しゃれこうべ(こんとらくと・きりんぐ)
「なんで捕まったの、マッドドッグ?」
「墓荒らし」
「どうして、墓荒らしなんか」
「自前のアサシンギルドをつくりてえと思ったんだよ」
「つまり、開業資金として、墓を荒らして、死者の所持品を盗もうとしたってこと?」
「そんなことするわけねえだろ。そこまでカネに詰まってねえよ」
「じゃあ、何をしたら、明日、ギロチンになるんだ?」
「頭蓋骨かっぱらった」
「頭蓋骨? それがアサシンギルドと何の関係がある?」
「なんつーか、死の象徴って感じ。骸骨が飾ってあるほうが、アサシンギルドらしいじゃねえか」
「……きみ、アサシンギルドに行ったこと、ある?」
「あるわけねえだろ。おれの専門は強盗だもん。あとはサツ殺し」
「ぼくが知っている大手のアサシンギルドで頭蓋骨を飾っているところなんて、ひとつもない。パン屋ギルドや羊毛ギルドに化けて、仕事を取ってる」
「つまり、おれは世界で初めて頭蓋骨を飾るアサシンギルドのギルドマスターになれたんだな。なんだよ、畜生。余計に死にたくなくなったぜ。でも、まあ、仕方がねえや。なあ、友情ってのは価値があると思うか?」
「あると思うけど、そこから過剰なものを引き出すべきではないと思う」
「なんだよ、分かりにきいな。弁護士みてえだ」
「弁護士って偽って接見してる」
「どーりでだせえ服着てると思った。弁護士ってのはなんでみんなだせえカツラかぶるんだ? 自分よりもマヌケな格好するやつによ、弁護頼みたいと思うか?」
「法律でそう決まってる。判事や検事だってかぶってるでしょ?」
「あいつらはいいんだ。敵で馬鹿だから。で、おれの頼み、きいてくれるのかよ?」
「内容次第かな」
「なんだよ。ディベニアでワッロ兄弟ともめたとき、助けてやったじゃねえか」
「わかったよ、それを言われると弱い」
「ようこそ。パン屋ギルドへ。新規開店ですか?」
「いや、そうじゃないんだ。ちょっとお願いがあって。このパンをここに飾ってほしいんだ」
「これは――ひょっとしてマッドドッグ・パンではありませんか?」
「そう。正確に言うと、マッドドッグの頭蓋骨パン」
「本当に頭蓋骨そっくりですね」
「そう。でも、パンなんだ。こんな見事なパンを飾ってみたいと思わない?」
「わたくしどものところでですか? いえ、こんな立派なパン、わたくしどもにはあまりにももったいない話でございます」
「飾ったら、かっこいいと思うんだけどなあ」
「本当に過分なお話で申し訳ないのです。残念ですが――」
「――カロニア王国の新規開店がうまくいってませんよね。イースト菌の問題で」
「ええ。――あなたなら、解決できますか? ――いえ、愚問でした。あなたなら確実に解決できます。ああ、棚に空きがありました。ちょうど、素晴らしい飾り物が欲しかったのです」
「じゃあ、マッドドッグの頭蓋骨パンを飾ってくれる?」
「はい。もちろん」
「いやあ、ありがたいなあ。あんまりありがたいから、カロニアのイースト菌について、ぼくが解決したくなっちゃった」
「解決していただけますか? あの汚らわしいイースト菌どもを」
「任せてよ」
「では、それはこちらに」
「いや、あっちのほうが目立たない?」
「ですが、こちらのほうが日当たりがよいと思いますが」
「別にてっぺんくり抜いて鉢植えにするわけじゃないんだから、こっち」
「ですが、鉢植えにしてグロテスクな食虫植物などを植えたほうが、彼も喜ぶのでは?」
「あー。そう言われれば、そんな気がしてきた」
「では、頭蓋骨パンはこちらに飾るということで」
「オッケー」
「では」
「じゃあ。とびっきりグロい鉢植えにしてやってね」




