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 それは想像する使者とは全く異なる一団だった。実際、ガサラフの目にそれはとても奇妙に映った。セドフの名代と名乗った男は見栄えはそう悪くないものの、小心者ぶりが窺い知れた。それよりもガサラフの気を引いたのはその後ろに控える士官達だった。左右に控える彼らは堂々としてはいるものの、余りに若すぎると思える。更に控える仕官達はどう見ても子供にしか見えない。また、中の一人は将校と言うよりは男装の麗人と言った風情だった。これでは一国を代表した使者と言うよりは、何かの茶番にしか思われないだろう。それとも彼ら自身が趣向を変えた貢物の一つとでも言うのであろうか?

 案の定、エリキシアとエスカッシュがこそこそと何事か話している。時折忍び笑いが洩れて来る辺り、その内容は想像に難くない。

 ガサラフはこの時期にあえてイングリア王家からの使者を送って来る理由を思い浮かべていた。

 このフェナと呼ばれる神が人から遠く離れた現代には国によって神々との付き合い方が異なる。主神と崇められる天界12神を守護神と祭る国が多い中、イングリアは古代に再生の女神ファンによって与えられた子から続く血統を王位に据えた神王国家である。同じファン女神を守護神と祭る国々の信仰の中心地でもある。

 一方このザルベッキアは新興国であり、大地母神ガーナ・豊穣の女神を守護神としている。陸と海との通商の要所であるザルベッキアには都合の良い事にガーナの夫とされるのは海王神であるため、ガーナを祭る事で海神の加護をも期待出来るという側面も持っていた。

 そしてその海神が慈しんで育てたと言われているのがファン女神である。そのため海を航海するものはファン女神への敬意を忘れなかった。その敬意の形をザルベッキアはイングリアと同盟という形で表しているに過ぎなかった。やや友好寄りであるだけで、ザルベッキアからみるイングリアは商売の取引先のひとつといったところだ。

 しかし、今回の使者はどういうことだろうか?ガサラフにはこの奇妙に見える一団の目的を図りかねていた。


 そうこうするうちヴァーサと名乗る男のぼそぼそとした口上が終わり、ガサラフの手元に封蝋が施された書簡がもたらされた。その印は確かにイングリア王室を示している。ゆっくりとガサラフは室内を見回した。殆どの評議員達が書簡にではなく、使者の一団に強く興味を示しているのは明らかだった。舌なめずりをせんばかりの空気の中で、唯一アクセオールだけが不機嫌そうにいらいらと足を組替えている。この後の評議の事を考えただけで、ガサラフは気が重くなって来た。停滞した空気の中、渋面のアクセオールが口を開きかけた時、背後の扉が大きく開いた。

「遅参した!」

 大声に続いて一際大柄なロクゼオンが大股で室内に入ってきた。

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