9 美月
前回のあらすじ 抜き打ち試験があるんだってさ。
和磨が発した闘争遊戯という言葉。
まさか、この学校に入学してまだ一月もたっていないのにあるとは思わなかった。
闘争遊戯とは、パンドラを使えるもの同士が決められた範囲内で
攻防を繰り返し勝敗を決める、文句なし、待ったなしのガチバトル。
パンドラは使えれば使えるほど勝ちやすいだろう。
決められた範囲内、というのがどの範囲かが分からない。
相手がギブするまで、とか。30分間、とか。危険と認められるまで、とか。
俺的には時間制限であって欲しい。パンドラを使えない俺は、時間いっぱいまで相
手から逃げきればいいから。
「それにしても早いな、闘争遊戯」
和磨がめんどくさそうに言った。
「お前は良いだろ。雛利と、後は美月以外なら誰だって勝てるだろ」
和磨はパンドラが使えるからいい。
あ。美月というのは、美月来。俺のクラスで2番目に優秀な奴らしい。俺は話した
ことがないから知らない。まず見た目が中性的過ぎて男かも女かも分からない。
「美月か……そういえばあいつもパンドラ使えるんだっけ?」
和磨がそういって教室のドアを開ける。
いつの間に教室まで来ていたのか。
「ぬおっ!?」
和磨が情けない声を上げた。
俺もドアの先を見て驚いた。
ドアの先には美月が眼鏡を光らせながら立っていた。
「何勝手に人の話してるんですか。なんですか。馬鹿ですか。死ぬんですか」
俺は始めて美月の声を聞いた。女だった。