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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第一章 貴人の掌
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1/22 少年の才覚


「……そうそう、何か食材の情報は入りまして?」


 そんなこんなでちゃっかり王子からも情報収集だ。『立ってるものは神でも使え』は現在進行形。これは敵さんの事でなくて商売の話だけど。


「ああ、貴女が以前言っていた『ちょこれーと』ですか? あなたの話を参考に捜させてはいますが、なかなか。……ああ、でも珍しい香草が手に入ったとか。後で届けさせましょう」

「あらありがとうございます。香草ですか。……試してみなければわかりませんけれど、何かしら使えそうですわね」

「ええ、ぜひ」


 ふふふ、あはは。そうしてできた商品は王家にお披露目なんだよな。うん、利害関係の一致って素晴らしいと思うよ? 私は第二王子経由で知らぬ間に何やらすっかり王家の胃袋を掴んでしまったらしい。それはいい。それはいいが、なぜ奴らは常々こうして私から商品をただで手に入れようとするのだろう。まあ、情報料だというのは理解できる。……理解できるが、仮にも王家がこすっからいぞ。金を払え。いや、さすがに口には出さないけどね。


 ……まあいい。今更だ。うん、悲しいことに、今更だ。だからここらで本題に入ろう。


「……ああ、そうそう。貿易と言えば、『あのお方』はお元気でして?」

「……そうですね、『あの方たち』は、少々最近ご体調がすぐれないのか、やつれていらっしゃいますが……『交流』は円滑なようで、精力的に活動なさってますよ」

「あら、頼もしい限りですのね、ぜひ私もお話を伺いたいですわ。『勉強』になりそうですもの」

「貴女は気に入ったら突き詰める癖がありますからね。あまり『楽しみ』過ぎてはいけませんよ」

「まあ、心配してくださらなくても大丈夫ですわよ? うちも貿易は盛んなのです、少し『御指導』いただきたいだけですもの」


 にっこり。

 にっこり。


 ……なるほどな、と此処までで内心ほくそ笑む。


 ジルファイスは『あの方たち』と言った。複数形だ。つまりは、タロラード公爵は仲間にどなたかを引き摺りこんだという事だ。そして、王子の立場としては私がやる事にもうすうす感づいた上で、やりすぎなければ止めはしない、と。


 さすが、私が欲しい情報をうまいことくれるものだ。帰ったら、その引きずり込まれた協力者を割り出さなきゃねえ……。ヤダ、楽しくなってにやけそう。もちろん私の猫は鉄壁だけどね!


 ……その後も、談笑しつつ会話の端々に公爵の情報を織り交ぜてくるジルファイス。

 彼との会話は、だから飽きない。この優秀さは、ほんとお得でした。


 今更だが、顔だちも整っていて大体のことをそつなくこなし、貴族もうまくあしらって立場を安定させているんだよ?

 若干十一にして、大したものだとつくづく思うね。私は前世記憶のおかげで実年齢見た目よりだいぶ上なのについてきやがるもんなあ。


 このチートが!


 うん、本当にチートなんですよ。優秀なんですよ。顔立ちも眼福なんですよ。キラキラは目に痛いけど。サングラス欲しいけど。


 本当に、本っ当に、粘着ストーカー気質さえなければ完璧なんだけど。ストーカー気質さえなければ。なんでああなった? なぜ、どうしてああも残念かなあ……。私の中ではあれでもうすべてが台無しなん

 だが。あんなに何でもできるのに。そこ以外は完璧なのに。

 いやまあ、スペックが可笑しいのは『シャーロット・ランスリー』もだけど。勉強面でも魔術面でも剣術面でも王子の高い鼻っ柱粉々にたたき折ったのは私ですが何か? というかこのスペックを持っていて

 なぜ『物語』の『私』はああだったんだろう……。


 なお、王子の現在の目標は、もっぱら私を倒すことだそうで。

 はっはっは。


 無理すんな? この世には越えられない壁というものが存在するのだよ。

 そう言ったら頬を引くつかせてたけどな。


 そんな雑談の流れで、剣の稽古の話になったし。今度私の家の方に来たときはまた手合せをしたいという。……ほほう、少しは自信をつけたと。


 ……トラウマって、抉り方を間違えると大変なことになるよ?


 まあいい。


 そろそろお暇しないとな。ジルファイスからの情報もなかなか有意義だったが、お互いこの後の予定もある。軍部と財務の大臣さんたちとおしゃべりするとかね? あと、件の公爵さんと懇意にしている伯爵さんと男爵さんとごろつきさんがいらっしゃるようで。その辺の裏もとらなきゃねえ。絶対ごろつきとか捨て駒なんだから、強請れば情報出てくるかもね☆


 さて。


 そんなこんなで腰を上げようとしたらですよ。

 庭園に近づいてきた男がいたんですよねえ。







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