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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第二章 家族の定義
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2/36 『光』だったひと


「……そうね、私は乗り越えた、というよりは、気づいたのよ」


 軽い咳払いで切り替えて告げれば、エルは整った眉を寄せた。


「気づいた?」


 訝し気な声。まあ気付いたっていうか思い出したっていうか自称神がやらかしたっていうか。そこまでぶっちゃけて頭の中身が事故ってると思われたくはないのでオブラートでぐるっぐる巻きにします。


「ええ。持っているものを怖がっているだけじゃいつまでたっても怖いままでしょう。なら利用できるようになるまでよ」


 つまりはエルにも言ったように、『上手に使』えってことだ。


 悔やんでも時間は戻らないし、無為に過ぎる。なら学習して、力に変えろ。犯してしまったそれを罪だと思うのならそれ以上の結果を出せ。

 必要なのは楽になるための許しじゃない。覚悟だ。

 ただ後悔して燻っていても糞の役にも立たないのだ。


 もちろんそれに相応の努力は必要だけど、きっかけをつかめればそれができないエルじゃないことはちゃんとわかって私は今回の作戦を強行しました。抜かりはありません。某前世親友は『貴方の策略に乗るとあまりに思い通りに行き過ぎて気味が悪いわ。もっとやりましょう』とテンションをあげていた。最高の下衆顔だった。


 まあ、正直、覚醒直後の私にとっても『魔術』をすぐに自由自在に使えたかというとそうではない。だって元日本人。科学が発達した時代。使ったことないものは手探りだ。まあ豊かな想像力でいろいろと補った結果コツをつかんだけど。実物はなくともフィクションの溢れていたかつてに感謝である。そして高い順応性。これ重要。


「だからエルの気持ちも、少しはわかるつもりよ? 魔術が使えなかったエルに対して、ランスリー家の血筋で魔術に困っていない私をみて、思うところはあったでしょうね」

「! ……それは、」

「別にそれだっていいのよ、気にしたことはないわ。今までもこれからもね。……似たような感覚は私もあったもの」

「……姉上、にも?」


 ひらり、手を振って言えばエルは訝しそうに眉をひそめた。まあエルは『今の私』しか見たことがないからね。……知らないだろう。ランスリー家使用人の皆さんでも多分あんまり気づいてはいない。


 でも別に隠してないから私は笑顔で言いました。


「そうよ? 今では悪友だけどね、私は昔ジルファイス殿下が反吐が出るほど、大っ嫌いだったし」

「えっ」


 ちょっと理解できない単語が聞こえたってありありと顔に描いてあるエルだけど別に私は嘘は言っていない。本当の事だ。なんで笑顔で言ったのみたいなことを呆然と呟かないでほしい。昔の話だ、エルも笑って構わない。遠慮するな。


 ――嘗て『顔がキレイ』以外の感想をその邂逅には持っていなかった『私』。恋愛感情は確かになかった。それは『明日セカ』の『シャーロット・ランスリー』も同様だろう。だってきっと物語の彼女が持っていた第二王子への執着の根源はきっと同じところにある。


『シャーロット・ランスリー』は『ジルファイス・メイソード』が嫌いだった。これが全てであり『シャーロット』の軸だ。


 自分ができないことを熟して胸を張り、期待に応えていけるその少年が、どうしようもない『光』に見えて、それを直視することができなかった。

 ずるくて羨ましくて、どうしようもないから、嫌いだった。

 嫌いでいなければ小さな自尊心を守る事なんかできなかった。

 たとえそれが理不尽だと気付いていても。


 まあ覚醒後、手のひらを返したように頭角を現しジルの自尊心を根元から叩き壊したのが私だけど。


 後悔は、していない。


 ストーカー行為を訴えない程度には悪友としてお互いに大事な相手に今は成っている、その事実が今の全てだ。







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