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4.「特訓で得た力で戦う少女たち(※勇者ざまぁも少しアリ)」

「言い忘れておったが、今や妾は其方のものじゃから、其方は妾の力を使える、ということじゃ」

「もうちょっと早く言って! でも助かったよ、ありがとう!」


 ドラファに抗議しつつ、僕は礼を言う。


 いきなり鉤爪・翼・牙・尻尾が生えてビックリしたよ。

 まぁでも、オガリィを助けるのに必死だったから、変化に気付いたのは、その後だったんだけどね。


 それと、今は元の姿に戻ってるんだけど、変化したり戻ったり出来るのは良かった!

 常時あの姿って言うのは、ちょっと僕にはワイルド過ぎるから。


「助けてくれてありがとなの! ミチトはオガリィの王子様なの!」


 満面の笑みで僕に抱き着くオガリィ。

 あの一件以来、オガリィが僕にすごく懐いてくれるようになった。


 ……いや、見た目は幼女だけど、僕と同じ十五歳だし、〝懐く〟は流石に失礼かな。


「オガリィよ。ミチトは妾のものじゃ!」

「あっ!」


 ドラファが、グイッと僕の身体を掴んで、オガリィから引き離して僕を後ろから抱き締め、その豊満な胸を背中に押し当てる。


 ……が、オガリィも諦めず、前から僕に抱き着く。


「離れよ! ミチトは妾のものじゃと言っておろう! こうなったら、力づくで排除を――」

「ドラファ様! 本当に自分に自信がある女性は、男を力づくで何とかしようとなんてしないの!」

「ぐっ!」

「他の女が多少群がっても、愛する男は自分の魅力にメロメロだと確信を持っていたら、意にも介さないはずなの!」

「……し、しかし、それでも駄目じゃ!」


「いやまぁ、僕は誰のものでもないんだけどね……」


 揉みくちゃにされながら半眼で突っ込む僕の言葉は、彼女たちには届かない。


「オ、オガリィ。ド、ドラファ様に失礼だろうが。い、いやでも、何か楽しそうだし……ま、まぁ良いか」

「ハッ! 喧嘩する程仲が良いって奴だね! そういうの、あたいは嫌いじゃないよ!」


 魔王マオミィとダークエルフのダエフィも、ただ事態を見守っていた。


 レジェンドドラゴンであるドラファが圧倒的に上の立場かと思っていたけど、意外にも結構緩い関係みたいだ。


 ちなみに、上の立場と言えば、興味本位で「ドラファは、神さまよりも偉いの?」と本人に聞くと、顔を顰めた彼女は「さぁ、どうじゃろうな」と、珍しく言葉を濁した後、「ただ、あやつは嫌いじゃ」と吐き捨てた。どうやら、仲が悪いらしい。


 そう言えば、この異世界の人たちって、何故かドラファのことを〝神さま〟とは決して呼ばないんだよね。宗教にもなっているし、崇拝対象なのに。何でだろう?


※―※―※


「ご馳走さま! やっぱりドラファの作る料理はすごく美味しいよ!」

「どういたしましてじゃ。では、夕食も済んだことじゃし、今から妾と子作りするかのう?」

「うん、しないよ!」


 僕が食べたいと言った、デミグラスソースがたっぷり掛かったハンバーグも、滑らかな舌触り且つクリーミーなマッシュポテトも、カリカリベーコンとチーズと半熟卵とミニトマトとレタスを使ったサラダも、甘くて濃厚なコーンスープも、全部美味!


 あっ。

 ちょっとヤバいかも……


「うっ……ぐすっ……」

「ミチトが泣いてるの!」

「そんなに美味かったのかのう。料理人冥利に尽きるというものじゃ」


 みんなと一緒にこうやって食卓を囲んでいると、気を抜くと今でも涙が溢れて来てしまう。


 前世では、家の中で僕が存在していい場所は、基本的に〝トイレの前〟だけだった。


 食事は僕が作っていたんだけど、僕が作った料理を両親は普通に食べる一方、僕の分は、両親がわざわざ器を引っ繰り返して床に落として、それを這い蹲って食べろと命令された。


