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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました:今日からあなたが艦長です!!  作者: なつのさんち
二〇四七年

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248:卒業式

三月九日 月曜日

 今日は艦治(かんじ)達が通う高校にて、卒業式が行われる。


「じゃ、行ってらっしゃい」


「うん、行ってきます」


 鳳翔(ほうしょう)にある皇宮内私室にて、まなみが艦治へ行ってらっしゃいのキスを送る。

 艦治は優しくまなみのお腹に触れ、撫でる。その手に、まなみの両手が重なる。


 まなみはそもそも在校生ではなく、妊娠中という事もあり、卒業式への参加は見送った。

 電脳OSの視界共有ではなく、個人的に依頼を出した<仁狐怒兎(じんこどと)>の限定生配信を、空中ディスプレイ越しに見る予定だ。



 ワープゲートを開き、艦治は直接高校の特別教室内へ移動する。


「今日は喧嘩しないようにね」


 すでに護衛の四人が待機しており、艦治に無言で頭を下げる。

 そんなやり取りをしていると、良光(よしみつ)望海(のぞみ)(わたる)恵美(えみ)もワープゲートを使って登校して来た。

 それぞれ挨拶をして、いつも通り席に座る。


「今日で最後かー」


「この教室に移動してからはほとんど四人だったね」


 恵美と望海が思い出に浸っている。


≪お前、(めぐり)さんとどうなんだよ≫


≪あ、僕もそれ気になる≫


 良光と亘が艦治に気になっていた事を追及するが、艦治は苦笑いを浮かべて、自分の頭を人差し指でコンコンと突く。

 亘には意味が分からなかったが、良光が鞄の中からノートを取り出して、筆談で会話を始める。


『電脳通話の内容が筒抜けなのか?』


 艦治が頷く。


『廻さんと付き合う条件?』


 艦治が頷く。


「うわぁ……」


「何ともまぁ」


 良光と亘が、今の艦治とまなみと廻の状況に引いてしまう。


 まなみは自分の妊娠中、艦治の夜のお付き合いが出来ない事について、悩んでいた。

 性欲抑制スキルを入れれば良いのでは、と提案する艦治に対し、まなみはそこまでするつもりはないと答えた。

 万が一、本来の性欲に対して影響が出てしまうと困るからだ。

 この話は絶対に雅絵(まさえ)に聞かせられないなと艦治は思った。


 結局まなみが取った方法は、虫除け担当の廻をまなみ公認の恋人へと昇格させるというものだった。

 まなみと廻は気心が知れており、本心をぶつけ合える間柄。

 元々廻はまなみ以外の人間に恋愛的な興味を示さなかったのに、艦治には好意を持ったというのも大きな理由となる。


 親友として、廻には幸せになってもらいたい。

 艦治と話し合いを重ねた結果、側妃候補という形でそばに置く事となった。


 だが、未だに実際の身体の関係はなく、あくまで仮想空間内でのヴァーチャル肉体関係となる。

 これは、もしも廻が艦治と結婚する事が嫌になった場合でも、その後の人生に影響が少ないようにと艦治が提案した事だ。

 実際はまなみが嫌になった場合の為の保険であるが、艦治の胸の内に閉まってある。


 筆談ではここまで詳しい事情を打ち明ける事はなかったが、良光と亘は正妻に監視された状態で他の女と過ごす艦治の状況を、理解出来ずにいる。

 

 なお、艦治の電脳OSをまなみが常時監視している訳ではなく、いつでも聞ける権限が与えられただけだ。

 艦治としては、お腹の子供の負担にならないようにしてね、と言うしかなかった。


「大変そうだねー」


「そうだね、でもこのやり取りはまなみちゃんには言わないでおこうね」


 筆談の内容は、望海と恵美にもばっちり伝わっていた。



「はい、そろそろ時間だから移動するわよー」


 担任である英子(えいこ)が特別教室へ、皆を呼びに来た。

 英子は武則(たけのり)と同じく、今年度でこの高校を退職し、大日本皇国にて教育関連の管理・運営に携わる事になっている。


井尻(いじり)君の在校最後の姿を見たいっていう在校生達が廊下にずらっと並んでるけど、気にしないでね」


「いやそれは無理があるだろ」


 不満を言いつつ、英子に続いて良光が先頭に立って教室を出る。良光の隣に望海、その後ろに艦治と艦治を中心とした護衛四人。さらにその後ろを亘と恵美が続く。


「ロイヤルクラスだ!」

「これで見納めか……」

「まなみ陛下はおられないか……」

「初めて見た!」

「騒ぐな、失礼だぞ」


 多くの在校生が見えるようにと、英子が遠回りして体育館へと向かう。

 艦治は笑顔を浮かべ、出来るだけ多くの在校生に向けて手を振ってやる。


「キャーーー!!」


(アイドルか何かと勘違いしてない?)


 中には感極まって泣き出すような女子生徒がいたりして、艦治を困惑させたりしつつ、ようやく卒業式会場である体育館へ到着した。

 特別教室以外の卒業生達は、すでに着席して待っていた。

 皆が立ち上がり、艦治へ向けて拍手を送る。


≪自分達も卒業生なのに、申し訳ないなぁ≫


≪気にすんな、跪かれるよりマシだろ≫


 艦治は在校生の時と同じように、手を振り笑顔で応え、他の卒業生と同じようにパイプ椅子へ座る。


 皇王陛下には別に用意した椅子へご着席頂き、卒業生として皆にお声を掛けて頂き、などと気を遣った学校サイドの提案は謹んでお断りしていた。

 その他、来賓に日本の総理大臣や閣僚、並びに市長や知事など参加希望者がいたが、普通の高校生として入学したのだから、あくまで普通の高校生として卒業させてほしいと訴えた。

 現在、参加をお断りした政治家達から来た電報を、司会を務める教師が読み上げている。


「なお、その他に頂いた電報については、式場入り口すぐの壁に掲示させて頂きます」


≪今時電報って≫


≪メールだと何か有難みなさそうだよね≫


≪後ろ見たら笑っちゃったよ≫


 亘の言葉につられて艦治が振り向くと、壁に所狭しと電報が張り付けられていた。

 高い位置に貼ってあるものもあり、オペラグラスでもないと全てに目を通す事は難しそうだ。


≪後で誰から来たか確認しとかないと≫


≪ナギにリストアップさせれば良くね?≫


≪ちゃんと自分で読まないとダメだよ≫


 良光と亘とそんなやり取りをしていると、艦治の元にナギから電脳通話が入った。


≪卒業式中失礼致します。

 ポイント・ネモでの件がもうすぐ露見する予定ですので、事前にご報告致します≫


≪え? 思ったより早かったね≫


≪WMOに優秀な局員がいたようです。

 このまま発見させるようにと考えておりますが、よろしいでしょうか?≫


≪うん、手筈通りに。

 予定通り謝恩会が終わってから戻るよ≫


≪了解致しました≫


 艦治は良光と亘へ、ナギとの会話内容を報告する。


≪へぇ、ナギの予測では夏頃だったよな≫


≪地球人類も侮れないって事だね≫


≪帰ったら忙しくなるかも。

 まぁ今はゆっくりと卒業生代表の言葉を聞かせてもらうとするよ≫


≪止めてよ、プレッシャー掛けるの≫


「卒業生代表、千石(せんごく)(わたる)


「はい」


 元生徒会長である亘が立ち上がり、壇上へと上がる。


「厳しい冬の寒さも和らぎ、校庭の桜の蕾が色付き始めるこの佳き日に、私達卒業生の為に……」


 艦治達の高校生活も、もう残り僅かとなった。

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