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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第三章 愛の化物
89/661

3/13 とてもあなたに会いたかった


 ――さあ、終わりにしよう。



  ✿✿✿



 最近自分の行動が派手だったという自覚はもちろんある。むしろ狙ってやった私は確信犯です。


『首謀者がシャーロット・ランスリー』であるということはおくびにも出さない。ただ遠慮はしなかった。ジルも連れまわしたし、協力者の貴族連中は黙らせたし、陣の完成をさせないための魔石の破壊にも余念がなかった。


 そしてその中で、確実にただ一人を吊り上げるための餌を、撒いた。


 さて、そんな工作が功を奏した私は現在馬車の中。転移門を使用してあっという間に他領に到着、それからガラガラ運ばれています。

 気分はドナドナ。

 嘘です。ワクワクが止まりません。しばしの沈黙を破り行動開始。超楽しい。来たよ、やっと来たよ。あっはは、これは滾る。


 とか言っているうちに目的地に到着。私は馬車から優雅に降りて、歓迎の言葉を受けて中へ。

 我がランスリー公爵邸にも劣らぬ美しさと格式高さを醸し出している、目の前の屋敷。

 当然だろう。

 目の前のそれは、権威が劣ると言っても我が家と同格の公爵邸だ。



 ここは、タロラード王弟公爵、その人の邸なのだ。



 ――一週間前に受け取った手紙には、今日この日に開かれるささやかな茶会に参加してほしいとの旨が書かれていた。つまり招待状。にこやかに悪態をつくほど頻々に届くそれ。

 だがしかし、今回の茶会の趣旨は最近多すぎる見合い紛いのものとは性質を異にする。


 同年代の者が集まるということに変わりはない。ただし規模とその質が違う。集められるのは就学年齢以下の魔力持ちな少年少女のなかでも期待値が大きい子供。


 そう、いうなれば将来有望な魔術師の卵たちとの交流会なのだ。もちろん基本は親同伴。私は個人参加だけど。いや、エルも実は招待されていたんだけど、今回はお留守番です。いい子にしてるのよ。


 なぜならば今回私はやらかす気に満ちているからです。勿論知らなくていい人間には一切それを知らせるつもりもなく秘密裏に実行はする。秘密裏に実行はするが、まあ保険だ。エルには家を守っていてもらいたいのだよ。


 お嬢様方のため息が微妙に残念そうだが知ったことではない。儚げ美少年をいつでも拝めると思うな。小出しにした方がありがたみが増すだろう。


 まあ、当の義弟が謎の懐きっぷりを発揮しているシスコンなので出がけにちょっと問答したけども。ちゃんと納得させてからおいてきたよ。や、実際一時間ぐらい説得にかかったけど。最終的には引き下がったからいいんだ、うん。その執念深さはもはやデフォルトだと思ってるから、うん。


 それよりもだ。


 いっそ壮観だなあと思いつつ周囲を見渡す。通されたのは綺麗に整えられた中庭。ガーデンパーティーみたいな形式だ。集まっているのはやはり高位貴族子息子女が多い。血筋が関係するからどうしてもね。まあただいま私は絶賛限りなくボッチだけど。だって寄ってきたところで壁の花を決め込んでいる私は華麗にかわすからだ。気配を殺して陰に潜んでいる私。この目立つ髪色で見つからない現状、隠密スキルの向上を感じる。


 そしてそんな私はもちろん邪魔されることなく目的の人物を見つけ出しました。

 それはさすが腐っても元王族といえる外見の煌びやかさを持つ彼で。


 クラウシオ・タロラード公爵。

 この屋敷の当主にして茶会の開催者、そして王弟の男。


 まあ、交流会の規模もうなずける。懇意にしてうまみがあるわけじゃないけど多少のつながりが不利になるわけでもないのだ、呼びかければ集まりはいいよね。

 その分下手をうてばあっという間に醜聞が広まるという仕様ですけれども。


 あっはは、さあてどこでやらかそうかな!


 もう一度言おう、今私はめっちゃ楽しい。というか楽しみだ。だって待ちに待ったのよ?どんだけ準備に時間かけたと思ってんの? そして様々な我慢強いられたと思ってんの? 即座に拳で語らずに待ちに待ったこの時だよ?


 証拠はそろっている。

 国王の許可も千切り取った。

 後は、タイミング。私はそれを、ただ待つだけ。


 思って内心ほくそ笑みながら、壁の花になり切って会場にたたずんでいると、やがて時間になったようだ。

 庭の前方に、ぴしりと金髪を撫でつけた壮年の男が進み出る。


「皆様、本日はお集まりいただきまして誠にありがとうございます。ささやかではありますが、楽しんでいただけますよう」


 朗々と響くタロラード公爵のあいさつで、表向きは恙なく、交流会が始まった。






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