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 クルゼンシュテルンが部屋を後にした後、エトワールはエディラに隣の船の位置とヴァーサの様子などを事細かに伝えていた。しかし、気がつけば外が騒がしくなっている。窓から広がる景色は水平線だけだが、きな臭い匂いや怒声や大きな物音が続いた後、立て続けに砲弾の音も響いた辺りで甲板上で戦闘が起こっている事が容易に想像できた。エトワールはエディラに目をやり、しばし考える。

(上で何かあったな。この混乱に乗じてエディラを隣の船に・・・でも交戦状態だったと考えると、甲板は危険過ぎる)

 船を移るにしても、この船が戦闘状態だとすると、船内は手薄だろうが甲板は船員で溢れている事だろう。

(しかし、戦況によっては乗り移る方の船に被害が及ぶ可能性がある・・・船に被害が出たら逃げる事も難しくなるし、船員の注意が敵に向かっていれば乗っ取れる可能性は大いにある)

 エトワールは腹を決めるとエディラによくよく言い聞かせる様に口を開いた。エディラも不穏な状況は理解できているらしく、大人しく耳を傾けた。

「ここからだと様子は分からないけれど、上で何かが起こっている。今なら隣の船に移って逃げるチャンスじゃないかと思うんだ。とても危険だけど、一人でもやれるかい?」

 エディラは力強く頷くと、その瞳には強い力が感じられる。エトワールには何かあった時には盾になる覚悟があった。

「行くわ。隣の船に真っ直ぐ向かって、そこのイングリアの人を探すのね」

 エトワールはその力強さに思わず破顔すると、力づけるように力強く両肩を抱きしめると手を引いて扉へ向かう。外をうかがった後、そっと扉を開くと予想通り狭い通路に人影は無かった。1層上に上がる階段を上り、通路に出たところで不意にエトワールは自分の腕が掴まれるのに驚かされた。振り返るとそれはナイジェルニッキだった。

「!」

 思わず背後のエディラを隠そうとしたが、遅かった。エトワールの腕を捻り上げておいて、空いている腕でエディラの腕を掴む。エトワールの後から階段を上がって来たエディラは最初何が起こったか分からず、悲鳴を上げた。

「どういう事だい?エトワール」

「う・・・」

 言い逃れ出来ない状況ではあるが、エトワールは何とか理由をつけられないかと頭を巡らす。


 外から船内に入るとその暗さに視界が奪われるのはいつもの事だ。イーグルとシナーラは扉を閉めてまずは、目を慣らす。耳に全神経を集中させるが、人の気配は感じられなかった。やがて視界が復活すると、2人は目を見交わせて階段を1層降りて行く。敵襲に手近な船員は出払ったのか、先を進んでも人影は見当たらない。いくつかの扉を開いてみるが、目だった収穫は無かった。外から見た艤装はイングリア風だったが、中は大陸風であり寄せ集めた感じの内装からして海賊に奪取された民間船の様だった。やはり最近のイングリア船による略奪行為はこの船に理由が有りそうだった。

 更に下層を目指す。階段を降りきる前に、下で人の声がする。覗き込んだ瞬間目に入ったナイジェルニッキの姿にイーグルの思考が沸騰した。

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