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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第二章 家族の定義
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2/23 偽悪も悪


 現在、目の前で笑うエル。お茶を飲む私たちは二人きり。見た目超優雅。


 おかしい、なんでこうなった。


 ――いや、唐突過ぎることは判っている。しかし私も混乱している。

 うん、でもさすがの私もこの状況はつかめないんだよ。


 ……いや、整理しよう。


 エルの誘拐事件から、はや一か月。

 私は未だ、ランスリー公爵邸で令嬢をやっている。

 さて、もう一度言おうか。


 なんでこうなった?


 ……いやね、あれだよ。当初の計画からするとだね、私が企んでいた対エル『荒療治』、あれはまさに「エルシオを誘拐して力を暴発させようぜ☆」だったわけだ。

 まさかのガチ誘拐が起こるとは思わなかったけど。何その奇跡。誘拐体質なんていらないよ? 呼んでないよ?


 というかそもそもエルのトラウマの根本はそこだったからね、思いっ切りつついて逆に鬱屈を発散させようという、そういう方針の下の計画だった。ちなみにキャストは以前仲良くなっていた王都のごろつきお兄さんズ。そして私。The・悪役をやったるぜいえーい、とか思ってた。ノリノリだった。


 その為の下準備も頑張った。昔、幼いエルを誘拐したトラウマ元凶の事件を調べたりとかもした。表ざたにならなかったせいで実はこれが一番手間取った。まああれ、実行犯はエルに返り討ちにあってたけど、本家本元は身代金目当てのおバカな賊集団で、しかも今もしぶとく残ってたのだ。


 だからちょっと躾を施して、誘拐事件について洗いざらい吐いてもらいました。

 そのあと笑顔で衛兵送りにしたけど。

 誘拐先の確保とかさ、台詞回しとかさ、誘拐犯役の侵入ルートとかさ。

 頑張った!

 ぜんぶ無駄になったけど。


 ちなみに、あの夜私が部屋を出てたのは、王都から公爵領まで誘拐犯役のお兄さんズを転移で『持って』くるためだ。

 しかしそこまでした後に聞かされた衝撃の事実。


 なんてこった。


 ――いや、結果的には思い描いてたシナリオ通りにいったんだけども。

 面白いくらいテンプレな行動を、あの誘拐犯グループはしてくれた。ヤダ、天然? 基本に忠実過ぎて貴重だった。

 まあそこにスパイスを加えるのがこの私だけど。アカデミー級女優としては腕が鳴ったというか。全力で悪役を演じてみたっていうか。


 調子乗ってぶっちゃけちょっとやりすぎたんだけれども。後でどんなもんだったかなって魔道具で隠し撮りしてた映像確認したらすごい下衆顔で悪辣に笑っていた私。なんという悪役ぶり。前世悪友と今世悪友が二重唱で『なるほどそれが本性(なのね)(なんですね)』と頭の中で嘲笑してきた。被害妄想だけど。


 そしてもちろんエルはガチ切れ。多分気づいてなかったと思うけど、炎出す前から風魔術で縄切れてたし。

 そしてあの業火。唐突な力解放で制御効かなくて魔力切れ起こしてたけど。ま、それは訓練次第でどうにかなる。


 オッケー、計画通り。トラウマ克服おめでとう!

 結果よければすべてよし。


 ――え? 誘拐犯たちはとばっちり? そもそも誘拐するのが悪いです。


 ていうかあの業火の発生は、誘拐犯たちも阿呆だった。だってあれが私の手配したサクラじゃないってことはあれがあの誘拐犯たちの素だったわけで。私が煽りに煽ったところに爆弾を投げ込むという軽率さ。やるとは思ってたけど。だってテンプレまっしぐらを進んでいく誘拐犯なんだもの。


 いや、私は別に無慈悲ではないので、消えたと見せかけてすぐそばで見てたからあの炎では誘拐犯たちはちょい火傷負った程度で済んだよ。

 まあもちろんそのあと私がそれはもう丁寧に『おもてなし』したけど。

 エルに傷をつけた、それが彼等の最大の罪である。

 しかも顔だ。顔だ。美少年の武器に傷をつけるなど言語道断。制裁決定である。


 んで。


 荒療治は荒療治でうまいこといったからいいんだけど、あれはガチの誘拐犯だったもんでもちろんそっちも根元を抑えた。結論から言おう、あいつらはとある子爵の手先でした。

 うちとは基本そこまで関わりがない感じの子爵さん。落ちぶれ寸前の貧乏貴族。

 それが何でこんな阿呆な行動に及んだかというと。


 その子爵、かの『物語』における黒幕、タロラード王弟公爵のお仲間さんだったんだよねー。









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