第2話
緩衝材がぎっちり詰められた中は見通せないため、箱ごと押して明るい窓辺へ移す。シュレッダーダストじみたクッション材を掻き出すとようやく姿を表したので掴み上げ、フローリングの上へ積もった緩衝材と埃を退けると、そこへ順に並べていく。それらはおおまかに次のようなものだった。
小型の高性能空気清浄機くらいのジュークボックス、一台。
円柱状のシリンダーに薬液漬けで収められた、妙に精巧な人形、一体。
そして箱の一番底に、撥水加工のされた厚い封筒、一通。表も裏も真っさら。
何から手を付けてよいかわからない上に、手を付けたら最後爆発するか呪われそうな代物ばかりで大変悩ましいところである。なんだよこれ。内容物だけを見れば悪趣味な珍品コレクターの居宅宛の荷物が誤って運び込まれたのかと疑いたくなるが、何度伝票を確認しても宛先欄には居室の住所と自分の名がしっかり記載されている。つまり間違いなく僕への荷物なはずで、ならば中身が何だったって僕宛であるのが道理だ。でなければD・D某が中に詰める物を間違えたのであり、正直未だ疑わしいものの、たとえ封筒を開けたってこちらに落ち度はない。多分。ならばと思い切って、封を切ってみた。
中には手紙と思しき上質な便箋が数枚、びっしり字が詰められている上このご時世に手書きである。伝票の筆跡の主とおそらく同一人物のそれだ。どうもどこかで見覚えのある字のような気がして、一枚ずつはぐってゆく。そうして、手紙の最後に添えられた署名を確認した時、思わずため息が出た。
ダニエル・ドット。十数年前のあの日姿を消した、僕の愛する叔父の名である。