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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第三章 愛の化物
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3/20 舞台監督は誰


 ――『あなたたちは、知りすぎた』

 ――『異界の女。何も知らぬくせに、でしゃばりすぎたのだ』

 ――『邪魔者は、消さねばな?』

 ――『お前たちを我が友人に、捧げよう』



  ✿✿✿



 ――ふ、と目が覚めた。

 快眠である。すっきりと目が覚めて爽やかな朝である。何かが間違っている気がしなくもないが、爽やかなのだから仕方がない。


 ともかくも。


 何処だここ。

 覚醒とともにひょいと身を起こす。そして辺りを見渡した。


 ――うん、見事なまでに何にもない。笑ってしまうくらいにすっきりさっぱり何にもないものだから逆になるほどと納得してしまった。そして床に転がされたのに快眠できた私。我ながら順応力の高さにほれぼれする。

 それは置いといて一応くっ付いているのは窓と、ドア。だけ。調度品、ゼロ。いやいや、清々しいほどに殺風景なお部屋。


 えーと、なんだっけ。

 多少の混乱を来すくらいの人間性は私にもある。


 うん、でもあれだ。

 特に頭が痛いとかもなく見事に全部思い出して現在とつながった。爽やかな寝起きだったものだから脳みその起動が早かったことも大いに関係しているだろう。


 まあ、なんというかあれだ。これ、タロラード公爵邸からこの殺風景部屋への素敵な大移動だね。此処、公爵の本邸じゃなくて多分別荘だし。

 転移か馬車か知らないけど、転移だったんだろうな。私の記憶だと馬車で気軽に行ける距離じゃないし。私が眠っていたのはせいぜい半日だろうしね。


 うん。

 あれだ。

 思い出して言えることはただ一つだ。


 おっけー、なんという作戦通り。


 つまりだ。


 もう一度整理するなら、ずばりタロラード公爵にあの部屋で眠らされて連れてこられたんだよね、ここ。

 でもぶっちゃけ、こうなるってわかってて、むしろこうなることを狙ってあの時公爵について行ったんだよね。


 ――さて、ではなぜ私は個人的に接点などなかったタロラード公爵の行動を読めたのか?

 答えはお約束。

 この展開、『明日セカ』とおんなじなんだよねー。


 はっはっは、あの物語の中のこの辺りの流れって、主人公たちがちょっとずつ真相に気づいて、一個ずつ魔石を撃破していくんだけれども。

 もちろんその行為って、黒幕たる公爵たちにとっては邪魔以外の何物でもない。何してくれてんだこの小娘ども的な心境だ。


 行き着く先は排除一択。邪魔者は消してしまえな精神。超物騒。大変わかりやすい。

 正直、タロラード公爵一人が黒幕だったら、あの屋敷で意識を失っていた時点でサクッとやられちゃってたでしょう。


 タロラード公爵一人が、黒幕だったらね。


 ところがどっこい、この事件の真打は快楽主義者の『魔』である。

 奴は、簡単に主人公たちを殺そうとは考えなかったんだ。だって快楽を追い求める人外さんだもの。

 その理由をつけるならある意味とても純粋で、何処までも単純思考なのだけれども。


 ……もともと、あの魔はこの世に厭いている。

 だから、楽しみを求めるのだろう。それが人間をからかって甚振って遊ぶという行動につながっている。

 そして同時に、どうしようもない殺戮本能や闘争本能も持っている。


 つまりはその本能に忠実に、あの『物語』の中で、魔たるエイヴァは主人公パーティに真っ向勝負を挑むのだ。バトル漫画かな? 熱血を感じる。


 ちょうど主人公たちの破壊行為につき魔石の陣が壊されちゃっていたのもあってね。

 陣を描くのに必要なのは魔石と人血。

 魔物の血を凝縮して作る魔石は、魔の頂点たるエイヴァには造作もない。つまり必要なのは『人』の生贄。


 ……うん、ここまででわかったと思うけれども。

 目障りなのを消して、かつ利用してしまおうという外道の思考である。


 ちなみに主人公パーティは全部で五人だった。主人公たるヒロインちゃんでしょ? ヒーローたる粘着王子ジルファイスでしょ? 当て馬仲間なエルシオでしょ? 残念すぎるあて馬令嬢のシャーロット・ランスリーでしょ? そんでもって最後にもう一人、城の騎士さんな年上男性キャラで五人だったのですよ。


 魔術陣壊した奴らを、その魔術陣を復活させるために使う、なんという効率の良さだと公爵と魔は思ったわけだ。エイヴァに至っては退屈しのぎにもなって一石三鳥だぜと思いやがったわけだ。

 そんで、主人公パーティをタロラード公爵がおびき出して眠らせて、タロラード公爵領の辺境に位置する別荘に強制送還するっていう流れがあの物語でした。


 さてここで私の現状を振り返ろう。

 私の現在地、最初に言った通りタロラード公爵領辺境の別荘。

 連れてこられた経緯も見事に物語を踏襲。


 やだ、なんて期待を裏切らない外道っぷり!














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