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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第二章 家族の定義
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2/4 その既視感


 あー。あれだ。

 なぜ私は、常々余計なことばかり思い出してしまうのだろうか。


 これがチートが過ぎる弊害というのであれば甘んじて受けるとでも思っているのか。心底やめてほしい。おのれ自称神。思い出すのであれば一気に思い出させてほしいし設定を盛り過ぎである。禿げ散らかしてしまえ。


 いや、落ち着こう。


 そんなこんなでin応接間。私は悩んでいる。現在、エルシオ少年の到着を待って待機中である。


 言っておくが、私がトチ狂ってるのは今更エルシオ少年が嫌とかそういうのではない。腹黒ではない美少年は目の保養なので普通に楽しみである。

確かに思い出した余計なことは、義弟にがっつり関係することではあるんだけれども!


 うん、話を戻そう。


 私の思い出した余計なこと。それは何か?

 ――エルシオ・アッケンバーグ。

 この名前聞いた時、お久しぶりの微妙な既視感は飛来していたのだ。してしまっていたのだ。


 オッケー待とうか、あれ、何か聞いたことあるくね? と。


 でもなんていうか、バタバタしてたし、混乱してたし。ちょっと横に置いてたというか、後回しにしてたというか。

 ぶっちゃけ重箱の隅に置かれて忘れてたんだけど。

 でもこう、いざ落ち着いて考えてみると、重箱の隅が目に入って既視感再び。


 優雅にお茶を楽しみつつ、私は先ほどからその既視感の根源を探っていたわけなんですけれども。

 そして結局、単純かつ明快な答えは目の前に転がっていました。蹴とばしてやろうか。

 いや、それに辿り着きたくなくって遠回りしてたんだけど。

 でもやっぱ、この既視感の正体って、一つしかないよなあ、と思うわけだ。


 ……そう『明日セカ』様だ。


 いや、整理しよう。


 あの物語の中でのシャーロット・ランスリーに義弟なんていなかった。それは間違いがない。残念に薄幸な彼女は一人っ子ちゃんだった、あの物語の中では。エルシオなどと言う養子は影も形もなかった。……だからこそ、失念してたともいえるんだけど。


 思い出した瞬間は完璧にフリーズしたこの戦慄。背筋を駆け上がる悪寒。どうして忘れていた私、という意味で。

 出発点が間違っていたというのはこの場合言い訳としては微妙だが。


 まあつまり、『シャーロットの義弟』が出発点ではいけなかった。だって、既視感がしたのは『エルシオ・ランスリー』じゃなくて『エルシオ・アッケンバーグ』だったんだから。

 そう、儚げ美少年なエルシオ・アッケンバーグ……。彼はあれだ。



 対主人公用の当て馬仲間だったのだよ。



 おおう、なんと物語の中の『シャーロット・ランスリー』とまさかのおなじ立ち位置。

 や、シャーロットがジルファイス王子に執着してるのとは逆に、エルシオは主人公ちゃんに横恋慕して三角関係的なものを作り上げる系の当て馬君なのだが。


 ……正しくはこの場合シャーロットも入れて四角関係と称すべきなのだろうか。でもシャーロットは相手にされていなかったにもほどがあるどころか利用されているというドライっぷりだし、そもそもシャーロットに依存心はあっても恋愛感情は欠片もなかったし……。怨念のごとき執着はドン引きするものがあったけど……。それに比べてエルシオは主人公ちゃんが揺れる部分だってあったんだからやっぱ同列ではないと結論付けよう。あて馬に格差があったとは。新発見である。


 どうせ当て馬だけどな。


 最終的にフラれるならその過程云々など関係ない。同列ではないが同類だ。むしろ怨念持ちのくせに最初からすっかりさっぱり望みなどなかったシャーロットの方が清々しいぐらいだ。


 ……あれ、なんか虚しい気もするな……。気のせいだな、うん。


 ……怨念、と言えば。


 今更だけど、『明日セカ』について少し思い出したことを整理しておこう。


 あの話、一応各キャラによって背負わせてるテーマがあったのだ。主人公とかヒーローとか当て馬にも。主要キャラにはおおよそ全部あったはず。

 そう。


 例えば、人見知りで執着系で依存系で薄幸な公爵令嬢、シャーロット・ランスリーのテーマは『孤独』。

 両親を失い、理解者もおらず、周囲から疎まれ、その魔力の高さで余計に馴染むことができない。何処までも恵まれず、顧みられることがない。醜い嫉妬と執着でますます嫌悪される、見苦しい存在――。


 ……。………。うん。

 ……うわあ。

 うわあ。


 待って、待とうか。ちょっと目頭に熱いものが。

 なんなのこれ、我がことながらこう聞くと、正に薄幸。何この幸薄さ。何この重い設定。これで性格が健気なら主人公でもいいよ。もしくは主人公ちゃんに転がされるちょろさがなければダークヒロイン張れる。


 実際物語では同情もされてないわけじゃない。ただちょっと根暗で執着系で勘違い系だったので手に負えなかった彼女はちょろさも相まってあて馬令嬢におさまりました。ホントやめて。


 ……話がそれた。なんだっけ。――ああ、キャラテーマか。


 次。第二王子にして『明日セカ』のヒーロー、ジルファイス・メイソード。

 彼のテーマは、『虚構』。

 ま、今も絶賛猫妖怪化中ですが。


 物語の中のジルファイスは現在に環をかけて腹が黒いというか笑顔仮面と言うか。本心を絶対に見せない、警戒心ガチガチの内心ヘタレだったわけですよ。

 そんな心の鬱屈を、主人公ちゃんに癒されていくっていう王道なわけですけどね。


 オッケー、主人公ちゃんバッチ来い。今のジルファイスはそこまで屈折してないけどその癒しでかっさらってどうぞ。

 全力で応援してしんぜよう。

 手ならば幾らでもかそう。どこからでも根回しが可能な我が手足はお買い得だと思う。

 大丈夫、ギブアンドテイクだ。主人公ちゃんがジルを落として私に転がり込む利益はストーカーからの解放である。歓迎だ。


 大丈夫だ、主人公ちゃんがジルを落として私が自由を得れば粘着質な愛を与えられる可能性が大ではあるが相思相愛であるならば許されるよ、多分。私は高みの見物してる!


 あ、ちなみに当の主人公ちゃんのテーマは『無垢』です。

 無邪気で天然で一寸アホっ子で健気。

 ――うん、紛うことなき主人公属性だと思います。素直な心で腹黒王子の心を蕩かすわけですよ。

 ――いいね、王道! ぶれないね! 奇をてらうより間違いがないと思うよ!

 サムズアップで微笑みが煌めくよ! ぜひ粘着王子の身元引受人に! 押し売りじゃありません、一応あれは優良物件だ、ぜひ! ぜひ!


 ……話を戻そう。


 テーマね。あと、ジルファイスの兄である第一王子にして王太子のラルファイス殿下には『快楽』とか。

 黒幕であるタロラード王弟公爵には『狂気』とか。

 魔たるエイヴァには『傲慢』だったか。


 そんな感じなんです、各主要キャラそれぞれのテーマ。主人公以外不穏な感じのテーマだが、まあ気にしない。


 うん。

 ――で、だ。何が言いたいかと言うと。


 もちろん当て馬仲間なエルシオ・アッケンバーグにも、(不穏な)キャラテーマがあったんだよねえ。





 それは、―――――『憎悪』。












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