8.「vs全十カ国連合十万人(※全モンスター投入、全面戦争)(1)」
「「「「「貰ったああああああああああ!」」」」」
突如上空に現れ、僕らの頭上から襲い掛かる百人の暗殺部隊に対して。
「そ、そう来ると思って、き、昨日のうちに〝仕掛けておいた〟」
「「「「「!?」」」」」
オガリィから聞いた事前情報の分析結果を基に、予め魔法を使っていたマオミィが事も無げに告げると。
ドーン
「「「「「ぎゃあああああああああ!」」」」」
〝指向性〟を持った爆発魔法が〝外側〟に向けて発動、僕らにはそよ風すら吹かない中、暗殺部隊隊員たちは吹っ飛んだ。
「ぐぬぬぬ! くそ! 我が軍の力はこんなものではないぞ! 見せてやれ!」
「はっ!」
どうやら騎士団団長が四種類の部隊の司令官も兼任しているらしく、国王に敬礼した後、声を張り上げた。
「弓矢部隊、前へ! 放て!」
千人が放つ千の矢は。
「弓矢部隊、迎撃ゴブ!」
「なっ!?」
リーダーのゴブリンが叫ぶと、事前に得ていた敵軍の情報に合わせて二千人用意した弓矢部隊のゴブリンたちの半分――つまり同じく千人によって、敵軍の矢は一本残らず〝空中〟で〝射ち落とされた〟。
「何をしている!? 魔法だ! 魔法を撃て!」
「はっ! 貴様ら、気合いを入れろ! はああああああああッ!」
絶対に相手を倒すのだという強い意志の表れか、騎士団団長が闘気の輝きを身に纏う。
「魔法師団、前へ! 撃て!」
司令官の叫び声に呼応して、千の魔法が降ってくる。
火炎・氷柱・水剣・雷槍・岩剣の五種類の魔法が。
個々で十分な殺傷能力を持った五種類の殺戮弾だが。
「「「「「ゴブウウウウウウウウウウ!」」」」」
「「「「「リイイイイイイイイイイン!」」」」」
「なっ!?」
ゴブリン弓矢部隊の内千人が、つい先ほど騎士団団長が纏った〝闘気〟を発現。
「迎撃ゴブウウウウウウウウウウ!」
「馬……鹿な……!」
〝魔法〟を〝単なる矢〟で相殺するという、本来不可能であるはずの光景が、矢に闘気を纏わせたことで実現した。
「放て放て放て! 撃て撃て撃て!」
騎士団団長が必死に叫び、弓矢部隊と魔法師団が同時に攻撃を仕掛けるが。
「迎撃ゴブ! 迎撃ゴブ! 迎撃ゴブウウウウウウウウウウ!」
空を飛ぶ大量の矢と五種の魔法は、全て的確に射ち落とされてしまう。
「何だこの体たらくは!? 何でも良い、奴らを皆殺しにしろ! そして、レジェンドドラゴンさまをお迎えするのだ!」
「はっ!」
騎士団団長が、覚悟を決めて吼える。
「騎士団、歩兵部隊、突撃!」
「「「「「うおおおおおおお!」」」」」
前回のスライム戦で学んだのか、騎士たちが乗る馬の腹部には、鎧が被せてある。
「歩兵部隊、迎撃ゴブ!」
相手の二部隊に合わせて八千人のゴブリンたちが、走っていく。
「相手はただのゴブリンだ! 蹴散らせ!」
同じく闘気を纏っている騎士団団長の声が、僅かに上擦っていたのを、僕は聞き逃さなかった。
「分かってるんだね、彼は」
「そうじゃな。千人が出来たのじゃ。もしや八千人の歩兵部隊も同じく出来るのではないか、と思うのも無理なかろう」
ゴブリンたちと、先行する千人の騎士団が交錯した瞬間。
「「「「「ゴブウウウウウウウウウウ!」」」」」
「「「「「リイイイイイイイイイイン!」」」」」
八千人のゴブリン全員が〝闘気〟を発現。
「「「「「ヒヒ~ン!」」」」」
「「「「「うわあああああああ!」」」」」
鎧で覆われていない馬の目を、顔面を、首を、脚を、ゴブリンたちのダガー・長剣・棍棒が強襲、馬が倒れ、その上の騎士たちも落下していく。
「何だコイツら!?」
「ゴブリンの動きじゃねぇぞ!」
「スピードもパワーも桁違いだ!」
浮足立つ騎士たち。
「ぎゃあ!」
槍による刺突を跳躍で回避したゴブリンが空中で身体を捻って半回転、逆手に持ったダガーを、騎士が被る兜の視界確保用の穴に素早く二回突き刺し、両目を潰して無力化する。
「棍棒程度でやられるか! こっちには間合いのアドバンテージもある――ぐぁっ!」
棍棒を〝投げて〟兜にぶち当てた後、跳躍、跳ね返った自身の得物を空中でキャッチすると、今度は手に持ったまま敵の頭部を強打、ただの棍棒とは思えない重い衝撃で脳震盪を起こさせて、倒す。
「がぁっ!」
「ぐぁっ!」
「ぎゃあ!」
騎士団、そして歩兵部隊が次々と無力化されていく。
「な、何なのだこれは一体!? あっと言う間に半数が――」
彼らの半分が戦闘能力を奪われた状況に、「ぐぬぬ!」と、奥歯を噛み締める国王だったが。
「まぁ良い。〝時間稼ぎ〟は十分に出来たからな」
不敵な笑みを浮かべると。
「〝解除〟!」
透明化の魔法が解けて。
「どうだ、驚いたか! 今度こそ、お前たちはおしまいだ! レジェンドドラゴンさま、待っていて下さい! 今すぐ貴方をお迎えしますからね! ぐふふっ! ぐふふふふふ!」
いつの間にか、この世界の全ての人間国――十ヶ国の全軍〝十万人〟が、僕らの山と僕らを包囲していた。
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