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一話:エトナの散歩(冬の星空)前半

 チクタクチクタク……

「…………」

 チクタクチクタク……

「…………」


 時計の秒針が、大きめな音を部屋の中で鳴らしている。

 私は、この音が大好きだ。


 一秒一秒という時が、この静寂な夜をゆっくりと夜明けに導いているのだ考えると、何だか感慨深いものを感じてしまうからだ。

 ……おっと、今のは少しオジサンくさかったかな?


 そんな事を考えながら、ふと作業机に置いてある小さな時計を見てみる。

「……あっ、またこんな時間」


 気づけばてっぺんをとうに越していて、針は一時の数字を差している。


「またスーパーに行けなかった。二十四時まで開いているって思うと油断してしまうな……」


 怠け者の癖は幼稚園からの事だ。

 今更、自分の情けなさを嘆くこともあるまい。

 しかし――


「朝から何も食べていないからなぁ……集中している時は空腹なんて全く感じないのに、集中が途切れるといざこれだ」


 お腹の虫は、ようやく気づいてくれたのかと言わんばかりに、ぐーぐーと私の胃袋の中で騒ぎ立てている。

 私の中の虫さえも、私自身の怠け癖を非難しているようだ。


「……ひとまず、何か食べよう」


 私は虫を取り急ぎ落ち着かせるために、冷蔵庫の中に何かをストックしていなかっただろうかと扉を開ける。


「…………」


 しかし、残念。冷蔵庫の中は、まるで新品のように食材が全く入っていなかった。

 そういえば、この前、冷蔵庫の中の賞味期限チェックをした際に、随分と整理してしまったような気がする。

 調味料も賞味期限が切れてから一年以上経過しているものばかりで、見た目的にはまだいけそうと思いつつも、身の危険を案じ、泣く泣くゴミ袋の中へとダンクしたのだったな。


「はぁ……全く、私は女子力が本当に低いな……」


 意識して低くしていこうというつもりはないのだが、部屋にこもって納期を守りながら仕事をしていると、どうしても女子力磨きの意欲が下がってしまうようだ。

 お料理サイトで料理のレシピを見て、スーパーで材料を買うところまでは上手くいくんだけどな……そこから先は、怠けモードが発動して、最終的には雑なナントカ炒めになってしまう。


「あーあ、なんで学校で女子力の上げ方教えてくれないんだろうなぁ……」


 世の中には、私のように向上心が高いのにもかかわらず、その躍動の矛先が見つからないという被害者がいるというのに。


 ぐぅ〜〜ぅ……


「あっ……いっけない。私、空腹だったんだ」


 また変なことを考えていたせいで、お腹の虫を放置してしまった。


「……仕方ない、どこか適当に食べ物でも調達しに行こう」


 さすがの私も、断食をする程には怠け癖はひどくはない。

 よく食べ、よく寝て、担当さんに叱られない程度には、程々に仕事をする。

 私も食欲は健在なのだ。


 私は椅子から重たい腰をゆっくりと上げて、窓越しにかけているコートをハンガーから取り外す。


「一月だもんなぁ……夜はキツイよなぁ……」


 窓ガラスは夜からずっと白く曇り続けていて、手に取ると外界のヒンヤリとした冷気が瞬間的に伝わってくる。


「はぁ……今日も例外なく寒いということなんだ。早めに外出をしておけばよかった」


 過ぎてしまったことではあるが、いつものように後悔をする。

 こうしておけば、いつか昼間に外出する癖が身につくのではと、未来の私を信じているから。

 ただ、その希望を抱いてから三年ほど経過した気がするけどね。


「……っといけないいけない。こんなことをしていたら、いつまで経っても外に出られない」


 私は、自分の太ももをパンパンと両手で叩くと、気持ち根性が入ったという気持ちになったと思い込み、そのまま玄関から外へと外出したのだ。


 はぁ、私は外に出るのも大変だな……と、つくづく感じてしまった瞬間であった。

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