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 使者達の退出した後には奇妙な沈黙が支配していた。ガサラフがアクセオールをそっと窺うと、アクセオールはいらいらと親書を捻くり回している。その視線は刺すようにロクゼオンに注がれているが、当のロクゼオンの方はわざとらしく視線を外している。ガサラフにとっては取るに足らぬと思われたこの書簡がロクゼオンの一言によって俄然重要性を帯びてきている。

「こうなると、先のエスネンの使者との交渉はどうなるのでしょうなぁ。かなり好条件だったようだが」

「かといって、古くからの盟友イングリアとの関係を悪くする訳にも行きますまい」

 沈黙を破ったのは壮年のファルハイルだった。言葉の裏にオールア一族に対する嫌悪が滲み出ている。それに追随するように老ハイトゥリエも口を開いた。どちらもここぞとばかりに日ごろからの鬱憤を晴らすようである。そこまでエスネンに肩入れする理由は無かったはずだとカザラフは胸中で呟く。

「エスネン!確か、クルゼンシュテルンと言ったかしら?今時、珍しく堅物だったけど、悪くはなかったわ。ねぇ、おば様?……」

 エリキシアの嬌声にアクセオールの顔がますます険しくなる。その様子に肩を竦めてエリキシアがわざとらしく座を見回した。

「エスネンとは今だ何の公約も交わしてはいない」

「では、イングリアと新たな盟約を結ぶのですな」

 アクセオールの一言にロクゼオンが面白そうに呟いた。それを聞いて慌ててガサラフは口を開いた。

「いや。そう性急に事を結ぶものでは無いのではないか?」

「ここはやはり、いつもの様にどちらにも適当な返事をして置くのが良いかと」

 それまで事の成り行きを見守っていたフェネリシが口を挟んだ。すかさずゼレキエンも同意を表す。

「所詮、他国の事。我らはどちらにも着かず、どちらにも程々に付き合って行くのが正しい道では無いのか?」

 2人ともに普段から日和見な意見が多いのが、カザラフには頭痛の種だった。ファルハイルがすかさずゼレキエンの言葉を引き取って続ける。

「エスネンは内陸の国。イングリアは外洋の国。共にどちらも我らがザルベッキアを通らずに互いには会えん。戦禍にまかれず、得られるものは最大限に、というのが商人というもの。上手い事立ち回り我らの力を存分に振るいましょうぞ」

 アクセオールが同意を示すのを伺い見て、ガサラフは溜息と共に、言葉を吐き出した。

「では、そのように」

「さて、小難しい評議は終わりかな?盛大な歓迎の宴でも仕度いたしましょうか」

 リュクオールがうきうきと立ち上がった。

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