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 寄り添って、とは程遠い風情で引き釣り込まれるように入った部屋でサグレスは我が身の不幸を呪っていた。よりどりみどりの状況だったはずが、どこでどう間違っているのかさえ思い浮かばない。そっと天井を仰ぐ間に人型の肉隗がせまってきた。ジョアンナは早くもあらかたの衣服を脱ぎ捨て、寝台に軋みをたてながらサグレスににじり寄って来る。

「ちょっと、ちょっと待……っ」

「さぁさぁ、後は任せておおき」

 にこにこと良く見ればふくよかな中にも愛嬌のある笑顔を浮かべてジョアンナは早くもサグレスを押さえつけている。何とか隙を見つけてその腕の中から逃れようと四苦八苦するサグレスを、しかしジョアンナは手際よく脱がせていくのだった。


 彼女と話がしたくてここまで来たものの、部屋に落ち着いた所でシナーラははたと我に返った。狭い部屋は整然と居心地が良かったが、卓と寝台しかない事でここが只の部屋ではない事を物語っている。

(これって……)

 困惑した表情を浮かべるシナーラを振り向きもせずに少女は寝台に腰掛けた。ショールを落とした肩が小刻みに震えているのが判る。こんな時の振舞い方をシナーラは心得ていなかった。

(こういう時、イーグルやゲオルグはどうするのかな……?)

 この先を考えると自然と赤面して行くのが分るが、どこからどうすればいいのか分らない。シナーラはぼんやりと寝台の少女を見つめた。薄い金色の髪が少女の背中を流れている。サランドラの髪は輝く様な色合いだったが、こちらは柔らかく光る木漏れ日の金だった。そしてその白い華奢な背中には刷毛で刷いたような白い線が二筋ついている。

 いつまで経っても動かないシナーラに不信に思った少女が振り向いた時、丁度シナーラは少女の背中に手を伸ばした所だった。振り向いた拍子にシナーラの指が少女の背中に触れた。

「あ、ごめん。つい……」

 耳まで真っ赤に染まったシナーラが慌てて謝った時、押し殺したような悲鳴が聞えた。

「……サグレス?」

 室外から不意に聞えた情けない声に、シナーラと少女は思わず顔を見合わせて笑った。ひとしきり笑った後、シナーラは改めて口を開いた。

「僕はシナーラ」

「私はナルュ」

 おずおずと口を開く事で互いに気持ちが解れている事が感じられる。シナーラはナルュの隣に腰掛けると、慎重に次の言葉をついだ。

「良ければ君の背中をよく見せてくれないか?」

 途端に少女の表情が硬くなった。


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