 少しでも躊躇したり食べ残したりすると、殴られた。あと、彼らがトイレに行く時は「邪魔だ」と言われて、蹴られた。


「うん、そうだね……ちょっと、ドラファの料理が美味し過ぎてさ……あはは」


 だから、こんな風に、家族と一緒に美味しいご飯を食べられるだなんて、すごく嬉しくて、温かくて、胸が一杯になって、感情が込み上げて来てしまうんだ。


 なお、こんなに料理上手なドラファだけど、最初は〝ダークマター〟としか形容出来ないような、異臭のする漆黒の物体を生み出していた。


※―※―※


 あれは、彼女たち四人と暮らし始めた初日のことだった。


「すごく美味しいの!」

「た、確かに、び、美味だな」

「ハッ! こんなに美味しい食事は初めてだよ!」


 最初は、僕が食事当番だった。


 先述のように、前世にて、虐待してくる両親(実の母親と母の再婚相手)にどうしても好かれたかった僕は、必死に料理を覚えて練習したから、料理の仕方は身体が覚えている。


 まぁ、結局、一度も優しくしてもらえなくて、最後は父親にナイフで殺されちゃったんだけどね。


 話を戻すと、僕の料理にオガリィたちが喜んでくれて、とても嬉しかったんだけど。


「ミチトの料理は、世界で一番美味しいの!」

「一番……じゃと?」


 オガリィの言葉に、負けず嫌いのドラゴンが反応してしまった。


「一番はこの妾じゃ! それが何であろうとも! どんな勝負でも!」


 ということで、「勝負じゃ!」と、突如ドラファとの料理対決が始まってしまったんだけど。


「しょ、勝者、ミ、ミチト」

「ガーン!」


 僕の圧倒的な勝利に終わった。


「な、何故じゃ……!? 妾の脳内では、完璧な料理が出来上がっておったというのに!」


 自身が生み出した〝ダークマター〟を前に、膝をつき、床を叩いて、怒りを露わにするドラファ。


 あんまり強く叩かないでね……衝撃ですっごい揺れてるし、壊れちゃうから……


 話を聞くと、この四十六億年で、料理をしたのは初めてらしい。


「えっと、料理のコツ、教えようか?」

「敵の情けなど受けんのじゃ!」


 そう来たか……

 うーん……じゃあ……


「もう一回じゃ!」

「良いよ」


 と承諾して、ドラファが家を建てる時に生み出したやたらと広いキッチンで、二人並んで料理をしていたんだけど。


「それにしても、やっぱり〝味見〟って大事だよね。途中で何度も味見しないと、僕だって上手に作れないし。特に、調味料を入れた後は、絶対に味見しないと、上手く作れないよね」

「むっ」


 小さな声で、さり気無く呟いた僕の言葉に、ドラファの尖った耳がピクンと反応する。


 チラリと一瞥すると、ドラファはちゃんと味見していた。


 よしよし。


 その後も、僕の呟きは続いた。


「塩と砂糖は間違えやすいから、注意しないといけないよね」

「調味料は、一気にたくさん入れずに、少し入れては味見する、ということを繰り返した方が失敗は少なくなるよね」

「火加減って難しいから、常に焦げていないかと注意しないといけないよね。炒める時は強火で、比較的短時間で仕上げて、それでも焦げちゃうなら中火で。煮込む時は中火で、それでも焦げちゃうなら、弱火が良いよね。ただ、煮込む時の理想は、最初は中火で、途中から弱火、という感じだよね」


 などなど。


 その結果。


「わぁ~! ドラファ様、一気に美味しくなったの!」

「ど、同一人物が作った料理とは、お、思えん」

「ハッ! 流石あたいらのドラファ様だね!」


 劇的に改善した。


「そうじゃろそうじゃろ」


 豊かな胸を張りドヤ顔をするドラファだったが。


「しょ、勝者、ミ、ミチト」

「まだ勝てぬのか!?」


 愕然とすると。


「もう一度じゃ!」


 その後、一日中料理対決をさせられて。


「しょ、勝者、ド、ドラファ様」

「やったのじゃああああああ!」


 たった一日で、僕は追い抜かれてしまった。


「おめでとう、ドラファ!」

「ふん、まぁ、当然じゃ!」


 集中力と吸収力が半端じゃない!

 あと、才能もあるのかもしれないけど、努力がすごい!


 それからは、ドラファが毎食作ってくれることになった。


※―※―※


 才能と努力と言えば、ダエフィ、オガリィ、そしてマオミィもすごかった。


「魔法を使うこと、諦められないよね?」

「ハッ! 当然だ!」


 魔法に長けたダークエルフ族なのに、魔法が使えないどころか、魔力すらないダエフィが、どうすれば魔法を使えるようになるのか。


 正直、解決策が全く思いつかなかった。


 ちなみに、ダエフィは、食べる時間すら惜しんで魔法の練習をしていたみたいで、そのせいであんなにガリガリだったらしい。まぁ、最近はみんなと一緒にドラファの料理を食べるようになったんだけどね。


 僕は、色々と考えた挙句、こんな提案をしてみた。


「目標のために食事すら削って頑張ってるダエフィは、本当にすごいと思う。でも、行き詰っている時って、実はちょっとだけそのことから離れてみて、気分転換してみたら、逆に上手くこともあると思うんだ」

