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9.「vs全十カ国連合十万人(※全モンスター投入、全面戦争)(2)」

「連合軍総司令官として命ずる! 全軍、ミチト並びにモンスターどもを圧し潰せ! そして、レジェンドドラゴンさまを奪還せよ!」

「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」


 十ヶ国連合軍トップに就任したらしい国王の叫びに呼応して、山を取り囲んだ十万人の軍隊が、僕らを磨り潰さんとして、押し寄せてくる。


「どうだ、この数は! いくら〝闘気〟で一匹一匹が強くなろうが、数の暴力には抗えないのだ! レジェンドドラゴンさま、今すぐ助け出して、存分に抱いてあげますからね! ぐふふっ! ぐふふふふふふふふっ!」


 下卑た笑い声を上げる国王だったが。


「「「「「うわあああああああ!」」」」」

「……………………へ?」


 僕らに襲い掛かった兵士たちが一気に押し戻されて――否、吹っ飛ばされて、国王が間の抜けた声を上げる。


 僕らの眼前に展開された無数の魔法陣から出現したのは。


「な、なんだその数はああああああああ!?」


 〝十万〟のモンスターだ。しかも、全員闘気を纏っている。


「くっ! だが、同じ数ならば、聡明で尊い存在である我ら人間の方が上のはず! 皆の者! 駆逐せぶぼばっ!?」


 空から降ってきた巨岩によって吹っ飛ぶ国王。


「ふん!」


 〝モンスターの方が上だ〟とばかりに、岩を投擲したダエフィが力こぶを作る。


「ぐっ! また俺に鼻血を……! い、いくら力が強かろうが! 人間の高度な武器と魔法、そして戦略戦術があれば、同数のモンスターなど、相手ではないわ!」


 よろよろと立ち上がる国王に、ドラファが告げる。


「誰が〝同数〟と言ったかのう?」

「………………へ?」

「見るが良い」


 ドラファが徐に天に手を翳すと。


「「「「「!」」」」」


 空に、山の斜面に、そして僕らを取り囲む十万の連合国軍の〝更に外側〟に、幾多の魔法陣が出現。


 そこから、数え切れない程のモンスターが現れる。


「なっ!?」


 言葉を失くす国王に、ドラファは目を細めた。


「モンスター〝百万〟じゃ」

「!!!」


 しかも、当然のように全員、闘気に包まれている。


 「そう言えば、其方は先程面白いことを言っておったのう」と、ドラファは上を見上げて、思い出しながら言葉を継ぐ。


「妾の方からも同じ言葉を贈ろう。全軍、人間どもを〝圧し潰せ〟」

「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」


 十倍の数のモンスターたちが、人間たちに襲い掛かった。


 〝スライム十万人〟は、寄り集まって〝陸上に海〟を生み出す。


「うわあああ!」

「呑み込まれ――ッ!」

「ごぼぼぼっ!」

「がぼぼぼっ!」


 フルプレートアーマーの視界確保用の穴、または呼吸用の隙間から侵入して、千人の騎士たちを陸上で溺れさせる。


「や、やめろ! ぎゃああああああ!」


 〝ゴブリン五万人〟は、数に物を言わせて、人間一人を複数で取り押さえた上で、ダガーや長剣で、千人の魔法使いと千人の歩兵の胴体を貫いて倒す。


「な、何するんだ! ぎゃああああああ!」


 〝ハーピー三万人〟は、空から来襲。騎士たちの兜をその脚で掴んで無理矢理引き剥がすと、他のハーピーたちが眼球と喉を鉤爪で貫いて、三千人の騎士たちを無力化する。


 ドーン


「「「「「ぎゃあああああああ!」」」」」


 ダークエルフたちは、巨躯を誇る合計千人のゴーレム・ゴブリンキング・トロール・サイクロプスを人間たちの頭上に空間転移させて、落下によって押し潰させる。


 ただそれだけで、モンスター一人につき数人の人間が潰されて、更にその巨大な拳で、または棍棒で地面ごと殴り付けると、衝撃で更に数人が吹っ飛んで戦闘不能になり、一瞬で合計一万人を地に這い蹲らせる。


