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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第三章 愛の化物
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3/21 外道には外道を


 うん。此処までうまくいくとは思わなかった。

 まあ物語を参考にして、私は今回の作戦を立てたんだけど。

 これでも一応、結構気を使ったのだ。物語の流れに沿うように、同じ状況が出来上がるように。超神経使った。


 隠密スキルの向上がやばいくらい秘密裏に活動しながら魔石を破壊、でも、一気に魔石を壊し過ぎないように注意を払う。そのなかで、だんだんと、『私』という存在が彼らの目に浮かび上がるようにしていく。『魔』たるものだからこそわかる魔力の残滓を遺してみたりとか。『公爵』だからこそわかる貴族同士のつながりから揺さぶってみたりとか。


 自然に。

 何気なく。

 そうなるべくしてなったかのように。


 このとき注意しなきゃならなかったのが、魔石を壊しすぎないこと。破壊されれば修復される。その分犠牲者は増えてしまう。誘拐も魔物の襲撃も出来る限りは防いだが、私は独りしかいないのだ。

 そして私には大事なものがある。

 ジルを引っ張りまわしたりもしたし、エルもいるし、強制的にその辺りが巻き込まれたりしないように立ち回った。生贄足りないしついでに巻き込んでしまえという外道も過ぎる思考回路はお呼びではないのでその方向に流れないように気を使いまくった。


 誰か褒めて。すごい褒めて。めっちゃ頑張ったから。


 それもふまえて、国王にはこのことを全部話した挙句盛大に悪態吐かれたけど。

 あれかな、歯をきらめかせて『私誘拐されてくるから☆』と言い放ったのがいけなかったのかな。

 しかし『好きにしろ』との言質は取った。大義は我になくても、言質は取った。私の言いたいことは伝わっているだろうからまあそういう意味では心配はしていない。


 ジルもエルも、恐らくは何かを察しているだろうし。終るまでそれが何なのかはわからない、と言うか国王が隠し通すだろうが、それでも私がかかわっていることに感づいて居れば邪魔をするほど彼らは阿呆じゃない。


 今回の計画の肝は、私が如何に、単独で華麗に誘拐されるか。意図的に誘拐されるにはテクニックが必要なのだ。ほら驚愕の表情とか。油断してる感じを醸し出したりとか。気づいてませんよアピール、とってもドキドキしました!


 ともかく。


 そんな前世と言う反則的アドバンテージを躊躇なく振りかざす私は連れ込まれる部屋はわかっていた。即殺されはしないだろうとも確信していた。だってあの魔、外道だもの。

 使われる薬は予測していたし、そもそもそんなに薬が効かない体質だ。だから現在後遺症もなくすっきりはっきり目覚めている。だって私だもの。


 公爵の台詞までよく似ていた。


 ――『あなたたちは、知りすぎた』

 ――『異界の女。何も知らぬくせに、でしゃばりすぎたのだ』

 ――『邪魔者は、消さねばな?』

 ――『お前たちを我が友人に、捧げよう』


 そう、こんな感じの台詞を『明日セカ』で公爵はほざいていた。

 そして私が吐かれた捨て台詞がこちら。


 ――『お前は、私の友人に、捧げよう?』


 友人。

 彼等の関係性をして友人と言えるのか、知らないけどね。


 まあとにかく、そんな感じで捧げられちゃってin辺境の別荘です。いっそ祭壇とか用意してみようよ。あまりにもごみの如く放り出された殺風景な部屋の中で生贄感がないよ。打ち捨てられた粗大ごみ感しかないよ。


 ではなくて。


 主人公ちゃんたちはここから、RPGのダンジョン攻略の如く部屋を出てエイヴァをさがすんだよね。そこここに潜んでいる雑魚から中級の魔物と戦いながら。正に危機一髪な場面であったりラブが盛り上がる場面があったり、盛りだくさんだった。一応盛り上がりの、見せ場的なシーンなのだここは。ボス戦前だからね。気合も入る。計画的に誘拐された私と違ってガチ誘拐だしね。


 まあ、私はそんなまどろっこしいことしないけど。盛り上がり、要らない。


 なぜならば時間の無駄だからだ。私、一人だし。誰とラブするの? 空気? 痛い人だよそれ。あと雑魚から下級の魔物に危機一髪……ごめん無理かな。単独特攻の過剰戦力、それが私。全て殲滅してみせよう。


 つかそもそも、この屋敷のどこかにエイヴァがいることは確定なわけだよ。

 そして我が攻撃力と言うか戦闘能力に死角なしの私はさきほどから感知を発動しています。そしてこの辺りに魔物しかいないことはおろかエイヴァの大体の位置も看破しています。のんびり熟考にひたっているぼんやりさんじゃないのよ、私。だってそれだと別荘にバカンスに来たみたいになっちゃうでしょ。違うのよ、ストレスはっs……悪を倒しに来たんです。


 ――さて。それではここで私がとる行動は何かと言えば破壊です。

 もう一度言おう、破壊です。


 にやりとメリィどころかアリィにさえ苦い顔をされる悪辣顔で笑う私。すごく似合うと自負してる。前世の悪友ですら言ってた。『貴方の企み顔はもはや刻まれているわね。そのまましわがれて戻らなくなればいいのに』。ただのディスりだった。


 まあいい。さあ行こう。さっさと行こう。

 オブラートをぶち破って叫ぶなら私は暴れたいです。

 全部壊して消し炭にしても、別に『魔』たるあれには何の影響もないだろうし?


 回りくどいのは、嫌いなんだ。


 領民のため、友人のため、自分のため、行動を開始して、結局結構な時間がたっている。

 ここまで待ったのだから、焦らされるなんてもってのほか。

 叩くものは一気に叩かなきゃ、意味がないだろう。大丈夫よ、原型は残してメッタメタにするから。


 手の中に、魔力を込めた。

 ばちっと巨大な雷撃がはじける。

 その雷が、焔を纏う。


「……ぶちこわせ」


 ――一瞬で。

 刹那に。

 巨大化したそれは、つぶやきの通りに邸の全てを飲み込んだ。

 凄まじい轟音。

 燃やし尽くす音。

 焦げ付くにおい。

 逆巻く風。


 ――残ったのは。


「……さあ、楽しく踊りましょう?」


 優雅に微笑む美貌の男だった。くっそ、この世界美形しかいねえ。








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