「そうなのかい?」

「うん。だから、僕と一緒に筋トレしてみない?」


 以前握手をした際に、「滅茶苦茶力が強い!」って思ったんだよね。

 もしかしたら、才能があるのかも、と思って。


「きん……とれ……? 何だいそれは?」

「筋肉のトレーニングだよ。簡単に言うと、身体の力を強くするためのものだね。例えば、こんな感じのやつ」


 僕は説明をしながら、実際に目の前でやってみせた。


「へぇ~、面白そうじゃないか!」


 ということで、僕と一緒に、腕立て、腹筋、背筋、スクワットを行ったダエフィは。


「何だか楽しいじゃないか!」


 めっちゃ嵌まった。

 僕が止めた後も、延々と続けるダエフィ。


 その結果、三日後。


「ハッ! どうだい、あたいの身体は!?」

「すごいの! ムキムキなの! その筋肉、分けて欲しいの!」


 オガリィが嫉妬する程に筋骨隆々となった。

 元々長身なのもあって、威圧感が凄まじい。


 その膂力を遺憾なく発揮したダエフィは。


「ふん! ふん! ふん! ふん!」


 懲りずに攻めようと、山を登っている途中の勇者ギンダさんたち(一本じゃ無理だから、何本もハイポーションを飲んで両腕を再生したんだと思う)に対して、僕らがいる山の頂上から、巨大な岩を連続で落とした。


「何なんだあの筋肉ダークエルフは!?」

「ガハハハハッ! このゴウジも、あんなことは出来んぞ!」

「クックック……高い位置というアドバンテージを、これでもかと活かしてきますね」


 頑張って何とか左右に避けるも、ダエフィの投擲頻度が上がり、スピードも増して、更にギンダさんたちの回避方向を先読みし始めて。


「「「ぎゃあああああああ!」」」


 彼らは、巨岩に吹っ飛ばされて、山の麓へと落下、重傷を負った彼らは、地面を這いながら逃げていった。


※―※―※


「ちなみに、魔法はどうかな?」

「使えないの……」


 オーガの美幼女――に見える美少女オガリィが、悲しそうに首を横に振り、金髪ツインテールが揺れる。


 先程魔法を使えなくて悩んでいたダエフィが、筋肉で魔法と同等以上の攻撃力を獲得したように、今度は逆に筋肉に憧れるオガリィが、魔法を窮めることが出来たら、と思ったんだけど、難しそうだ。


「うーん……」


 どうしたもんか。


 僕が腕を組んで、考え込んでいると。


「それ、何なの?」

「これ? 腕時計だよ」

「時計なの!? すごく小さいの! すごいの!」

「良かったらつけてみる?」

「良いの? つけるの!」


 ゴム製バンドだから、僕よりも更に小柄なオガリィも、留める穴の位置を変えれば問題なく装着出来る。


「わぁ~! こんなに小さいのに、すごいの! しかも綺麗なの!」


 アナログ腕時計に目を輝かせる彼女を見ていて、ふと閃いた。


「オガリィ。良かったら、勉強してみる?」


 こう見えても、実は僕は、中学校の定期テストでは全科目で百点を取っていたのだ。

 

 テストで良い点数を取ったら、両親から愛してもらえるかもしれないと思って、同級生からの遊びの誘いも全て断り、必死に勉強したから。


 まぁ、そこまでしても、新しい父親の、僕(他の男の子ども)に対する憎しみは全く緩和されず、母も父と一緒になって暴力を振るい続けたんだけどね。


 でも、もしかしたらその経験が、今日、生まれて初めて役立つかもしれない。


「べん……きょう……? って、何なの?」


 小首を傾げるオガリィ。


「〝学ぶこと〟だよ。色んなことを学んだら、知識が豊富になって、世界の見え方が変わるんだ。あと、たくさん勉強すれば、腕時計の材料が何かとかも、きっと分かるようになると思うよ」

「そうなの!? じゃあ、べんきょうするの!」


 こうして、僕はオガリィに、小学校と中学校で習ったことを教えた。


 結果から言うと、オガリィは。


「勉強、すごく面白いの!」


 天才だった。


 僕が九年間で習った全ての科目の全ての知識を、文字すら読めなかった少女が、たった一日で覚えてしまった(ちなみに、この世界は何故か皆日本語を話し、街中で使われている看板や本など、書かれている文字も全て日本語だ)。


 更に。


「腕時計、分解したいの! 良い?」

「うん、別に良いよ」

「やったー!」


 腕時計をあっと言う間に分解して。


「元通りにしてみたの! 腕時計、仕組みがとっても面白いの!」

 

