2話 兄弟
「おはよう華。」
「おはよう流お兄ちゃん。颯もおはよう。」
流はきれいな青い髪をしたイケメンだ。長男である流は優しくて気配りのできる聡明な男性である。すでに就職していて社会人だが、今日は会社が休みのようだ。
颯は四男で私のすぐ下の弟だ。こちらも顔は整っていているが、中学生。所謂ショタ顔である。今日も栗色の毛はふわふわだ。
「はよー華。…寝不足か?」
「え?」
確かに昨日は前世の記憶を思い出したせいで眠れなかった。もしかしたら隈ができているのかもしれない。
「あーそうかも。」
「なんかあったのか?」
「まあねー……あのね颯、流お兄ちゃん。」
『ん?』
「私ね、今日から今までとちょっと違うよ。」
にやっと笑ってみせる。
「なんだ、中学卒業したからか?」
「ううん。性格的な問題で。」
いずれ前世の性格が表れて、今までずっと一緒に暮らしてきた兄弟達には変だと思われるかもしれない。すべてを話してしまえば頭がおかしいとやつになってしまうので、一応保険だ。
「確かにそうかもね。今日はなんだかいつもと違う気がするよ。」
「なんつーか…こう…キリッとしたな。」
前世でくぐってきた修羅場は数知れず。記憶を思い出す前の自分はかなりの天然系ふわふわ少女だったので、ギャップはかなりあると思う。
「話はそれだけー。……お、今日はパン?」
「そうよー。華はイチゴジャムとマーガリンどっちにするー?勿論イチゴジャムよねー?」
奥の台所から母が出てきて呼び掛けた。
「今日はマーガリンにするー。」
「あら?珍しいわねー。」
すると後ろからうわーという叫び声が聞こえてきた。
「華たんが…イチゴジャムを選ばないなんて…事件だ!!華たんどーしたの!?」
紹介しよう。シスコンである。そしてオタクである。
「いや…なんか気分…かな。」
次男の晴は残念な男である。普段通っている大学では明るく勉強も運動もできるイケメンとして通っているのだが、その中身は二次元オタクで重度のシスコン。しかし彼女がいる。不思議である。
「どうしよう、このまま華たんがグレ始めてお兄ちゃん嫌いとかいいだしたら俺泣いちゃう…俺の華たんがぁぁぁぁ!!」
『カチッ』
―――確かにそう聞こえた。
「お前のではねぇよ。」
しまった。つい突っ込んでしまった。ゆっくりわまわりを見渡すと、兄弟達は私の豹変ぶりに三者三様におどろいている。元の私は天然なふわふわタイプだったので、ギャップが激しすぎた。
「本当に変わったなぁ…。」
流が感慨深そうに呟いた。颯に至っては驚きのあまり声が出ないようだ。
「うわぁぁぁぁ!!華たんがグレたぁぁぁぁ!!」
晴は外に駆け出していった。あいつのことはほっといても大丈夫だろう。
―――決して冷めてはいない。むしろ好きなタイプだ。みていて面白いから。
「華…なにかあった?」
「え?……まあ…お兄ちゃん達が心配することはなにもないよ。」
流石に変わりすぎたか。これから知り合いの前では今まで通りを心がけないといけないな。
私はお母さんがダイニングまで持ってきてくれた焼きたてのパンに、マーガリンをたっぷり塗って食べた。朝ごはんはしっかり食べないとダメだ。
もぐもぐもぐ…
「………ふうん…。」
食べるのに集中していた私は流お兄ちゃんがじっと私を見つめていたことに気がつくことはなかった。
次は彼女の努力回かな…?