第三話/旅の案内人
タァッ!
瑛十が駆けつけ、怪物を蹴り飛ばした。
「やっぱりな、襲うと思ったぜ。」
「瑛十さん…」
「あぁアカコ、たった今思い出した。こいつの名前はエビルサイド。って奴らの一人だ。」
グワァァァァ!
「キャッ!」
朱子を襲おうとしたが、どこかに飛んで逃げた。
「…大丈夫か?アカコ。」
「朱子です!と言うより、なんであの姿にならなかったんですか?」
「あぁ…あんなの、相手にすることもない。」
「おーい。あの…美鷺さーん。」
本庄の声が外から聞こえて来た。
「本庄さん!大丈夫ですか?」
「いや〜歩くことに支障はないからさ。あと…コレ。ペンダントさ…ちょっと欠けけて、目にちっちゃい欠片入ってしまって…」
「おい!お前かってに触るな!」
瑛十は慌てて本庄からとった。
「さっきの…嘘だったんですね。相手にすることも無いって。」
朱子は笑った。
「アカコ!それは違う!」
「あのさ…こっちの話聞いてくんない?近くの診療所でみんな逃げてるって。」
「公民館じゃないんですか?」
「公民館?」
「え、知りませんか?」
公民館の開館は2003年。まだ計画すらないかも知れない。
「…それじゃぁ、診療所とやらに案内してくれ。」
そこに行くと人でいっぱいだった。
「おいおい、多すぎだろ…な、アカコ。」
「朱子です…とにかくテレビを見てください。」
「現在、都心では怪物が大勢出現し、多数の犠牲者が出ています。また、避難所に避難しても怪物は集団を狙うと言う特徴があるので…」
ブチン!
なぜかテレビに映像が入ってこなくなった。
「あれ?」
「どうせ、テレビ局にも人が多くいるから襲ったんじゃないのか?」
瑛十は珍しく真面目に解釈した。
その時、朱子の目の前に、一人男がいた。
「やぁ、美鷺朱子くん。私は時鳴だ。君たちの旅の案内人だ…」
「時鳴…さん?」
「君たちはこの12の時代を旅し、エビルサイドの暴走を食い止めてくれ…ここが君たちが旅する最初の時代、セブンスゲートだ。」
「セブンスゲート?」
「頼む…この歴史を…救ってくれ…」
時鳴は消えた。
「どうしたアカコ?」
「朱子です!何か見えませんでしたか?」
「…さぁな、今見えるのは…」
少女がひとりで泣いていた。
「大丈夫?」
声をかけたのは本庄だった。
「お母さんが…」
「さみしくないさみしくない。ほら、心の中でお母さんの笑顔を思い出してごらん。笑顔は、ここにいるでしょ。」
うん、と少女は頷き、笑顔を見せた。
「ほぉ、あんなベタなことを簡単に言えるとは、恥知らずだな。」
「瑛十さん!」
「はいはい…」
ビルの屋上に、エビルサイドが集まっていた。
リーダー格にどんどん吸収され、一つの巨獣となった。
診療所からも、巨獣の雄叫びが聞こえた。
「何ですか?」
「1999年を、破壊しようとしている!」
瑛十はペンダントを握り、診療所から出た。
街中には吸収されなかったエビルサイドが蔓延っていた。
ギィァァァァ!
瑛十はエビルサイドをどんどん突き飛ばした。
「ハッハッハッ…!」
そしかし予想以上に数が多い。
「ヒャァ!ダハッ…」
ダメージが多くなり、瑛十は倒れ、エビルサイドにかこまれた。」
キシャァァァァ!
「アァァァーッ!」
その時、ふしぎな事がおこった。
銀色のビジョンが瑛十から飛び出した。
ビジョンがエビルサイドを瞬間的に吹き飛ばした。
「よし、やるか…」
ビジョンは巨獣に向かって高速で移動した。
巨獣はその巨大な腕を振る…おうとしたが、瑛十は時の流れを緩め、避け、攻撃した。
ギャオォォォォン!
巨獣の急所をついた。
巨獣は力を振り絞ってさらに時代を破壊した。
「くっそ、どうすればいい。」
「20 O'clock !」
時鳴が叫んだ。
「何だ変質者!」
「変質者ではない。私は旅の案内人、時鳴。」
「分かってる。で、何だ?」
「エビルサイドの胸のパネルを砕け。あの、「7」だ。」
「ほぉ…」
瑛十は時鳴の言う通りにして、胸のパネルをめがけた。
「ハァ…ハァァァァァァ!」
光となり、闇を砕いた。
ギィァァァァ!
巨獣は、粒子になり空にとけた。
「これで、一件落着…か。」
診療所に瑛十は戻った。
「瑛十さん!」
「大丈夫か!」
「おぅ、俺の活躍を見てもらいたかったな。」
「はいはい。」
「もう安全だ…帰るぞ。」
「帰る…」
朱子は、自分の居場所はここではないということをわかっていた。だから…
「帰りましょう…そう言える日が来るまで、旅を続けましょう瑛十さん。」
「何だお前、急に自分では名言を言ってます〜みたいな顔で。」
「瑛十さん。いい加減そういう態度やめてくださいよ。」
「いいじゃんいいじゃん、朱子ちゃんも瑛十さんも、じゃぁね。」
「二度と顔を見ないだろうからな。俺の顔を焼き付けろ。」
瑛十は本庄に「変顔」を見せた。
「ブッ…ハハハハハハハハハハアッハッハッハッハッハッ!」
本庄は思い切り笑った。
朱子も笑った。
「二道瑛十…お前の旅を終わらせなければ…さもないとこの歴史は!…」
ある男がこの時呟いた。
あの男が…
「それじゃあ行くぞ。」
瑛十は診療所のドアを開けた。
次の瞬間目に入ったのは…
「お主、何者じゃ!」
サムライが、目の前にいた…
つづく