「「「「「ガアアアアアアアア!」」」」」

「「「「「ぎゃあああああああ!」」」」」


 ドラゴン百人は、同時にドラゴンブレスを吐いて、一万人の全身を焼く。


 そんな中。


「勇者を舐めるな!」

「ガハハハハッ! 一矢報いてやる!」

「クックック……ワタシたちの出番のようですね」


 ギンダさん、ゴウジさん、そしてシュウダさんも参戦するが。


「ゴオオオオオオオ」

「「「ぎゃああああああ!」」」


 ゴーレムの巨大な拳に吹っ飛ばされて、一矢すら報いることも出来ず、退場する。


「ちくしょう! 舐めるなああああ!」


 他の人間たちの中にも、反撃をする者たちがいるのだが。


「なっ!?」


 槍も、長剣も、魔法すらも、当たらない。

 闘気によって身体能力が格段に上がっているモンスターたちによって、全ての攻撃が回避される。


「食らええええええ!」


 仮に当てることが出来たとしても。


「かたっ!?」

「妾の加護には、〝硬化〟の効果もあるからのう」


 ダメージが全く通らない。


 他にも、オーガ、オーク、ミノタウロス、キマイラなど、様々なモンスターたちが戦場を縦横無尽に駆け回り、人間たちを蹴散らしており。


 このままでは、あと数分で人間側が全滅しそうな勢いだったが。


「「「「「『エリアウルトラヒール』!」」」」」


 治癒師たちが、戦場にいる仲間たち全員に最上級回復魔法を掛けて、傷を癒す。


「ど、どうだ! 我が誇り高き人間は、この程度で心折れたりはせん! 何度でも立ち上がるのだ!」


 虚勢を張る国王に、ドラファが淡々と反応する。


「では、〝何度でも〟蹂躙させてもらうとしようかのう」

「!」


 つい先程繰り広げられた地獄絵図を再び目にすることになるのかと、国王が青褪めた。


「じゅ、呪術師たちよ! 出番だ!」

「「「「「はっ!」」」」」


 一万人の呪術師たちが、巨大な魔石を内包した魔導具が載った祭壇を用意して、祈りを捧げる。


「ぐはっ!」

「がはっ!」

「ぐぁっ!」


 〝本来ならば、呪いなど掛けられない格上の対象〟に対して呪術を発動しているのか、無理が祟って大量に吐血し、一人、また一人と倒れていく。


「こ……これで、レジェンドドラゴンさまを……取り戻せるなら……」


 狂信的な薄暗い笑みを浮かべながら、半分――五千人が死亡すると。


「むっ! これは……中々やるのう」


 ドラファが掛けた〝レジェンドドラゴン加護〟が消えて、モンスターたちの闘気が消滅した。


 更に。


「うぐっ!」

「がぁっ!」

「がはっ!」


 呪術師たちの残り全員が命と引き換えに、新たな呪いを発動。


「……全モンスターの身体能力の低下とはのう」


 国王が勝ち誇る。


「ぐふふっ! 動きが遅く、膂力も無いモンスターを倒すことなど、赤子の手をひねるよりも容易! 勝った!」


 と、その時。


 ドカーン


「「「「「!」」」」」


 僕らの山――レジェンドボルケーノが噴火した。


「「「「「うわああああ!」」」」」

「「「「「逃げろおおお!」」」」」


 真っ赤なマグマが降り注ぐが。


「………………あれ?」


 何故か、モンスターばかりに当たって、人間には一切当たらない。


「ぐふふっ! 天罰だ! やはり尊い人間は生き延びる運命にあり、モンスターどもは滅びる定めだったのだ! 焼き尽くされろ! 溶けて死ね! ぐふふふふふふふふっ!」


 嘲笑する国王だったが。


「国王さま! モンスターたちが……!」

「……へ……? そんな、馬鹿な……!?」


 モンスターたちは、焼かれもせず、溶けもせず、ピンピンしており。

 ――否、むしろ、マグマで身体を覆われた彼らは、力が満ち溢れている。


「妾の加護の一つである〝マグマの加護〟じゃ。では、第二ラウンドと行こうかのう?」

「ヒィッ!」


 ドラファが口角を上げた。

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