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二十四話 -年末年始の物語-【12終】

 午後十九時二十一分 高速道路下


 私達は、蕎麦屋を後にして、再び極寒の風が吹き続ける道路を無防備のままにバイクで走っている。

 明かりが一切ない、真っ暗闇の夜道を、バイクの明かり一つ頼りに走り続ける。


「う?ん、良かったね、お姉ちゃん。蕎麦代メッチャ安くしてもらえて」

「……ほんとだよ。ガソリン代とかもあるんだし、五千円全部取られたら絶望していたところだったから」

「あ、そっか。私財布の中身空っぽだからヤバかった」

「翔子ぉ?、収入が不安定な姉を頼りすぎるなよぉ?」

「あはっ、ごめんごめん。いつもなんやかんやでどうにかしてくれるから、つい」


 私は万能執事かとツッコミを入れたいところだが、翔子が猪突猛進で、サイドをあまり見ない正確なので、どうにもフォローを入れてあげる癖はある。

 上手く利用されているだけという可能性も否めないが……


「それにしても残念だねー。あの店潰れちゃうなんて」

「まあ、めったに行く場所じゃないだろうけど、あの味を知っちゃうと、なんだか寂しく感じるよね」


 店を出るときに店長さんが下げた頭。

 どこか悲しみというか、感慨深さを感じざるを得なかった。


「でもさ、十割蕎麦のレシピ欲しいって言ったら、あっさりくれたのは意外だったね」

「長年の知恵が詰め込まれているっていうのにね」

「まあ、息子さんたちが蕎麦作りを継がないっていうんだから、私達が貰わなかったら、燃えるゴミの日に捨てられていたんだもん」

「貴重な資料がなくなるところだったね」


 五十年以上の努力が一冊のノートに詰め込まれている。

 価値がないわけない。

 私達が貰うのがもったいないと思ったくらいだった。


「それで、これはどうやって使うのかな?」

「母さんに作ってもらうってのは? そば粉仕入れて、丁寧に作るの」

「でも、お母さんも面倒くさがり屋だよ。手間のかかる料理しようとしないじゃん」

「ああ、そういえば……」


 ちなみに私の面倒くさがり屋スキルは確実に母から引き継いだものだと思っている。

 妙な性格だけを貰ってしまったものだ。


「私がそのノート貰う。何かしらの形で、漫画のアイデアに使えないか考えてみるから」

「えー、蕎麦のレシピが書かれているだけのノートなのに?」

「うん、漫画家って、そういう古臭い歴史が詰まったノート大好物なの。自分たちの知らないアイデアがたくさん詰まっている宝物だからね!」

「そういうものなんかな??」


 翔子は頭をかしげて私の言葉に疑問する。

 多分、翔子に限らず大体の人は疑問を感じるだろうが、クリエイター的にはいろいろと詰まっていると期待せざるをえない。

 今度、山梨さんにも相談してみようと思っている。

 蕎麦職人にも、熱い人がいるんだって。


「あ、そうそう。お姉ちゃん。一つ言い忘れていたことがあるわ」

「……ん、何?」


 翔子は少しだけ私の方へと首を傾け、ヘルメット越しに。


「二十九歳の誕生日、おめでとうね」


 と——


 終わり

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