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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第一章 貴人の掌
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1/11 嫉妬回避の必然性


 やだ、この子血の気多い。一回落ち着こうぜ? 冷静になろうぜ? そう宥めたいくらいだった。


 リアルで頭を抱えてしまった私である。そうだこの王子まだ十一歳の子供だった。前世で言うなら小五。こんな腹黒い小五知らないけど好戦的な小五なら知ってる。


 まあ、つまり、アレだ。


 対応を間違った結果思いのほかの興味を引いて今ここだ。


 違う、私がお前に求めていたのはそれじゃない。


 でも後戻りなんてできない。


 ならば上等だ、どうせ学院にはいれば付きまとわれる未来しか見えないのだ、いっそ清々しいほどに利用する気満々で私の人脈に加えようじゃないか。高らかに笑ってこき使ってあげますとも! 立ってるものは王子でも使えと言うじゃないですか!


 遠慮? 立場? 大丈夫問題ないことにするのは可能だ、全ては愛する領民の為。王子の一人や二人や三人、その前にはふみ台になるのです。


 王族は縁の下の力持ち。国民の礎。私は何も間違っていない。

 反論は認めません。


 ――で、だ。


 話を戻そう。当初の思惑が外れた私は今後の展望を見通して、王子殿下への対応を少しだけ変えてみようかと思っているわけです。


 そんな結論を出した今、次なる悩みどころは何処まで引きこんでも大丈夫か、という点で。


 こないだの肉食獣面を見られているんだから、私の本性をさらけ出したところでさして引きはしないだろう。


 でもあれだ、前世の記憶がとかトチ狂ったことは言わない方がいいだろう。

 変なところで察しがいい腹黒だし、隙を見せるべきではない。腹を割って話すのが無理なのは、こちらもあちらもお互い様だろうし。


 なんという殺伐としたお友達関係を築こうとしているんだろう。ヤダ、不健全。


 あと案外本気らしい、私と手合せしたいという彼の熱意はどうしたものか。


 いやホント、面倒臭いんだけど。


 まあ、この部分さえ乗り越えれば、王子は聡明だし、冷静になって付き合えば割合気が合うんじゃないかとも思うよ。腹黒猫かぶりでも、それだけの頭があるってことだしね? 私は全然かまわない。むしろ望むところだ、一緒に猫の飼育をしようではないか。


 ……でもね、貴族社会ってホント色々あるんだよ。

 最初にあげた、王族を貴族が倒すのは外聞がどうのとか悪目立ちがどうのとかいう話ももちろんなんだけど。


 だってあれですよ。立場と状況を考えてみようではないか。


 キラキラ属性だから余計に、ね。それに付随してくるものが、ね。

 うん。絶対、勘違いされるよね。すわ婚約者話再燃か!? ってね。


 そしてそんなことになれば、当然のように嫉妬とか嫉妬とか嫉妬とかがね、あるでしょう。


 嫌がらせ必須じゃないですか。元なくせに婚約者候補話再びとか。要らない注目と噂が降りかかってくること山の如しですよ。決定事項ですよ。……だから王子などという人種とは関わりたくなかったんだけど。


 嫉妬に狂った人間は、男も女も恐ろしいんですよ。


 そう言えば昔、何を勘違いしたのか私に男を取られると思ってさんざん因縁つけてきた女の子がいた。そんなものに興味などかけらもなかった私にいったい何を見ていたんだろう、あの少女。理解できないものを見る目で見たら逆上された。


 美少女だったんだけどね、その子。私を睨む顔は般若の如し。美しい顔はどんな顔しても美しいっていうけど、あれはなかったわ。あれは女の子がしちゃいけない顔だった。そして嫌がらせも素晴らしい醜悪さ。何処からそのアイデア出してんの混ぜてってくらいあの手この手で。お蔭さまでボッチになるわ持ち物で無事なものはないわ先生に目をつけられるわ。


 あれですね、人間は一度目がくらむと盲目のまま突っ走っちゃうっていうか。

 私は始終、可哀想なものを見る目で彼女を見ていました。


 なお、最終的にとどめは刺した。


 全ての証拠を彼女の意中の男性含む公衆の面前ですべて白日の下に晒して笑顔で最後通牒を突きつけてみるというこの鬼畜具合。


 断罪の瞬間はとっても楽しかったです!


 ……いや、私にも慈悲はあった。ちゃんと逃げ道は用意していたのだ。彼女の取り巻きを私側に引きこんで諭させてみたりとか。それとなーく後戻りできるようにしてあげたりとか。何より、最後の最後までちくったりしなかったしね。


 全部無視したのは彼女自身。つまり、彼女は自分であの断罪の場を完成させてしまったわけです。


 だから、同情なんていらないね☆と判断を下した私の顔は一周回って菩薩のようだったと前世の親友は言いました。


 あそこからどう這い上がったのか、私は知らない。高校の卒業と同時で、彼女とは大学違ったし。

 その後会うこともなく、私は死んで今に至る。


 ……とまあ、嫉妬に狂った人間は恐ろしい、という実話です。


 いや、実を言うと私だけに降りかかるなら全然気にしないけどね? 鼻で笑ってやるけどね? そして嬉々として証拠を集めて断罪しますけどね。


 でも、私の周りの人間はそうもいかないわけで。


 だからこそ、要らない嫉妬は全力で回避したいんだけどなあ。……まあ、見方を変えれば今の私なら、そんなことをやらかす阿呆なんてわりかし簡単に叩き潰せるかぁ……。あ、思えば公爵令嬢っていう肩書は、身分社会ではそういう嫉妬を防ぐ最強の盾だよな。いや、そもそも婚約者候補に戻るつもりないけども。


 うん、王子次第だな。彼も馬鹿じゃないから、私の言いたいことは理解してくれるだろう。


 そのうえで、どう出るか。


 ……ま、とりあえずは行動してみましょうかね?












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