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「とんでもない事しやがるな」

 ベリア湾の外側から戦況を眺めながら、ロクゼオンは呟いた。自らが率いて来た軍は主戦場から逃げ出す船を確実に追い詰めている。有利な状況だった筈だが、今の一撃でやや様子が変わって来た。ロクゼオンの軍の一部も今の一撃の犠牲になっていたのだった。それでも、と冷静にロクゼオンは考えていた。今の一撃は敵味方の区別無く、撃ち落としていた。しかも小回りが利く技というわけではなさそうである。向こう方がヤケを起こさない限りは、まだまだ有利に事は運べるはずだった。


「きゃーーー」

 短い悲鳴が上がる。いつの間にか背後から敵兵が忍び寄っていたのだった。いち早くそれに気づいたグァヤスがすんでのところで、エディラとの間に割って入ったが、肩口をざっくり刺し貫かれている。そして、そのままエディラは髪を掴まれて、連れ去られるところだった。振り向き様にこれらの事を理解したサグレスは直ぐ様、舳先からとって返しエディラを囲む敵兵の間に滑り込む。短剣で左右をなぎ払っているところへ、ラディックとグロリアも応戦にかけつけていた。そして、遂にはエディラを取り返し、彼女を芯にぐるりと囲んだ。

「サグレス……」

「絶対守るから、心配するな」

「うん」

 サグレスの背中に隠れながら、エディラはひとつ頷いた。


「今のは何だ?」

 語気も鋭く問うゲオルグにクルゼンシュテルンは静かに剣を構え直した。

「我が君の望みを叶える為にもここで、お前を倒す」

「それは、ロクでも無い望みだな。こちらにも意地がある。どちらにしてもここで終わりだ」

 そして再びゲオルグとクルゼンシュテルンの剣の応酬が始まった。しかし、流石にどちらにも疲れが出たのかやや動きが重くなって来

ていた。その隙を先に掴んだのがゲオルグだった。

「これで終わりだ!」

 ゲオルグの一手が遂にクルゼンシュテルンの腹部を深く刺し貫いた。確かな手応えに剣を引いてナイジェルニッキに向かおうとしたゲオルグの剣を、クルゼンシュテルンの手が押さえた。その手のひらから血が溢れ出す。

「離せ」

「行かせん」

 ゲオルグの剣をしっかと掴みながら、クルゼンシュテルンが膝をつく。その口から大量の血が溢れていた。

「くそっ」

 剣を離し、ゲオルグはナイジェルニッキへと向き直る。しかし、その足が止められた。クルゼンシュテルンの手がしっかりとゲオルグの足首を捉えていた。

「行かせんと言ったはずだ」

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