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昔々のおはなし3

 目の前に立つそのナニカは、僕をまっすぐに見つめながら、こう切り出した。


「あなたは、神だった」


「神……?」


 存在など信じられない物を出され、僕は困惑し、思わず尋ね返した。


「全てを創造した存在。私達の始まりです」


「それがなんで僕なんだ?」


「神は、全ての生物を作り、その進化・成長を見ていました」


「何のために?」


 僕は混乱と動揺を必死に押さえ込み、そう質問した。


「自身という存在の意味を見つけるためです。神は気付いたら存在していた。なのに、今の私達の持っている道徳観を備えていた。そして何故そうなのかを考え、ある結論に達しました」


 ナニカは少し黙った後、僕の問いへの答えを言った。


「自分は、今の自分にある記憶のみを残して、ナニカに創られたのだと。しかし、ここでまた疑問が出てきます。自分はなぜナニカによって作られたのか、という疑問です」


 口が異常に乾く。言葉を発そうとしても、金魚のように口を開け閉めするだけになってしまう。


「そして、神は自分のコピー、つまり人々を創りました。しかし、どう頑張っても人は自分と比べても恐ろしく未完成にしか創れませんでした。そこで、人が幾世代も繁栄できるシステムを創りました。文化を継承させることによる進化の果て、自分と同等の存在が出来ることを願って」


 ナニカの青い瞳は僕を射抜いたままだ。


「しかし、進化していく人々は、自分には無い衝動も見せ始めました。つまり、憎悪や欲望です。何故か。神はこう結論付けました。『自分を作ったナニカがそれらを持っていた。しかし、自分には不要のためその記憶を消した。しかし、自分が思い出せないだけで、自分の中にはその衝動が眠っていて、不完全なコピーである人々に発現してしまった』と」


 嫌な汗が出てくる。


「ナニカの存在を知るために、その衝動を深く知らなければならない。そう思った神は、人に擬態し、人々の世界に紛れ込みました。完璧に人をシュミレートするために、自分の記憶を消して」


 頭で鐘が打ち鳴らされている。頭が割れそうに痛い。しかし、ナニカの目から逃れられない。


「そして、神の擬態した人が死んだら、神としての記憶が戻る仕組みでした。それを何千回と繰り返しました。繰り返す度、神のはその衝動を理解していきました。しかし、同時にその衝動は神自身を蝕んでいました。何故なら、神にはその衝動を汚いと思う道徳観が初めからあったからです。」


 ナニカの声が耳に強制的に入ってくる。聞きたくない。


「そして、ついに耐えきれなくなった神は、そんな恐ろしい、汚い衝動を抱える人々を消してしまおうとしまいました。しかし、神の人として過ごした数千年の記憶が、その行動を引き止めました」


 何も考えられそうも無い程、頭は白熱しているのに、芯だけは冷えている。


「神は人々を消していいのか悩みました。しかし、その結論を出すには、神は多くを知りすぎました。そこで、神は決めたのです。次に人となった自分が出した結論にしよう、と」


「そ……れが」


 僕のやっとの思いでひねり出した言葉に、ナニカは頷いた。


「あなたこそ、その神の最後の人。わかりやすく言うなら、神の生まれ変わりです」

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