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十六話 -年末年始の物語-【04】

 一時間後――


「空き缶は水洗いして分けて、燃えないゴミもまとめて、燃えるゴミは極力小さくまとめた――」

「布団もさっきクリーニング業者に渡してきた……はぁ、はぁ……」

「もう、部屋の奥から玄関まで運んだだけでしょ? 業者さんが来てくれたのに、どうしてそこまで疲れているの?」

「い、インドア生活になれちゃうとねぇ……腕の筋肉が意外と落ちるのよ」


 筆より重たいものは持てぬとは言わずとも、十キロのお米を持つのはかなりきつい。

 インフルエンザの病み上がりという都合もあり、あまり力が入る状況ではない。


「こっちに帰ってくる頃には綺麗になって返ってくるから、楽しみにね」

「まさか、布団のクリーニングに数千円かかるとは思わなかった……」

「お母さんに買ってもらった羽毛布団だし、新しいものを買うよりは良いでしょ?」

「そりゃあ、そうだけど」


 一人暮らしをする際に、母から貰った家財道具。

 タンス、布団、テーブル――

 昔かよ! と突っ込みたくなるような、結婚用の家具ばかりだ。


 物自体は、最新で気持ち高級のものを支給されているので、最終的には役に立っているが。

 今、業者さんに渡した布団も、結構な値段がするらしい。

 よっぽど雑に使わなければ、最低でも十年以上は使えると聞いている。

 だから新しいものを買うではなく、クリーニングという選択肢になった。


 多分、雑誌の表紙を飾った時のギャラが、そのまま消えるくらい高い費用だったけど……。


「窓は出発まで全て全開。ゴキブリキャッチャーを家の隅々に設置して、掃除機をかける。埃を払えたら最後に除菌シートで床掃除、クッション系はベランダに……」

「まだ続きますか……」

「むしろ、どうして終わると思ったの? ゴミ屋敷を、部屋が汚い部屋にグレードアップしただけだというのに」


 なるほど、まだ人が生活する環境ではないということでしたか……。


「人が人として健全に、特に部屋の中で生活をする漫画家さんは、人一倍、環境に気をつけるべしっ!」

「それ、山梨さんに似たことを言われている気がする」


 山梨さんも、言葉で言いつつ働くキャリアウーマンのため、実は部屋の掃除は特別得意じゃないというのは秘密だけどね。

 この汚部屋についても、ゴミくらい捨てておけとしか言われなかったし。


 実のところ、この部屋を指摘してくれる人は、普段から居ないと言っても過言ではない。

 こうしてメスを入れてくれるというのは、煙たいながらもありがたいことだろうと思う。


「ほらほら、口じゃなくて手を動かしなさい。燃えるゴミは臨時で回収業者が来るんでしょ? さっさと持っていきなさい!」

「か、かしこまりましたっ……!」


 翔子にポイッと紙くずが入ったゴミ袋を投げ渡される。

 ポイッ、ポイッと投げられ、合計四個。

 重くはないけど、抱える面積が広くてツライ。


 全部、私が仕事をする際に排出したゴミだと考えると、数日前の私はなんて憎たらしい行動を取っていやがるのだと非難したくなる。

 非難したところで、この運命が変わるわけではないし、むしろ、自分という性格の悪さを再認識してしまう限りの結果になってしまうだけだが。


 あぁ、まだまだゴミの処理は掛かりそうだ。

 文句を言って勝てる相手ではない。


 ひとまず、私のためにやってくれているのだ。

 気の済むまで、部屋が完璧になる指揮をとってもらおう。

 私は、ため息を翔子に気づかれぬよう吐き出して、家の外にあるゴミ捨て場へと向かっていった。


 ………

 ……

 …

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