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 そのままゲオルグは躊躇無く「山吹の子猫亭」と書かれた建物に入っていく。その様子に顔を見合わせたサグレスとシナーラだったが、すぐにその後を追った。

 中に入ると、そこは広めのホールになっていた。まず、目を惹いたのは階上へ伸びる螺旋の階段だった。精緻な細工の施された手すりの先は階上の手すりに繋がり、その奥には手すり越しに幾つかの扉が見受けられた。しかし、すぐにもっとサグレスの気を引いたのは階下のホールにたむろする女達だった。誰も皆、派手に着飾り白粉にむせ返るようであった。

 「ちょっと、サグレス・・・」

 呆然と見とれているサグレスの袖をシナーラが小さく引っ張った。

 「え、何?」

 「ここって・・・娼館じゃない?」

 「え・・・えぇ?」

 シナーラは声をひそめている。改めてサグレスは周囲を見直した。意味ありげにこちらを眺めやる年齢の雑多な女達は、そう言われれば確かに派手でそれなりに露出の多い姿をしている。

 「まさか・・・」

 その間にゲオルグが慣れた様子で奥にしつらえられた小卓の一つに腰掛けると、すぐに年配の女性が酒を携えて現れた。

 「まあまあ、あんた生きてたのかい!?あんまり顔を出さないから心配したじゃないの」

 「あぁ。すまん」

 「元気なら良いのよ。しかし、また随分男前になって。けど……」

 突然、女主人は小さく悲鳴を上げた。

 「今は、あたしが一番よ。今夜、どう?」

 どうやら、ここの主人らしい女性を押し退けて一際派手ななりをした女がゲオルグの膝に腰掛けた。わざとらしく腿まで露に脚をさらけだす。しかし、ゲオルグは眉一筋動かさずに出された酒を口に運んでいる。

 「ロタ、いい加減におし」

 女主人の静止も聞かずにロタと呼ばれた女は、ゲオルグの首に腕を廻し耳元になにやら囁きかけている。他の女達からはあからさまな不満が洩れる。どうやらゲオルグはこの店では上客のようだった。

 その一部始終を見守りながら、シナーラがサグレスを突く。

 「よく分からないけど、良くない雰囲気じゃない?」

 「あぁ。何だって、あいつはこんな所に来たんだ?」

 「そりゃぁ……」

 口篭もるシナーラに、サグレスが口を開きかけた時、階上に新たな人影が現れた。

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