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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第一章 貴人の掌
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1/27 それが同罪ならば


 最後の最後で何とか表情を取り繕ってたのはさすがと言っていいのかな。


 結局逃げたけどね!


 もうちょっと畳みかけてもよかったんだけどねえ、あんまり煽ってもいいこと無いからやめといてあげましょう。退出していくのをわざわざ引き止めたりしないですよ。面倒臭いし。


 今後、どうなるかは彼次第っていうか、ホント関わりたくないのでどうでもいいや。高く買った喧嘩には勝った、それが全てだ。


 ……そしておいいつまで笑っている王子。腹筋が崩壊したのか、そうなのか。明日は筋肉痛だな。


「……いや、済まない。彼のあんな顔は……ふふっ」


 口調崩れてんな、それほどツボだったかー。まあ普段冷静なやつのポーカーフェイス崩すのって燃えるよね。でも少しは落ち着け? この後国王と魔物対策の話し合いだろ? ジト目で見れば咳払いをしてジルファイスは姿勢を正した。


「――ああ。すみません。彼……ビオルト殿は、私たちの幼いころからの教育係だったもので、昔から少々強く言えない部分もありまして。いつかは言わなければならないとは思っていたのですが」


 そう言って少しだけ悲しげに目を伏せたジルファイスは、かの教育係殿を『苦手』ではあっても『嫌い』ではなかったのかもしれない。


「思ったことをそのまま、言葉にするのも時には必要ですわ」


 そう笑う。

 ジルファイスが今度は半目になった。

 さっきの会話のどこら辺に『思ったことそのまま』があったのかと。


 何にもなかったけど。裏と嫌味と牽制と打算にまみれたやりとりだったけど。


 楽しかったからいいじゃないか。


 そんな言葉を込めてさらに深く笑えば溜息をつかれた。どういう事だろうか。朗らかに笑う鬼畜が二匹で追い詰めたんだから同罪だと思うの。


「……そろそろ、時間ですね。シャロ……シャーロット嬢、今日は楽しい時間をありがとう」


 溜息がよけいだったが、王子はいい加減場をたたみに入った。そうだよね、余計なことに時間をとられたから予定押してるよね、私もジルファイスも。


 でもさ、私はあと一つ、用事があるんだ王子殿下。

 ていうか用事が出来た。まあすぐ終わるけど。

 だから私も、優雅に一礼した。


 そして笑う。


 瞬間ジルファイスは表情を凍り付かせたんだけど殴られたいのだろうか。聖母のような微笑みだろうが。


 いや、ともかく。


 私は、首をわずかにかしげる。


「いいえ、こちらこそ。またお呼び頂けると嬉しいですわ。……ジル」


 王子が、目を見開いた。

 だよね。今まで、頑なに愛称で呼ばせなかったし呼ばなかったもんね。だってそこまで親しくなる必要性感じてなかったし。


 でも、いいやってさっき思ったので。

 正直鬱陶しいく暑苦しい権力持ったストーカーだが、さっきみたいな裏を読んだやり取りは悪くはない。


 悪くはないっていうか、殺伐とした会話ばっかりしててもこれだけ共闘できるなら、どんだけ言いつくろっても『親しい友達』の枠に知らないうちに入っていたのだろうと、観念して認めたのだ。


 つまり、自覚していた以上に、この腹黒で粘着質で思いのほか負けず嫌いな王子様を私は気に入っていたのでしょう。


 ま、今は勘違いも嫉妬も叩き潰す自信ができたというのもある。あの作業意外と楽しい。人間関係が見えて有益でもある。転んでもただでは起きないのが私です。


 ともあれ。


 目を見開いた後、ジルは笑った。


「……ああ。よろしく。――シャロン」


 こうして、キラキラ属性の王子は、『協力関係にある友人』から『親しい友達』に格上げされました。













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