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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第一章 貴人の掌
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1/3 日常は破られる


 ちなみに。


 そんなお家騒動があっても私は継承権を持たない暫定公爵令嬢。すぐに国から新しい代理人兼後見人がやってきました。どうやら国王は王妃に締め上げられたようだ。王妃様素敵。


 微笑み仮面でお出迎えしたその人物、さすがに隠せない真面目な人柄がにじんでいた。同じ轍は踏まないのだろう、国の威信にかけて。魔術特化のランスリー筆頭公爵家、その歴史を重んじてということもあるし、私も私で魔力チートだから物理で怒らすと怖い存在であるということもあるだろう。


 ランスリー家の血筋というのは王家にとって手放せない存在なのだ。


 まあ、そんな新・領主代理さんは執事さんと私の完全監視下にありますが。本人は微妙に居心地が悪そうなのは判ってる。でも前例が強烈だから仕方がないと思うの。まあがんばれ。頑張れば頑張っただけ打ち解けることができるはずだ。……多分。


 でだ。


 そんなこんなで邸内、領地に目途がついたところで、次は自分の事ですよ。いや、私の立場とか好感度の話ではなく。

 公爵令嬢として、必要なこと。お勉強です。作法とか歴史とかその他もろもろ、今までの『私』の知識ではやはり足りないのだ。


 でも勉強の中で最も必要なのは知識面ではなく技術面だったりする。


 何度か言ったが、我がランスリー家は魔術特化の家系。そして物語の中でも明らかなように私は魔力に関してはそんな家系の中でも突出している。そう、『明日セカ』で最強の魔術師と称されているように。

とはいっても最初からこの尋常でない魔力をコントロールなどできるわけがない。なので、出来ないのならば学べ、ということで召喚、魔術師の先生。


 そしてシレッと、召喚、剣術の先生。


 ……完全に自分の趣味ですが何か。前世の『私』も趣味の一つは道場破りだった。


 まあ、それにほら、実益もある。貴族の令嬢とはいえ、自分の身は自分で守れたほうがいいだろう、うん。


 私には常に護衛はもちろんいる。信頼もしている。当然だ。でも個人的な意見として魔力だけに頼った人間にはなりたくないわけで。せっかくね、スペック高い人間に産まれたんだからさ、やれそうなことは何なりとやっとかないともったいない。これでも近接格闘技から剣術に譲歩したんだ。……それだけはやめてくれと侍女さんたちに泣かれたからね。


 ……ごほん。でもごめん、この剣術の先生がなかなか話の分かるおっちゃんだった。型通りの剣術だけじゃなくて、実践的な武術まで叩き込んでくれた。


 貴族令嬢に有るまじき傷だらけにはなったけどな! 侍女さんたちの心配が見事的中。話の分かるおっちゃんは筋肉に狂った変態でもあった。容赦も情けもありませんでした! うん、もういいよ! バッチ来いってもんよ!


 午前中が座学。実はこの座学に領地経営の実務も含まれているが、まあ問題ない。そして午後の半分が令嬢の嗜み講座。午後残り半分が魔術と剣術の実践おけいこでございます。これが一日のサイクルになって久しい。


 流石に毎日は止められたので、週休二日制。

 子どもに無理は禁物です。成長期だしね。体出来てないしね。無理して体調崩したら元も子もない。

お蔭さまで、日々私のチート具合は向上しております。


 さらなる完璧な令嬢を目指して巨大な『猫』を飼育中です。この猫、なかなか私になじんで背負い込むことにも手馴れてきました。魔術の方も順調、剣術もそれなりに。


 先生方には『大型の肉食獣のような雰囲気が大変宜しい』とお褒めの言葉をもらっております。


 ホントに褒めてるかは別だ。もう少し実力がついたらかの師匠連に雇い主への接し方を教えてあげようと思う。一生うちで雇うわけではないのだ、学んで損はないだろう。むしろそんなフランクな接し方を公爵家令嬢にしてしまう彼らはこれまでどうやって就職先を得てきたのだろうか。意外とこの国の貴族は寛容なのだろうか。


 まあいい。


 なにはともあれそんなこんなで、私の日常は大変充実していて平和である。

 根暗になるつもりもひきこもりになるつもりも毛頭ないとは宣言済み。

 物語の筋など青空の彼方にほっぽり投げてお星さまになった。


 が。


 何という事だろう。私の愛すべき日常は、たった一人の訪問者によって崩れ去った。


「お嬢様、早急に、お支度を」


 珍しく動転したように侍女・メリィが言う。その焦った様子に、違和感を覚えて顔を引くつかせた。


「……どうしたのかしら、メリィ?」


 それでも私は至極冷静にメリィに尋ねた。それにばっと顔を上げ、頬を紅潮させて興奮気味に彼女は告げた。



「第二王子殿下が、お嬢様にお会いになりたいと――!」



 ……。………。

 元婚約者候補殿が、私の平和を壊しに襲来した。






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