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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第三章 愛の化物
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3/3 相互理解はまだ遠く


 そんなこともありつつ、現状としては今年の春からジルが学院に入ったこともあり、もともとの身分故に気軽に行き来出来ないこともあり。そこまで三人で顔を合わせるってことはない。


 ――そう、学院。

 ジルとは一歳違いだから、私たちも来春から通うことになる。エルも学年としては同じのため、入学は同時だ。


 さて、ではここでぶっちゃけよう。正直、私とエルには同年代の『友人』と言える友人は、いない。


 いや、確かに茶会には頻々に招かれる。人脈は広がった。伝手は出来た。だがしかし。だが、しかし。気兼ねのない『友人』が、どうにもできない。『ランスリー家の怪』然り、そもそもの家柄然り、私たち姉弟の魔術的才能然り、第二王子のストーカー行為然り。どうにもこうにも敷居が高いというか、ハイエナ肉食系女子は寄ってくるけど草食系女子には敬遠されるっていうか。


 一歩引くなよ。泣きたくなるだろ。取って食ったりしないから。


 ……いやこの際、私はいいんだ。大人な友達の方が(精神年齢的に)釣り合いが取れてるし、気の向くまま赴くまま自由に今世をエンジョイする気でしかないからそんなに困らない。


 でもエルは、そうもいかなかろう。


 コミュ障は大幅に改善されたとはいえ、社交的とまではいかないのがネックだ。いや、案外イイ性格している彼だから慣れの問題ではあると思う。でも外見が庇護欲を誘うから周囲の反応があれだ。特に女子。護ってあげたくなる儚さと垣間見える芯の強さが絶妙すぎる。何この天然記念物。でもそのおかげで輪をかけたハイエナ女子の壁が貴族子息諸君には結構分厚く映るようだ。


 つまりそんな私たちにとって唯一『友人枠』に収まっているのがジルことストーカー王子です。


 何か嫌。

 ……なんか、嫌。


 なぜあいつはストーカーなんだ。それを除けばただの美少年なのに。残念だ。


 さてそんなわけで、これでも学院に入るのはそれなりに楽しみにしているというか期待している。人脈や伝手や軽い親交。今まで積み上げたものがあるからボッチになることはないだろうし、そこからどう友情を開花させるかが課題である。まあ中身が着実におばちゃんに近づいている身としては若いテンションについていけるかという危惧もあるが、いつだったか前世悪友が『貴方は政財界の重鎮すら手玉に取るくせになぜそんなに些細なことで赤子の様にはしゃげるの? 実は純粋さを遺していたの?』と困惑混じりに吐き捨てられた記憶があるから案外大丈夫かもしれない。ちなみにこれはガチャっと回して玩具が出てくる例のあれでシリーズをコンプリートした時のことだ。あれは奥が深い。私の凶悪な運をもってして結構な金額を散財した。後悔はしていない。


 ともかく。


 学院は魔力保持者の管理が主目的ではあるけど、魔力保持者に圧倒的に貴族が多い時点で貴族子息子女による社交の予行演習の場……ま、地盤固めの場としてもしっかり機能している。

 まあ、そういう意味でもエルにはうってつけだ。私もそれなりに女の子の友達とかできてくれればうれしい限りだ。とは思ってる。男は……ほら、残念なストーカーがいるし、あれを遠目に見てれば十分だよ、うん。


 まあ結局はなるようになるぐらいの気持ちではあるけど。


 でも問題というか個人的課題的なものもあるにはあって。


 ……学院に入ればさすがに今ほど自由奔放にはできないのだ。

 寮生活か自宅かは選べるし、私は迷わず自宅を選択するけれども。

 だって転移で移動はお手軽だし。領経営もある身としては早々放置はいただけない。領主代理はあれだしね。うん、最近は特に……あれだしね。


 まあともあれそれでも学院にはいれば今より家を空けざるを得ない。

 だから、面倒臭い問題は入学前に片を付けてしまいたいのが人情だろう。

 乃ちタロラード王弟公爵とか、エイヴァとかだ。今までもいろいろやってきて、作戦も佳境に入ってる。行動を起こすならそろそろかなとは思っている。


 ……ただし。


 その前にちょっと訪問するべきところがある。

 さっき報告が『影』さんたちから上がってきてその内容に関してもいろいろと抉らないといけないようだし。

 まあ、最近派手に動いてたからだろうけども。


 まあいい。どうせそろそろ時期だとは思っていたのだ、覚悟をしておけ。





 ――ねえ、国王陛下?












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