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出会い

starlightの方に挟みたかったんですが…分かりにくそうなんで、別に作っちゃいました。とにかく書き続けることが目標です。よろしく。

季節は春を迎え、風のように月日は夏へと緩やかに進んでいた。


 町は人通りも少なく、汗をかきながらマラソンをしている中年の男性や、眠気を押し殺して犬の散歩をしている少年の存在が、妙に朝という時間帯を実感させる。


 涼しい朝独特の風…普段何気なく漂っている空気も、服の上から肌で感じることができた。


 時刻は早朝である。今聖は、普段ならまず起きていないこの時間帯に、荷物が詰まったバッグを背中に背負い、居場所のなくなった刀を腰に下げながら、のんびりと歩いていた。


 ギルドの住む町から、首都ギルバードまでは馬車を走らせればほんの数刻。徒歩で半日程の距離である。平らで何も無い平原が聖の横に広がり、それを縫うようにして、平坦な一本道の道路が行く道を示していた。


 「そう言えばラスルコフ学院とやらに行くのはいいが、どこに泊まるんだ?」


 隣には精霊であるメルシーが、興味深げに質問を浴びせてくる。どうやら初めての体験、一人暮らしや主都への旅路に興奮しているのは聖だけではないようだ。


 「確か寮…とか言う専用の屋敷があるんだって。一人部屋だといいな。」


 「そうだな。聖と私以外はいらないだろう。もし他の奴がいたら追い出すしかないな。」


 「…はは…本当に一人部屋ならいいな〜。」


 本気でやりかねないメルシーを横目に、穏やかな日々にするために是非とも一人部屋がよいと不安を交えながら願う聖だった。


 「それで、そこには本はあるか?森は?そもそも…」


 単純な質問と応答の繰り返し、だが会話が尽きることはない。聖は迫りくる質問に少々たじろいでいた。


 その会話の最中、僕の背にある荷物が歩くたびに背中とぶつかってきて、さっきから軽い痛みと衝撃音が妙に耳に響いてきていた。この中身……実はほとんどが本なのだ。

 別名メルシーの分身。宝物。人類の遺産?…出発二日前の夜。必要最低限の物意外、入れないでって忠告してバッグを渡したのに、朝起きたらベッドの横にパンパンに膨れ上がって同情が沸き起こる程の、哀れな物体が横たわっていた。


 家中の本をかき集めたのか…辛うじて見える隙間からは四角い本が見え隠れし、背中が歩くたびに硬い衝撃を受ける。角が当たって偶に結構痛い…すぐに中身をチェックしたら、案の定大量の本が…まぁ全部が恋愛小説や冒険もので、手放したくない気持ちも分かるんだけど、さすがに焦った。


 「私に道中死ねと言うのか?これらを読破するいい機会だ。これから行く先にあるとは限らないしな。」


 「いや、そんな長い道でもないし、…しかもこれ持つの僕なんだけど…せめて半分に…」


 必死の説得も懇願も意味をなさず、母さんまでもが、『何いじめてるの!メルシーちゃんが可哀想でしょ』とか言い出す始末…味方は一人も存在せず、結局泣き寝入り…いや、そこまではとりあえず我慢できた。メルシーにも散々聖も読めだの力説されたのは置いといて、我ながらよく決断したなと感心するくらいだったんだけど…


 道中一冊も本を読んでいないのは何故!?


 「ギルドには行くのか?私の予定と大分かけ離れてしまっているのだが。」


 「うーん…あんまり興味はないかな……」


 生返事をしながら、本について触れるか触れないか…ここで言おうか言うまいか聖は割と真剣に悩んでいた。そんな聖の戸惑いに気づく様子もなく、メルシーは笑顔で質問を投げかけてくる。


 でも、何だか嬉しそうだしな…ここで…言いづらい…もの凄く言いづらい…


 心中で軽く葛藤…していたその時、道幅いっぱいの大きさの馬車が、もの凄い速度で後方から近づいてきた。遠くから見てもはっきり分かる…あの見事に装飾された外装、只ならぬ気品が伝わってくる。時たま町で見かける貴族の馬車とも明らかに格が違っていた。


 多分馬を操っている業者も、格好いい燕尾服を着こんだ執事とかかな〜と、安穏に想像していた聖だったが、


 「み、道を開けてくれ〜〜〜〜そこの人!!!死〜しし、んでもいいのかーー???」


 「は?」


 思わず疑問の言葉を投げ交わしてしまった。なんと馬を操縦していたのは、想像したのよりは少し若いが、黒い燕尾服を着た真面目そうな青年だった。必死に手綱を動かし、興奮しているのか異様に赤い顔が聖の目をくぎ付けにした。


 ちょっとイグリオートさんと似てるな…などと気楽に思いつつ、道を譲…避難しようと足早に道路から退出した。


 「なぁ聖。あの馬車を止めて、首都とやらまで乗せてもらったら凄い楽じゃないか?あんな馬車に乗れたら、その重い荷物ともおさらばできるぞ?」


 滅多にない画期的なメルシーの提案に意表を突かれ、思わずちらっと顔を覗き込んだ。その両目は馬車に奪われ釘づけにされていた。それも、とびっきりに羨ましそうに…これも小説の影響だろうか。


 「いやいやいや、あんなに急いでるんだしさ。止めること自体無理だよ。」


 メルシーには気の毒に思ったけど、あの速度の馬車を止めるなんて並大抵のこと不可能だろう。例え馬車の前に飛び出したとしても、乗ってるのは貴族の人間だろうから関係なしに轢かれちゃうだろうし…あれを破壊する勢いでやらないと到底…


 「大丈夫だ。今こそ修行の成果を見してやれ。」


 案の定、爽やかな顔をしているが、十中八九それは破壊してでも止めろという意味だろう。


 「ここで成果とか言われても…無理無理。乗せてもくれないよ。」


 「…そうか…じゃあ、奪えばいいか…馬なんて手綱をひっぱって鞭で叩けば前に進むんだろう?」


 満面の笑みで、喜々として馬車を指さしながら言った。問題解決と言わんばかりの口調である。指さされた馬車を眺めながら、無意識に右手で頭を掻きながら、溜息を吐いた。そうこう言っている間に、先ほどまで後ろにあった馬車は、最早視界から消えつつあるのである。


 「…そんなに乗りたいの?そもそも、それは強盗って言って犯罪なの。だいたい…そうだなぁ…小説みたいに、窮地に陥っているところを助けたりとか、落し物を持ってたりとかさ、そう言ったあり得ないことが起きない限り、現実はそううまくいかないって。」


 「……じゃあ、いいんじゃないか?」


 「え?」


 メルシーの指が、その一言と共にまたもや後方に向けられる。馬車の騒がしい音と、馬車を引っ張る四頭もの馬の嘶きで気付かなかったが、その指先には、明らかに武装した四人の集団が颯爽と馬を走らせていた。それぞれが殺気立ち、近寄りがたい空気を全身に纏っていた。



 

ターシャ:せっかくの新スタートなのに私の出番は?登場は?

マリヤ:それを言ったら私だって…

ジェンネ:あんたたちは何言ってんだぃ。初登場は私に決まってるさ。なぁ、チョモランマ。

チョモランマ:はい……恐縮です……

メルシー:馬鹿め。お前達の出番なんてあるはずないだろ。私と聖だけだ。そうだろ、チョモランマ

チョモランマ:あの…(睨まれる)…はい……恐縮です。……どうしよう……


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