日の出を見よう その1
ドンッ……ドンッ……という音がする。何か重いものがぶつかるような音だ。ドンッ……ドンッ……。一体何の音だ……うるさくて布団を頭まで被った。ドンッ……バキッ!
え、バキッ? なんか妙な音だなぁははは、とか思っていると、自分に何かが近づく気配がある。
「起きてくださいねぇ」
「え……まだ外は暗いよ……明るくなってからよろしく……」
「冬の森にいくんですよねぇ?」
「……すーっ……すーっ」
この直後、僕は布団を引き剥がされた。布団にしがみついていたせいで、自分まで一緒にベッドから床に落ちた。
「ぐあ……」
天井を見上げる形になった僕の顔を覗き込むのは、ゴウだった。痛さで目の覚めた僕はようやく思い出す。
「あ……そうだった。冬の森で朝日を見るんだったね」
「そうですねぇ。歌姫を起こしてきてもらっていいですかねぇ?」
「わかった。ちょっと待ってて」
そう言って彼女の部屋に行こうとすると、外の景色が見えた。玄関から。
「なに、この大きい穴?」
「開けようと思って玄関にぶつかっていたら、なかなか開かなくてつい力が入ってしまいましてねぇ……」
「……引くんだよ、ここ」
玄関の跡形すら無いその大穴を見て、これは悪い夢だと現実逃避をしながら彼女の部屋の前に行き、扉をノックしようとすると、扉が急に開いて僕に直撃した。
「ぶっ……」
「どうしたの……こんな時間に騒いで……」
扉の影で僕が悶絶していることには気づかず、彼女は玄関の大穴を見た後、ゴウを見てこう言った。
「扉は外からは引いて、内からは押すのよ。こんな風に」
え? こんな風に? 悪い予感しかわかない言葉を聞いた。遠ざかるドア、離れようとする僕。近づくドア、脚がもつれて離れられなかった僕。
「むあーっ!」
僕が痛みに悶絶の声を上げると、彼女は扉の影にいる僕を見て、
「いるならいるって言って。危ないから」
「なにを言えばいいのかな……?」
「んー……おはよう、ちなみに僕はここにいます、とか」「朝から居場所を言わないといけないなんて、恐ろしく寝相が悪いんだろうね、僕」
「そうじゃないの? だってそんな所で寝ているし」
妙な勘違いをされてしまった。次からこんなことにならないように叫んでみようとか、そんなことを思いながら僕たちは出発の準備を始めた。
道中。
「冬の森のどこで朝日を見るの?」
「ええと、山を登るんですねぇ」
「山を!? 」
「そんなに驚くことでもない。日の出が森の中から見えないのは当たり前」
「確かにそうだけど……大分時間かかるんじゃない? 」
「んー、今から休まず歩き続ければ、丁度良い時間につきますねぇ。心配しないでいいですねぇ」「わかった。ところで、モケットは?」
「私の背の上でずっと寝ていますねぇ」
「……ま、寒くなってきたら起きるだろ。それまでは寝せといてやろう」
「ん、わかった」
もうすぐ森に入る。冬の山に登るのは初めてて、僕は緊張半分、期待半分だった。