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海の記憶  作者: あお
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真っ白だった。

ただ、気づけば泣いていた。

ぽっかりと穴があいたような空虚感だけが、僕を占めていた。


同じだ。何もかも。

僕はまた、同じ過ちをーー






意識が戻ると同時に飛び起きた。辺りを見渡すと、見覚えのある病院だった。

どうやらまた運ばれてしまったらしい。二回も波に呑まれて気を失うなんて、迷惑な行為を繰り返している自覚はあった。


だけど、それでも助けたかったんだ。


菜々ちゃんを。


この部屋に菜々ちゃんはいない。

僕は重たい頭を振って、無理矢理体を動かした。


菜々ちゃんに、会いたい。






菜々ちゃんは、……いなかった。


てっきり前と同じ病室にいると思ったのに、その病室は空きの状態になっていた。


「なんで……」


どうして、僕だけがここにいるんだ。

どうして、僕だけが戻ってきたんだ。


ーー一緒に帰ろう


そう、言ったじゃないか。

どうして、いつもひとりで行っちゃうんだよ。


「菜々ちゃんの、あほぉ…」


ちがう。ひとりで行かせたのは僕だ。

伸ばした手が、届かなかったーー


「あほって失礼な」


幻聴かと思った。


ずっと、聞きたかった声。






「久々やのにあほはないでしょ」


悪態をつくその声が、背中にぶつかる。

僕はこぼれそうになった涙を我慢して、後ろを振り向いた。






菜々ちゃんが、いた。






「菜々ちゃん…」

「なに?」

「なに、じゃないよ」


言いたいことはたくさんあった。

正直怒鳴りたい気持ちもあったし、それよりも謝りたい気持ちもあった。

だけど何よりも、僕は伝えるべき言葉をずっとこの胸に抱いていた。


「菜々ちゃん」


ーー帰れないんだ


そう、淋しそうに笑った菜々ちゃんへ。


「おかえり」



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