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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第一章 貴人の掌
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1/21 そこは彼の領域


 さて。


 とりあえず楽しい楽しい遊びが一方的に始まってしばらく。恙なく、水面下で情報収集中でございます。

 けれども私は現在、優雅に庭園でお茶を飲んでいる。

 目の前には恒例、キラキラ属性の王子様です。

 私ももちろん猫を被ってます。にっこり笑いましょう。……そして、


 なぜ来た。

 帰れ。


 ――と、言うところだ、いつもなら。

 でも、今回ばかりはその台詞は言えない。

 なぜなら現在地が王宮だからだ。


 もう一度言おう、我が陣地・ランスリー公爵邸ではなく敵陣・王宮。アウェイ。なんてこった。


 まあ、そうはいっても微笑み仮面を装着したうえで相も変わらない嫌味の応酬に余念はありませんが。無礼? 不敬? 大丈夫、高位貴族王族の話を盗み聞きしようとする無礼者は王宮にはいないし、見た目は美少年と美少女の談笑だ。綺麗なだけだ。


 つまり周囲に聞こえなければ問題ない。


 んで。


 なんで私がこんなところに居るのかねって話。

 ぶっちゃけ別に来たかったわけじゃない。


 でも、今回のターゲットさんって公爵さんで現国王弟。一応貿易関係で役職も持ってる人なんだよね。……残念な性格であるとしても、だからって能力がない人じゃないんだよ、タロラード公爵。無能であるのならいくら御輿として担ぎあげられたとしても、貴族社会を二分する政戦にまで発展するわけがないのだから。


 ま、今は過去の確執もあっての周囲からの待遇と、彼自身が周囲との交友をほぼ断っちゃってるからどうしても信用薄くて重要ポストに見せかけた張りぼてだけど。うん、期待を裏切らない人だよねタロラード公爵。


 でも一応役人は役人です。王宮に出仕してるんです。いくら仕事がしょぼかろうとも。

 そこに粘着質な王子から再三の王宮こいこい要請が入りまして。


 ……本当ストーカー気質なんだよね、王子……。流石にそれほど暇じゃないからか、うちに来るのは週一か二週間に一回くらいなんだけど。

 代わりとばかりに三日に一度は手紙が届く。その手紙のうち、二回に一回は王宮に顔を出せと書いてある。


 正しくストーカーだと思う。権力を持ったストーカー。美形が許される限界ってあると思うの。

 なんなの、友達がいないの? ボッチなの? いくら就学前でもどっかの貴族令息とでも乳繰り合っといていただけないか。全力で応援する。


 私の中で、ジルファイスは腹黒王子から粘着王子にシフトチェンジしてきたんだけど本当にそれでいいのか王子よ。


 ていうかその執着がそこはかとなくあの王弟公爵に似ている事実。


 やっぱり血縁だからか。その嫌な似通い方やめて。私にも王族の血が入ってるんだけど全力で無視する方向でいきたい。名誉なはずの血をこうも拒否する貴族が他にいるだろうか。……きっといないが、私は気にせず抵抗しよう。そして王子も手遅れになる前に軌道修正することをお勧めする。……もうすでに手遅れな気もしないでもないけど。残念すぎる、ジルファイス。


 ……まあ、それは置いておこう。


 そんなこんなで、ジルファイスに誘われたんですね、今回も。

 もちろんいつもはバッサリ断る。同情の余地もないくらい切り捨てる。


 でもそろそろ、公式で王宮をおとずれてもいいかな、と。そのいいきっかけかな、とね。

 敵情視察もしかり、人脈作りもしかり。


 ちょうどいいかな、って思っちゃったんでねえ。何せ王子に招かれているのだ。運よく行けば、噂の残念な王弟公爵を生で見れる可能性もある。……こういうとアイドルみたいだが私は決して追っかけではない。


 ま、うちの『影』さんたちは大変優秀でホクホクなんだけれども、私自身が収集するのが一番確実なのは事実。正々堂々と王城に入れるなら利用しようという事だ。せっかくここまで来たんだもの、無駄になんかしませんよ?


 今日もジルファイスとのお茶が終わったら勉強に向かう王子をしり目に財務大臣と軍部大臣のお部屋にお邪魔する予定が私の中で決定事項だ。なぜならば彼等とは茶会と現領主代理の伝手と亡き我が父上の伝手を使って親戚のおじさんと姪っ子ぐらいの関係性を既に築いているからだ。挨拶に行くというのは予告している、悪しからず。


 ま、王宮自体もさすが国の顔だけあって眼福だしね、装飾品とか。白亜の城っていうの? お伽噺っぽいよね。実際物語の中の世界なんだけどさ。


 うちも気を使ってはいるけど、私の性格上実用的なつくりに変わりつつあるんだよねえ。前豚領主代理の浪費を補てんするためにちょっとうっぱらったりしちゃったしね。


 勿論公爵家として恥ずかしくない程度の格は保ってるけどさ、見る分にはいいけど使う分にはシンプルイズベストなんですよ。質素堅実日本人気質は健在です。でもさすが王宮、華美過ぎず地味すぎず、絶妙なところがいい。この庭の作りも参考になるよ。手入れがどこまでも行き届いている。でも国王というよりは多分王妃様の趣味が滲んでると思う。うん、国王は王妃様に頭上がらないもんね……。


 ま、今回の主目的は敵情視察と人脈作りであって鑑賞はほどほどですけどねー。






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