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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第一章 貴人の掌
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1/10 だが、しかし


 そう、面倒臭いと私は思って『いた』のだ。


 でも。


 ここにきて、私は少々彼への対応を変えてみようかと思っている。


 まあ、緩まない王子の攻勢に、こっちもいろいろ考えたわけで。そして天秤にかけた結果、と言いますか。


 天秤にかけたのは、私の当初の思惑と、今後の展望。

 今後の為にはこっちがもう少し大人になるべきかな? とね。


 今後っていうのは、ひとつはあれだ。テンプレ設定なこの世界では、魔力を持つものは十三の歳から魔術学院に通うことを義務付けられているのだ。


 そしてそこに例外はない。たとえ各家で英才教育を勝手に施しまくっているであろう貴族社会でも。この学院は、国が魔力保持者を把握し管理するためと、魔力保持者自身が己の能力を使いこなすため、二つの意味合いを持っているからね。


 まあ、前者の方がほぼすべてで、後半は後付だなんて言うのは公然の秘密だが。


 勿論、私もそこに入学することになるだろうし、王子もそう。


 今のまま行けば、入学すれば遅かれ早かれ王子には絡まれまくって悪目立ちすること請け合いだ。山の如しだ。ならば、今の内から一定の距離感で付き合いを作っておく方が後々のためにもいいかもしれないかなー、と思ったわけだよ。


 ぶっちゃけ打算だが。


 それに一応『物語』のこともある。


 そんなものに従う気はさらさら、これっぽっちもない私。ぶれる気はない。今更根暗にシフトチェンジなどする気はない。


 でも、それでも。


 事件は、きっと起こる。――『主人公』が解決していくはずの事件は。


 私というイレギュラーを除けば、これほどまでに筋に忠実に進んでいるのだから。


 関わらずに済むならスルーしたいけれども、そうもいかないのだから迷惑極まりない。


 だって、その事件って、このメイソード王国を根底から揺るがしてしまう規模のものなんだよね。私はもちろん、公爵家の使用人、公爵領の人びとへの影響も免れない規模。


 それは、困るんだよ。


 私にとって、この『ランスリー公爵家』は、全てなのです。

 私の居場所で、私の家。私の家族。私の領民。

 全てが、私のものなのです。


 それを犯すことを、私は許さない。


 私のものに手を出すことなど、許すわけがない。他の誰のものでもない、前のブタ代理人の圧政からようやく信頼を取り戻して安定を見せてきた、私のものなんですよ?


 それが、再び混乱に陥るなんて、冗談じゃない。


 けれども、だからと言って簡単に解決はできない。だってこの事件には、王族が根深くかかわっているのだ。


 どろどろ愛憎模様なのだ。


 いくら公爵令嬢と言えど、私は子供。精神年齢がアラサーでも、この世界では子供なのです。か弱いのです。


 つまり、人脈が多くあるに越したことはない。王宮に、王族に。


 ……まあすでにいろいろと行動を始めている現在、無くてもなんとかなると言えばなるから今まで王子を邪険にしてきたんだが。だって面倒臭かったんだもの。


 だからこそ、あの日、肉食獣なバトルを王子に見せたもともとの私の目的としては警告と牽制だった。


 ジルファイス・メイソードは『物語』でもそうであったように、年齢に比例しないほどに敏いチート持ちだからだ。


 ……私は対外的には『人見知りが治っただけの普通の令嬢』を演じている。魔力量が突出しているのは血筋のものだし、『ランスリー家の怪』の『表向きの真実』は旅芸人が詠うような『公爵令嬢の勧善懲悪』ではなく、うちの使用人さんたちの密告によって王家が手を回したことになっている。その辺りはいろいろと裏話があるのだが今は割愛しよう。


 ともかくも、今後起こる事件に対応するためにも、今はまだ『シャーロット・ランスリー』が普通ではないと知られるわけにはいかないという理由が大きく占めている。


 けれど、そこで出てきた第二王子ジルファイス・メイソード。


 彼は恐らく、私が普通ではないと気付いてしまう。……否、気づいていたはずだ、初めにアポなしでうちにやってきたときから。


 ……領主代理にまつわる一連の処理のため国王に謁見した時に、隠れて此方をうかがっていた小さな気配は彼だろう。


 だからこそ彼は『ランスリー家の怪』に興味を持った。時間を空けたのは彼なりに下調べをしたのもあるだろうし、うちの領地の問題もあったから時機を見ていたというのもあるだろう。


 つまり誤魔化せば誤魔化すほどあの王子様はこちらを探ろうとする。

 ならば逆に情報を与えようというのが私の目論見だ。


 彼に『シャーロット・ランスリー』は正しく『普通ではない』と認識してもらい、『無力ではない』と警戒をしてもらう。


 その警戒で私の行動には意味があると理解ができるだろうし、無駄に言いふらしたり手を出したりすることが得策ではないと気付くはずだ。


 そして安易に近づかなくなればいいと思ったし、近づかないだろうと思っていた。そうすれば彼に対して採れる対策はいくらでもあるからだ。


 ……が。思ったよりこの王子、好戦的だったのだ。






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