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 サフランのお陰で易々と敵陣深く切り込めた<我が女神号>の目指す先はただ一つだった。

「後は任せるぞ」

「まだ、距離がありすぎて無理だ!」

 ゲオルグを慌てて引き止めようとしたイーグルだったが、ゲオルグはあっと言う間にマストの一番上まで登ってしまっていた。

「もう、止めるのは無理ですね」

 やや諦めた様にエスメラルダが見送る先にスレイがいるのにシナーラは気がついた。きっとスレイはゲオルグに加勢するんだろうなとシナーラが思う間も無くゲオルグは空高く飛び、じきに敵司令船の真っ只中に降り立っていた。幸いな事にゲオルグの名は知れ渡っていると見え、その前に立つのはクルゼンシュテルンだけであった。

「さぁ、こちらも体制を整えましょう。減速を……」

「このまま、突っ込めば良い!向こうを足止めだ!」

 サグレスの目はひたと敵船を捉えている。自分たちにはサフランの様な操船術は持ち合わせていない。だったら、いっそ相手の横腹にぶち当たった方が威力があるに違いない。そう、サグレスは考えたのだった。

「その考えに乗った!こっちの正面からぶつけるぞ。どっかに掴まれ」

 シークラウドの一言で、皆の気持ちが固まった。体の大きなデワルチとグロリアがエディラを両側から支えている。<我が女神号>は最大速度で疾走していた。


「もう一人のご子息もじっとしていられなくなったようですね」

 穏やかにセドフが呟く。海上の様子を見ていたシスヴァリアスも頷いた。

「最後の一働きと言うところだな。あれは女神様に差し上げた子だ」

「それで良いのか?」

「こればかりは仕方ない。あれの道がそうなっていたのだからな。それより宰相殿の方がもっと気の毒だ。手塩にかけたご子息に先立たれ、今また後継を失われようとしている……」

 やり場の無い話を打ち切り、シスヴァリアスは指示を出した。

「敵船を一隻残らず湾外へ追い払え。砦へも弾を惜しまず砲撃させよ」

 すぐさま、指示は全軍に繰り返され、イングリア軍の士気は最高潮に高まっていた。誰もがこの劣勢を跳ね返す絶好の機会だと感じていた。

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