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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第一章 貴人の掌
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1/7 肉食獣は微笑む


 さて、ところ変わって現在中庭。

 剣を持って相対する私と師匠たち。流れる空気は真剣そのもの。

 ピリピリとしたそれは肌が切れそうなほどです。


 ……どうしてこうなった。


 いいえ原因ははっきりしています。王子です。私は何一つ悪くない。


 あのキラキラ腹黒王子が『じゃあ、その剣術の先生とお話しさせていただいてもよろしいですか』などという妄言をいけしゃあしゃあと吐いたものだからこんなことに。やめろ無邪気を装うな、目の奥の純粋さは既に失われていることは見抜いている。


 しかし、齢十一にして純粋さを失っていても王子。腐っても王子。その要望をガン無視はいただけなかった。


 斯くして呼ばれた我が師匠たち。


 一人は、剣術の師匠。話の分かる気のいいおっちゃん。見た目は、赤みがかった金髪に茶色の瞳を持った筋骨隆々の小父さまです。お名前はディガ・マイヤー。


 その隣にはもう一人、魔術の師匠。見た目繊細っぽい細身で色白のおじいさん。白髪にはちみつ色の瞳を持っている。お名前はノーウィム・コラード。そんな彼は、歳をとってはいても、黙っていれば美形の部類に入るかもしれない顔をしている。黙っていれば。喋り出すと魔術狂いの変態でしかない。


 ちなみに私は彼らを愛と本音を込めて心の中では『筋肉達磨』と『魔術狂』と呼んでいます。


 まあ、要はどちらも実力は折り紙付きなのだが、折り紙付き過ぎてちょっとイっちゃった感がある。

 仕方ない、ほら、天は二物を与えないっていうじゃない。実力を得た代わりに彼らは何かを失ったんだよ。


 そして天下の公爵家付がそんなのでいいのかと言われれば、私のレベルに合わせた結果選択肢がなかったとしか言えない。

 わが身のスペックの高さを嘆いた唯一の点だ。


 ……ごほん。まあ、それは置いておこう。


 でだ。そんな師匠方と私が、なぜにキラキラ王子の目の前で真面目に相対しているかというと。

 勘違いと要らない横槍の所為に他ならない。何度でも言おう。私は悪くない。

 噓なものか。ご覧あれ、元凶は私の目の前にズラリと陳列している。


 まずは、呼ばれたことで王子との話が終わったと思っていたのか、授業に入ろうとした筋肉達磨と魔術狂。

 そして、違うと冷たく否定したにもかかわらず王子の鶴の一声。おい余計なこと言うな。お前の目的は我が筋肉達磨と魔術狂との談話ではなかったか。


 しかし、そんな主張は綺麗に無視され、授業風景を御覧に入れることに。権力が憎い。


 そしていい加減ストレスがたまっていたからと言って言いくるめる努力を放棄した私はきっと師匠連に悪影響を受けている。

 王子は興味津々だが、瞳の奥には微妙に馬鹿にした色が宿っているのも気づいていたからなおさら少し、灸をすえたくなったのもある。


 おい王子猫がはげかけてるぞ。


 女というのはなめてかかれば死ぬほど後悔させられる生き物だ。


 そもそも、筋肉達磨はともかく魔術狂もいるということに注意を払うべきだ。なぜならば私は『ランスリー家』だと、彼も知っているのだから。


 それとも今に至っても彼の中には数年前の人見知り少女がいるのだろうか。


 ……まあいい。もう授業は始まっている。キラキラ属性の王子様などいないものとして集中しよう。

さて、説明しよう。この魔術および剣術の授業は、思いっ切り実践型だ。


 そして筋肉達磨も魔術狂も、子供相手に手加減など基本的に知らない馬鹿である。

 そして止め時も毎回綺麗に忘れてやり過ぎる。馬鹿である。


 だから私は私の限界を己で見定めて、いつでもストップをかけているのだ。


 弟子が止めるまで止まらない師匠は本当に師匠と言えるのだろうか。深く考えてはいけないのだろうか。


 ……ともあれ、実戦形式とは言ったが、具体的にどうするのかというと。……見ての通り、対戦するのだ。師匠たちと。


 はっきり言おう、ずるくね? と最初は思った。だって二対一。大人と子供。師匠と弟子。なんなのそんなに私をいたぶりたいの。筋肉と魔術に狂っただけでなくサディストまで患った重症患者なの?


 でも話を聞くと、剣術の師は脳筋で、魔術などはからっきし。なんという見た目通り。


 魔術のひょろじいさんは剣術など言わずもがな。やっぱり期待を裏切らない。


 でも私は、剣を携え魔力を行使することを望んだ。確かに、最初に彼らにそう言ったのは私だ。

 そしてそこから導き出されたのがこの授業スタイルでした。躊躇いなく極論に走る彼らはきっと教師に向いていないと思う。





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