。
そして、私はそこで鼻から大きく息を吸い込みます。私の考えた策とは、匂いでガイアス様の居場所を突き止めるというものでした。ゲームの中で、確かガイアス様はアズリエル様と同じ柑橘系の香水を使っているという設定があったので、その匂いを辿ろうと思ったのです。
そして、案の定二カ所から目的の匂いを見つけることができました。一カ所は、私たちのクラスの教室からの匂いなので、あれはアズリエル様のモノでしょう。そうなれば、残り一カ所、そちらがガイアス様の居る場所に間違いありません。
「訓練場ですか・・。そういえば、今年から一年生も成績優秀者は武闘大会に参加出来るようになったんでしたっけ。ガイアス様も武闘大会に参加するということなんでしょうか・・?」
まあ、それも会ってみれば分かる話です。私は、ガイアス様がいるであろう訓練場めがけ、キックの力を利用して真っ直ぐに飛んでいくことにしたのでした。・・その時、塔の壁の一部をうっかり破壊してしまったのは内緒です。ごめんなさい!!後で弁償しますから!!
訓練場にそのまま着地してしまえば、衝撃で訓練場の地面が凹むことが予想されましたし、ガイアス様も驚かれると思うので、高速で地面に激突する寸前、ゼル君に頼んで影の中に私の身体を潜らせることにします。
「・・!?・・今、後ろにもの凄い早さで何か落ちてきた気がしたんだが・・気のせいか?」
ガイアス様が後ろを振り返りそう呟く声が聞こえてきました。影の中からその顔を見た私は、思わず心の中でおおっ!と歓声を上げます。
『聖女伝説2』における攻略対象者の中でも、クール系キャラとして兄であるアズリエル様と人気を二分する第二王子のガイアス・ルミエール様。彼の特徴は、水色の髪とその顔にかけた眼鏡です。まさしくゲームの中で見た彼が、そのまま私の目の前にいました。アズリエル様はゲームとだいぶ見た目が変わってしまったのに、弟であるガイアス様は全く変わっていないのが何か変な感じもしますが。
「・・それにしても、初めて入ってみましたが、影の中って意外に狭いんですね。」
「も、元々一人用のスペースしか確保していないので・・。そ、それよりアンジェリカ様、少々その・・顔が近いです。」
確かに、ゼル君の顔がすぐ近くに見えます。しかし、ゼル君に対して今更照れることなどないでしょう。ゼル君は何故か少し顔が赤い気もしますが・・。
は!?もしかして、ゼル君熱があるのではありませんか!?それなら私、彼の飼い主として体調をみてあげねばなりませんね!!
そう思った私は、ゼル君のおでこに自分の額をくっつけます。すると、ジュッと音を立てて私の額にかなりの熱が伝わってきました。
「ぜぜぜ、ゼル君!?何か凄い熱ですよ!?」
「き、気にしないでくださいアンジェリカ様!!それよりも早くガイアス様の様子を見なくていいのですか!?」
は!?確かにゼル君の言うとおりですね・・。ガイアス様はいつの間にかまた訓練に戻ったのか、影からは姿が見えなくなったので、まだ熱がある様子のゼル君のことは気にしつつも、ガイアス様に気付かれないよう、そっと影から頭を出しました。
「くそ・・!!こんなんじゃ、兄上には到底及ばない・・。俺は、何とか兄上に認めて貰わなければならないんだ・・!!」
ガイアス様は地面に拳を突き立て、悔しそうにそう呟いています。そんな彼の目の前には一体のかかしが置かれていました。先程まで彼はそのかかし相手に自分の魔法をぶつけていたのか、かかしはすっかりボロボロになっています。
しかし、先程のガイアス様の発言から察するに、彼は別にアズリエル様を嫌っている訳ではないような気がします。もし嫌っているなら、『認められたい』などという言葉は出てこないはずですから。
「兄上・・。俺は・・、兄上に認めてほしくて今まで頑張ってきた!!それなのに、兄上はあの女のことばかり・・!!」
・・ん?何か雲行きが怪しくなってきた気がしてきました。もしかしてその女の人って・・。
「アンジェリカ・スパルタン・・!!彼女のせいで、兄上は変わってしまった・・。許さない・・俺の兄上を奪うなんて・・絶対殺してやる!!」
ガイアス様はそう言うと、立ち上がり既にボロボロのかかしに向かって氷魔法で作った槍を放ちます。そして、よく見たら、そのかかしの顔には写真が一枚貼られていました。
・・うん、もしかしなくても、あの写真私の顔の写真ですね。
そういえば、ガイアス様はゲームの中でも最初はヒロインに対してかなり冷たい態度を取っていましたっけ。結局ゲームの中ではその理由が語られることはありませんでしたが、もしかしてヒロインに兄であるアズリエル様を取られたと思ってあの態度だったのでしょうか?確かに、ガイアス様はヒロインが二年生にならないと出てこないので、その時点でアズリエル様は既にヒロインに好意を持っている確率が高いわけで・・。
え、そう考えると、ガイアス様アズリエル様のこと好きすぎません?だって、ここまで私に恨みを持っているのも、言ってしまえば嫉妬ということですよね?
それならば、私がガイアス様にアズリエル様を奪うつもりはないと話せば丸く収まるのではないのでしょうか。アズリエル様のことを嫌っている訳でないのなら、上手くいけばそれで仲直りのきっかけになるはずです!!
その時、ふいにガイアス様がこちらを振り向きました。私は、とっさに影の中に顔を沈め、姿を隠します。
しかし、顔を沈めるその勢いが強すぎて、私はゼル君にのしかかる形になってしまいました。
「はわわ!?すいません、ゼル君。苦しくはないですか!?」
「あ、アンジェリカ様・・。む、胸が・・アンジェリカ様の胸が顔に当たって・・。」
その直後、ゼル君の身体が今までの比じゃないくらい一気に熱くなりました。私は、その熱さに耐えきることが出来ずに、うひゃあ!?と叫んで思わず影の中から外に飛び出してしまいます。
「!?お、お前は・・アンジェリカ・スパルタン!?何故貴様がここにいるんだ!!」
そして、当然と言うべきか、ガイアス様は飛び出してきた私を見て目を丸くしてそう叫びます。
「ど、どうも・・。初めまして、私、アンジェリカ・スパルタンです。・・私、貴方が私を殺したいとか言ってたこと、全然聞こえていませんでしたから!!」
だからお願いします!!ここから帰らせてください!!流石にこの状況は少し気まずいです!!誰か・・誰か助けに来てくださーい!!
感想などいつでも大歓迎です!!確認次第必ず返信いたします。
後残り数話ですが、これからもこの作品を応援よろしくお願いしますね!!