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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第三章 愛の化物
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3/6 手招きは見えていた、


「……つか、なんでばれたし」


 愚痴るように苦い声で国王が洩らす。

 その様は素晴らしく可愛くなくそして何も癒されない。

 むしろなぜばれないと思ったのか国王よ。


「人選が悪すぎですわね。今更後見人にさぐらせる? 本気なら悪手に過ぎますわ。まあ、こちらに送りこめている手駒なんて彼くらいしかいないでしょうけど」


 そう。そもそも、だ。

 今回、私がここへ突撃かました直截のきっかけは、この期に及んで国王様がうちをスパイしようとし腐ってくださったからだ。

 手駒は、うちの後見人兼名目上の領主代理。


 ……確かに、最近私はちょっと派手に動いていた。


 例えばエルの誘拐騒動。

 兵を言いくるめて魔石の処理。

 タロラード王弟公爵関連の貴族をサクサク処分。

 ジルを巻き込んで冒険に行こうぜ☆のノリで魔物討伐に出撃。

 目くらましはしているが『私』の本性を知っている国王からすればわからないはずがなかっただろう。特にジルをかりだした討伐。


 だからこそ、この国王様はうちの内情を探ろうと画策したのだ。安直である。

 ――ま、本来の目的は別なのだろうが。


「なぜ回りくどいことをしたのです。通常連絡手段を忘れたとは言わせませんわよ」


 あなたの息子は未だに手紙によるストーカー行為を続けているというのに。しつこいほどに。ぶっちゃけドン引くくらいに。あれはいったい何なのか。奴はいったい何に目覚めてしまったのか。ぜひ軌道修正をお願いしたい。つうか国王、お前親だろ。子どもの面倒見ろよ、行動制限しろよ、あれはいったいどこまで何を極めるつもりなのか私にも理解できないっていうか恐い。大分恐怖だ。


 いや、話がそれた。

 簡単にいおう。


 結局、この男は私を王宮に来させたかった。それが真の目的だ。


 スパイ行為をさせるなんぞという愚行を犯せば、私がなにしてくれてんねんああん? と突っ込みをいれにやってくると知っているのだ、この国王は。

 迂遠すぎるわ。

 そんなことをしなくても一応私は臣下の立場なのだ。仮にも国王に来いと言われたら来る。


 が。


「お前が来ないのが悪いんじゃねえか! ていうか手紙無視すんじゃねえか。来い! 報告に来い! 何勝手に楽しそうなことしてんだ!」


 ガキだ。ガキがここに居る。


 確かに無視をすることはある。それは認めよう。でもそれは『呼んでみただけ』とふざけた発言を繰り返した国王の身から出た錆であると反論しよう。


 彼の第二子はひたすら手紙を送り続けて、三か月続けてガン無視されてもめげない不屈の粘着精神を持っているというのに、嘆かわしい。……いや、どっちもどっちで結局あれか。面倒臭い親子だ。


「そもそも私は忙しいのです。いちいち些末事まで知らせる義務などありませんわ」

「俺とお前の仲だろ!」

「どんな仲ですの? 覚えがありませんわ。というか、現状私は訪れているのですし、ぐちぐちいうなんて見苦しいですわね。だいたい、こらえ性がないのです。こんな茶番などしなくともそろそろいろいろ耳に入れたいこともありましたのに」


 つくづく、つき合わされた我が領主代理殿が哀れでならない。

 だって完全なるとばっちり。

 逆らえない最強上司(国王)からのまさかのパワハラ。

 そしてその方面の期待などなかったとはいえ一切成果を残せず私に見破られる悲劇。

 残念ながらこれまで薄ーく築き上げられていた彼の信頼も地に堕ちてしまった。

 何にもメリットがない。

 可哀想すぎる。


 しかし私の信頼は回復しない。


 他の使用人さんたちにチクらないのがせめてもの温情である。


 一人の部下を可哀想な状況に追いやった最高権力者を冷たい眼で見る。何事か喚いているけれどもどうでもいい。


 それよりもだ。


「まあ、そっちの魂胆はわかっていましたから、そこは本題ではないですわ」


 後で埋め合わせはさせるがそこはそれ。一旦バッサリ切れば、私の雰囲気が変わったのが分かったのだろう。国王の顔つきが為政者のそれに戻った。

 私は唇の端を吊り上げる。


 うん、国王様。


「本題に入りましょう?」






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