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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第一章 貴人の掌
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1/6 彼女は貪欲


 いや、まあ根暗は置いとくとして。


 ……『物語』の中の『彼女』は孤独だった。影に潜んで生きていた。だから『光』にあこがれた。その象徴として第二王子に執着した。


 その第二王子以上の『光』となり得たのが主人公で、彼女に救われたから『シャーロット・ランスリー』は第二王子への執着を切り捨て、主人公に傾倒したのだろう。

 要は、彼女が生きるために支えとしたのが最初は両親への愛情で、次が第二王子への執着、そして最後が主人公ちゃんへの恩義だったと言える。


 ……やだ、『シャーロット・ランスリー』が根暗のみならず依存系だった事実。ホントやめて。記憶を取り戻して心底よかったと思う瞬間が今ここに。


 ……話を戻そう。王子にとっても幸いなことに記憶を取り戻した私は、今後もできるだけかかわらない方向で行こうと思ってやってきた。まあ、私の能力具合からして遅かれ早かれ多少の接点は持たねばならなかっただろうが、最小限にとどめるつもりだった。


 『明日セカ』の世界でも、王子は『シャーロット』が望んだからという理由だけでなく、その魔力の高さと肩書きのせいで無下にするわけにもいかず、しぶしぶ相手にしている、という描写があったはずだ。第二王子は腹黒属性。ま、適当にあしらわれつつ都合よく利用される女だったのだ、あの『物語』での『私』は。


 でもまあ、裏を返せば私さえ引けば本当に必要最低限の接触で済むということだ。


 ――だというのに。


 目の前にはいらない興味を持ってわざわざやってきた、お暇なキラキラ属性王子。


 なぜ来た。


 帰れ。


 私はそろそろ、かぶり続けている猫のブラッシングの時間だ。手入れは念入りにしなければならないなどという事は、同じ腹黒笑顔仮面の王子様なら言わずともわかるだろう。


 この無駄な会話はなんだ。

 時間の浪費か。

 それとも何か? 猫の耐久力を競っているのか。


 受けて立つと言いたいところだが、王子の猫もなかなか年季が入っているので勝負が着きそうにない。

面倒臭いな。


「――姫はどのような習い事を?」


 世間話は、まだ続く。


「ピアノに刺繍……乗馬や剣術なども少々嗜んでおりますわ」


 乗馬や剣術、の所で若干驚いたようだ。どうせ調べればわかってしまうのだから、隠す意味はないし隠すつもりもなかった。でも、まあそうだな。普通お嬢様はやらないだろう。私はやるけど。少々どころではないけど。


「ジルファイス殿下はなにをなさっておいでですの?」

「私ですか? 私も、勉学の合間に剣術などで体を鍛えております。……まだまだですが。それにしても意外ですね。貴方のような可憐な御令嬢が、剣術など」

「ふふ、いつまでも落ち込んではいられませんもの。両親は病でしたが――いつどんなことがあるかはわからないもの。最低限、自分の身を守るすべを持っておきたいと思っておりますの」


 嘘だ。楽しいだけだ。


 ――だというのに、だ。


 にこにこにこにこ、キラキラキラキラ。そんな擬音が出ていそうな顔で。


 この王子さまはとんでもない提案をしてくれやがりました。

















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