6.方向音痴
「……これで手続きは終わりじゃ。確かお前は城に住み込むんじゃったか?」
「うん。……護るなら、近い方が良いですから」
その返事を聞いたシドは、どこか気まずそうな表情になる。
「あの子の立場は特殊じゃから……昔のように、とはいかんぞ? そもそも見分けがつくかどうか……」
「まぁ、それでも。……たぶん、分かると思うけどなぁ……」
「それはそうと。住み込みなら、もうお前の部屋は用意されておるはずじゃ。近衛騎士の私室は分かるな?」
「うん、分かるけど……」
「ならば良し、明日に備えて今日は早く休め。ワシは仕事があるからな」
「分かる、けど……」
ウィルが語尾を濁しているうちに、シドは去っていってしまった。
残されたウィルは困ったように頭を掻く。
「僕、方向音痴なんだけどなぁ……」
それも重度の。地図があっても目的地の反対方向に真っ直ぐ向かうほどである。
とはいえ、いつまでもこうして突っ立っているわけにもいかない。
先ほどまで手続きをしていた受付まで引き返す。
「すいません、新米の近衛騎士なんですが……」
「はい。……えっ?」
巻き毛の女性職員に二度見されてしまった。
「私室にはどうやって行けば良いんでしょう?」
場所が分からない訳ではない。
ただ、実際に道を行くと想定通りにいかないだけなのだ。
「それでしたら、そこの廊下を抜けて三番目の十字路を左に曲がった突き当りに……」
そんな内心を知る由もない職員は、適切に答えてしまう。
「城の見取り図がありますので、それをご覧ください」
……見取り図には、たどり着けた。
だから、迷ったのはその後だ。……たぶん。
通りすがった人に道を尋ねること七回。
引き返した回数は数え切れず。
だというのに人気はどんどん少なくなり、日も暮れだす始末だった。
(仕方ない、次会った人に部屋まで直接案内してもらおう)
情けなさを噛み締めつつ、そう決めたウィルだった。




