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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第一章 貴人の掌
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1/16 不審者は誰だ


 情報をがっつりもらって、ジルファイスは追い返した。粘っていたが追い出した。私は今からシンキングタイムなのだ出て行け。


 さて。

 落ち着いたところで、少し話を整理しよう。


 何処からかな。とりあえずは、ジルファイスが持ってきた話の概要からかな?

 そうだねえ、そこからですかね。


 ジルファイスが言ってたじゃん、『彼』が不穏な動きをしているって?

 その『彼』ね。実は、結構重要人物っていうか、国の要人のことだったりして。


 ぶっちゃけて言うと現国王弟。


 ジルファイスから見ると、叔父に当たるお方でございます。

 現在は王籍から臣籍に下ってるから、公爵さんですね。


 もちろん王族が爵位を賜る際に用いる家の一つだからランスリー家と並ぶ権威を誇る家に相違ない。まあ、はっきり言って影響力だけで言うのなら『ランスリー家』の方が強いんだけどね。


 え、親せきが幸薄くて両親も儚くなったのになぜか?

 ふっ、勿論、私が美少女だからだ。


 ……ごめん嘘です。今のはさすがに痛かったと自分でも思います。


 真面目な話、『ランスリー家』の血筋とこれまでの功績だ。我が父君は生前、宮廷筆頭魔術師だったのだ、実は。というか父は歴代ランスリー家当主の中でも高い魔力を持っていたし、ランスリーの一族以上に魔力が高く魔術に精通した家はほぼほぼない。


 だから何度も言うように、『ランスリー公爵家』は王家にとって手放せない血筋でブランドなのだ。


 まあ魔力量や家柄だけで役職が決まるわけではないから、『魔術師』としての実力は文句なく一流であったと明言しよう。私の父もそうだ。

 父だけではなく歴代のランスリー公爵家当主やその直系子息が立てた武功は多い。今でこそ私しかその名を持つ者はいないが、それでもうちを無視できない程度には、国に貢献してきた。


 そして今も、お父様たちこそ亡くなってしまったけど、現実問題商会も軌道に乗ってるし領地経営もばっちり。そして私自身もね、王家も注目する魔力持ち。


 私はやりすぎないように擬態はしている。それでも『ランスリー公爵家』であるということは特別だ。だからまあ、領地を廃れさせるわけにもいかないしやりたいことはいっぱいあるし、ということで、『シャーロット・ランスリー』の名前さえ出なければいいのだという結論を下すのは早かった。それもあって私の有する商会は、商会長は私とは別人の名にしてあるし。……表向きは今の領主代理殿と執事長が、ランスリー公爵家を回していると思わせているように。


 そうすればほら、『家を軌道に乗せた存在がランスリー公爵家にはついている』と誰もが思う。『シャーロット・ランスリー』個人は警戒され過ぎない現状の完成だ。


 それはともかく。


 そんなこんなの思惑が絡まる我が家の影響力は未だ高いのだ。


 まあ世間一般の認識とは別に、王家の暗黙の了解としては、これだけ高い魔力を持つランスリー家のものを手放して、敵に回したくはないのだろう。

 手放せないブランドは下手に機嫌を損ねることもできない血統書付きなのだ。


 んで、だ。話を戻そう。


 王弟さんのお名前はクラウシオ・タロラード。

 タロラード公爵家の御当主ですね。王弟だからね、権威はある。権威はあるんだけどもいかんせん勢力的にはまあ……はっきり言って微妙だ。


 そもそも王弟公爵であるクラウシオ・タロラードの立場自体が非常に微妙且繊細なバランスの上に成り立っていると言ってもいい。


 何故かと問われればぶっちゃけ権力争いですよ。

 どろどろの底なし沼。

 そんでもって弟さんは負けちゃった現在公爵に甘んじています、というね。


 兄弟戦争勃発の挙句、政戦の敗者ですよ。担がれて折れた神輿のなれの果てなんですよ、タロラード公爵。


 まあ、そんなことがあったら現国王アレクシオ・メイソード様と弟さんなクラウシオ様は表向き仲良くできるわけない。聞いた話ではかつての兄弟仲は悪いものではなかったはずだし、担がれた御輿同士に直接的な悪感情があったかまでは当事者ではない私には知る由もない。けど政戦が終わったからと一度開いた距離が簡単に縮まるかと言われればそうは問屋が卸さないわけで。


 国王個人との確執云々というよりは、そういった背景から必然、タロラード公爵の支持貴族は多くはないのだ。元王族という利点をもってしても、損得勘定が得意な貴族はシビアだ。


 現国王が賢王として名を馳せていることもクラウシオには逆風だったろう。器が違うと言われてしまえばそれまでだけど。


 担がれた御輿と担ぎ上げた当時の貴族と。

 どっちもどっちで残念だったのだろう。


 同じ第二王子でもジルファイスはちゃんと弁えて担がれないようにうまく立ち回ってるっていうのにねえ。十一歳の甥に負けている現実。それでいいのか王弟公爵。


 ……どうしよう少しかわいそうになってきたかもしれない。


 いやでもジルファイスはちょっと、かなり、……結構、ぐいぐい来る粘着質な精神力持ってるからな……。


 良くも悪くもタロラード公爵は『普通』側の人間だったのだろう。


 で。


 そんなかの方について、ここからが本題です。

 つまり、ここにきて、そのタロラード公爵さんがなんか妙な動きしてるぞ、みたいな情報だったわけですね、ジルファイスが持ってきたのは。


 なんだか妙な輩とお付き合いがあるそうで。

 その妙な輩の正体が割れないそうで。

 不穏ですね怪しいですね潰しとく?


 みたいな情報でした。ま、潰すか潰さないかは保留にして追い返したんだけど。


 んで。


 なんで、そんな情報を王子様が私のところに持ってきたのかな?

 答えは簡単、私が持ってこいと要求したからです!


 勿論タダではない。ただより怖いものはないと知っている。特にあの腹黒王子。絶対に付け込んでくるあのストーカー。すごく怖い。


 ので。


 王子の周りの面倒な貴族さんたちをちょちょい、と躾けてね。勿論『シャーロット・ランスリー』の存在は露呈させない徹底ぶりで。闇に紛れる悪役ってロマンだと思うの。


 そしてそれを条件として王子に提示したわけです。王子様もことあるごとに『説得』してたみたいだけど、あんなの生ぬるいですよ? お優しいですね?

 ああいう輩には、しっかり躾け(調教)しないと!

 現在皆さん、たいへん聞き分けが良くなっていらっしゃいます。賢明ですね?


 で、大層感謝してくれた王子様は見事情報横流しを容認したわけですよ。まあきな臭い動きをする貴族への『躾け』は私にも有益だ。喜ばしきかな利害関係の一致。


 ――さて。


 なんで私がそうまでして、その情報を欲したか、というと。

 腐っても王弟公爵、というだけあって情報統制は厳しいのだ。私有する『影』も頑張っているが、どうしても王族同士の内部事情ならジルファイスの方が立ちまわりやすい。


 ……不本意ながら、『明日セカ』がかかわってくるから、なるべく早めに正確な情報が欲しかった。


 さて、どういうことか?


 主人公が解決する事件、その黒幕。


 ぶっちゃけこの王弟公爵なんだよねー。





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