第一話/始まり
焦土と化した街に、十二人の影があった。
どれも黒いマントで体を覆い、銀色に輝く奇怪なマスクをつけていた。
その中の一人が、他の十一人と戦っていた。
ハァッ!ダァァァァッ!
一人、また一人と倒されていく。
瞬間的に。
最後の一人が、最後の力を振り絞ってグーで殴った。
しかし手で払いのけられ、その勢いでそのまま倒れた。
そんな中、一人の女が見ていた。
彼女はこう呟いた。
「瑛十…
おい起きろ!
ん…?
2015年2月4日
「さっさとコーヒーを飲ませろ。俺は客だ!」
「あぁ…ごめんごめんごめんなさい。」
「三回もいい。とにかくシュガー多めでな。」
「あ、はい。」
夢か…
「はいどうぞ。」
この店員、美鷺朱子は悪戯をした。さっき注文した客はシュガーを
多めでと言ったが、朱子はわざとシュガーを入れなかった。
さて彼はどんな反応をするか?
ちょっとした悪戯心だった。
ブゥゥゥゥゥゥッ!
「なんだこいつブラックじゃねぇか!何故シュガーを入れない!」
他の客は目をそらし、お金をテーブルに置いて出て行った。
どうしよう…
朱子は混乱していた。
幸い、店長が買い出しに行っていたのでよかったが、今なにをするべきか完璧に忘れていた。
店の外
「あの客嫌な感じだったわねぇ。」
店を出た客が彼の噂をしていた。
その時、
何か裂け目が出来てきた。
ただの空中に。
何かが見えてきた。
「おいおい、まずはお客様の吹いたコーヒーを拭け。」
客が傲慢な態度をとって話しかけた。
「あ〜はいはいはい分かりました。」
「また三回、これで二回目だぞ。」
朱子はテーブルやその周りを拭いた。
「ほーれ、どんどん働けー。」
彼は自分のペンダントを指で思い切り回していた。
「は〜だいたい終わったかな…」
あぁぁぁぁぁ!
その時彼は自分のペンダントは、空高くぶっ飛んだ。
ゴドンッ!
割れた音がした。
「…俺のペンダントが…お前のせいだ!」
「いやあなたのせいですからね!」
朱子は超スピードでツッコミをした。
「いや、第一お前がシュガーを入れなかったから…
キャァァァァァーッ!
外から叫び声がした。
「ん…?」
朱子は外に出た。
怪物が、さっき店を出た客や通りがけの人を襲っていた。
「おいどうした?」
彼も店を出て朱子に尋ねた。
「わかりません…」
朱子はそう答えるしかなかった。
「というかペンダントの欠片!」
「あ、私持ってます!」
「早く渡せ。」
「あ…」
ギシャ〜…
店の中から何か聞こえた。
怪物だ。
「え…キャッ!」
朱子はとっさに逃げた。
「おい待て店員!」
彼も逃げた。
彼の目の前には、凄惨な光景が広がっていた。
怪物との鬼ごっこに負けた者は殺され、その肉を怪物から食べられていた。
たすけ…て…
そう微かに聞こえたが、身の毛がよだち助けられなかった。
キィィ…
「キャーッ!」
朱子もターゲットになった。
「来ないで…来ないで!」
まて!
彼の声が聞こえた。
怪物は攻撃するのをやめた。
「カッコつけでも何でもない。ただ、まだ大きな叫び声を出せる奴がいたからな…」
その時、彼の体は銀色に輝いた。
キシャ〜!
そして、その体を黒いマントで覆った。
来い!
キシャ〜ッ!
彼は怪物に挑発し、戦い始めた。
最初は殴り合いだったが、次第に戦闘スタイルが変わり始めた。
彼が加速した。
ビシュン!ビシュン!ビシュン!
キシャ〜!
たった3発で怪物を倒した。
「おい店員、大丈夫か?」
「それより、なんですかこの格好。不気味ですよ。」
「あぁそうか。」
彼は元の姿に戻った。
「あの…お名前は?」
「どうした急に?」
「いや、命の恩人なので…」
「二道瑛十だ。覚えてろ。」
………
「瑛十?何かどこかで…」
「どうした?そんなに俺は有名なのか?」
「いや、とにかく店に戻って避難の準備しよっかなって…」
「ほう…避難所がどこにあるかしらないだろ?」
「どうでもいい!」
「いや、どうでも良くないだろ。」
店に戻った朱子は必要な物を袋に詰めて、店を出て行った。
ガチャ…
どこか違う。
さっきの怪物もいないし叫び声も聞こえない。
何があったのか?
普通に人が通ってる。
そしてガヤガヤと店の中がうるさい…
入ってみた…
いらっしゃい!
店長が迎えてきた。
いや、どこかおかしい。
若い…
「おい店員。」
瑛十が朱子に話しかけた。
「何がどうなっているんですか?」
「カレンダーをよく見ろ。」
………………!
1999年12月30日
「2015年じゃない…」
つづく