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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第二章 家族の定義
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2/5 嘆きだった、


 やだこの子ティーンにして重たいテーマ背負ってらっしゃる。シャーロットに負けず劣らずなんだけどそこもあて馬仲間でお揃いなのか。


 ――まあ、理由ははっきりしている。家庭環境の冷遇もさることながら、主人公の当て馬として登場するまでにも紆余曲折あったらしいので。性格歪んだんだな、その過程で。何なのあのファンタジーの作者には登場人物の性格歪ませなきゃ気が済まない性癖でもあったの。


 で。


 その、『憎悪』ね。

 向けられている対象は、いったい誰かという問いにはいっそ胸を張ってこたえよう。


 そうです『私』です。

 ――『シャーロット・ランスリー』。


『明日セカ』にて、エルシオ・アッケンバーグは、殺したいほど彼女を憎みぬいているようで。実際危うい場面も幾度か描写があったというか。よくパーティ崩壊しなかったなっていうくらい最後まで犬猿の仲だったっていうか。犬猿の仲っていうよりはエルシオ・アッケンバーグが突っかかっていくのをシャーロット・ランスリーが吹き飛ばしてたっていうか。ある意味体育会系だなこいつら。


 主人公のとりなしで、決定的なことは起こらず終わったんだけども。


 ……何やってんの物語の私。いったいどこでそんな余計な恨みを買ったんだ払い戻して来い。やっぱりあれか、作者は『シャーロット・ランスリー』がそんなに嫌いか。それでなくても残念系チートという微妙な設定なんだ、当て馬仲間くらい慰めあわせろよ! 傷舐めあったっていいだろう! 酒盛りして気炎を上げようぜ!


 ……ごほん。


 いや、まあ真面目に考察するならば実際のところ直接『彼女』に責任があるわけじゃない。間接的にはあるし、世間的には矢面に立たざるを得ないだけで。


 ――まあ、つまり、あれだ。

 毎度おなじみ、あの豚領主代理の所為だ。


 豚領主代理がどこまでも『シャーロット・ランスリー』を追い詰めに来るんだけどマイナスの方面に仕事しすぎじゃない、あいつ。

 性格に歪みが生じたあて馬二人にもれなくダメージを与えてるんだけど。丸焦げになってしまえ。


 ……物語の流れとしては、あの下衆野郎はまんまと領主代理の座に居座り続けて、財政を傾け続けて、そこにシャーロットの居場所はない。


 で、だ。


 物語の中でも、エルシオ少年養子『計画』は存在していて。

 でも下衆のせいで頓挫して。現実でもうやむやになりかけたけど物語の中では再燃せずにそのまま掻き消えて。

 そのせいで、エルシオ少年は一縷の希望から不幸のどん底に突き落とされたわけだ。


 伯爵家でも厄介払いがぽしゃって迫害がエスカレート。学校に入学しても虐めは継続していたみたいで、しかも子供同士他人同士、容赦がなかったそれにエルシオ少年は深い心の傷を負ってしまった、という設定。


 まあ子供の心理からすればランスリー公爵家憎しとなること山の如し。成長すれば多少は裏事情も理解するんだろうけどそれと感情は別だというのは仕方がない、人間だもの。


 しかも物語のシャーロットも、根暗な駄目女とはいえ魔力だけは当代随一。

 ここで『魔力があるのに行使できない』が故に迫害されたエルシオからすれば、嫉妬も相まって反感は募りに募ったことだろう。


 だからこその、『憎悪』。


 いや、もちろん主人公ちゃんケアは入る。だからこそシャーロットは最終的に生き延びた、というかパーティが成り立った。最終的に和解らしきものもしたはずだ。じゃなけりゃ闇討ちされてたと思う、絶対。フラれ男のやけっぱちイベントが起こらなくてよかった。それが起ってたらなんというとばっちり。さすがに理不尽を感じて祟って出そうである。だって『シャーロット・ランスリー』って根暗系の粘着系だもの。


 ――まあそれはいとして。


 ここで話を現実に戻して照らし合わせてみよう。


 ランスリー家。下衆な豚領主代理は処分済み。

 新しい領主代理も支配下にお……いや、きちんとした人物。

 私は日々チートを極めて、領地経営も良好。

 使用人さんや師匠たちと勉強に商売にキャッキャウフフ。

 そんなところに降ってわいた……というか、再燃した『エルシオ少年養子計画』。


 マジでか。


 さすが私。きれいさっぱり当て馬仲間君なエルシオ少年の設定忘れていたのに、何気に物語完膚無きに破壊ルートをまっしぐら。


 いや、エルシオ少年に憎まれたとしても、どうとでもなると言えばどうとでもなるんだけども。主人公ちゃんケアがあろうがなかろうが、現実のシャーロット・ランスリーはこの私なのだ。推して知るべし。

せめて王子が倒せなければ私はよろけることすらしないぞ。


 日々チート街道爆進中のシャーロット・ランスリーなのだ。

 最強最悪の『魔』に意気揚々とケンカ売ろうとしている上に負ける喧嘩は最初からしないというこの私。

 裏工作でじわじわと追いつめるのも楽しいけど、真っ向勝負で膝をつかせるのもたまらないよね! って笑顔で同意を求めたら『そうね、私は裏工作が好きよ』と下衆顔で返した彼女が前世親友だったこの私。


 今世の友人な粘着王子も同じことを言いそうである。なんということだ、これぞ類友。


 ……ではなくて。


 まあ、成り行きとはいえこうしてエルシオ少年を引き取ることになった以上、そもそも怨まれる要素が半分消えている。

 ほぼ同い年だけど一応義弟っていう扱いなんだし、両親がいないなら私が彼の面倒を見るしかないということで距離を縮める機会には恵まれているし。ていうか美少年を放置するのは私の選択肢にはないし。


 人間多少のくせがある方が魅力的だよ! ちょっと歪んでるくらいなら個性だよ!


 まあ、結局はなるようにしかならないっていうか、面倒臭い展開になりそうだったら片手で捻じ曲げるだけだしね!


 え、それなるようになってないって?

 大丈夫、気のせいだ。


 ――まあいい。


 つらつらと考える時間も終わりのようだし。

 とりあえず、私は優雅な微笑み仮面を張り付けなおして、


 叩かれた扉に、返事を返した。









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