 組み立て直して、元通りにしてみせた。

 

 見ると、オガリィの爪は、細長く伸ばすことが出来て、その上で、プラスドライバーやマイナスドライバーのような形みたいに、色々と変形させることが出来るようだ。

 

 あと、細いのに強度も硬度もあって、その先を鋭く尖らせて、硬いものを貫くことも出来る。


 更に、尖端をかなりの高温にして、金属を溶かして、接合することも出来るという、超優れものだ。


「恐るべき才能じゃのう」


 ドラファ曰く、オーガでこんなことが出来るのは――というか、全モンスターの中で、こんなことが出来るのは彼女だけらしい。


「ドラファ様! ちょっと特殊な、小さな山が欲しいの!」

「良いぞ。詳細を言うてみい」

「ありがとうございますなの!」


 オガリィがドラファに魔法で生み出してもらったのは、全世界の全ての金属が採れる小さな山だった。


 その山は、どれだけ金属を採っても、また復活するというチートな山だった。


「オリジナル腕時計、出来たの!」


 原材料を得たオガリィは、今度は、時計を一から作り出してしまった。


「次は、魔導具なの!」


 その後は、ランプ形魔導具など、魔石を埋め込んで、魔力を動力として動く様々な魔導具を作製した。


 それは常軌を逸する成長速度であり、数日後には、オガリィは、色々な魔導具を一瞬で作れるようになった。


 彼女の魔導具と、その賢さは、戦闘においても大いに役立った。


「昨日までは、そんな所に木は生えていなかったの! 〝見破る君〟で見破っちゃったの!」


 魔導具〝千里眼くん〟を覗き込みながら、魔導具〝マイク君〟で喋るオガリィの声が、近くにある木に結び付けられた魔導具〝スピーカー君〟から流される。


 僕らの山の麓にて、幻術魔法で姿を隠しつつ、地面に巨大な魔法陣を描いて、強力な魔法攻撃を目論んでいた敵を、魔導具により、オガリィが看破したのだ。


「残念だったの、宮廷魔術師さん!」

「ふん!」

「「「「「ぎゃあああああああ!」」」」」

 

 ダエフィが投げた巨岩により、地面に描いた魔法陣を破壊、と同時に黒ローブを身に纏った十名の宮廷魔術師たちを吹っ飛ばし、彼らは這う這うの体で王国へと逃げ帰っていった。


※―※―※


「あ、足で魔法を発動? わ、我を馬鹿にしているのか?」


 唱えた魔法が実際に発動するまでに三日掛かってしまうことが悩みの種という魔王マオミィは、僕の提案に訝し気な表情を浮かべた。


「ううん、本気だよ! 本気で原因を見付けようとしているから!」


 もしかしたらと思って、姿勢の仕方にアプローチしているところだ。普段は右手または両手を翳しながら魔法を使っているらしいから、それ以外の形を色々と試したい。


「そ、そうか。な、ならば我も、本気で付き合おう」


 マオミィは、ちゃんと分かってくれた。


 なお、そんな彼女は、この千年の間、試行錯誤を数え切れない程に繰り返してきたらしい(二十歳くらいに見える彼女だが、本当は千歳だ。つまり、この異世界の〝人類史〟が始まったのと同時に誕生したことになる)。

 

 詠唱の仕方を変えてみたり、無詠唱魔法に挑戦してみたり、魔法陣を描いてみたり、木の枝や棒を使ってみたりと、色々と試してみたものの、どれも上手くいかなかった。


 それらを睡眠時間を削って行っていたため、目に隈があるのだ。


 そんな彼女は、僕の目の前で、言われた姿勢で実際に魔法を使えないか、やってみるが。


「む、無理だ」


 発動まで時間が掛かる彼女の魔法だが、〝魔法をちゃんと使えた(魔力を消費した)〟という感覚はあるらしいので、使えたかどうかの成否はすぐに判断出来るようだ。


「分かった、ありがとう! じゃあ、次は、肘で出来ないかな?」


 そんな感じで、肩ではどうか、耳で出来ないか、目ではどうか、などを試してもらう、


 暫く経って、様々な形を試した後。


「見つけた!」


 原因を発見した。


 それは、手――というか、指の使い方にあった。


 右手の人差し指だけを対象に向けながら魔法を使うと。


「お、おお!」


 三分後に発動出来た(魔法は、指ではなく、手の平全体を相手に向けて使うもの、というイメージがあったため、一度も試したことが無かったようだ)。


「お、大きな改善だ!」

「うん! でも、まだだよ!」


 更に調べを進めると、人差し指と中指だと十分後に発動出来て、人差し指と中指と薬指だと一日後、人差し指と中指と薬指と小指だと発動出来なくて、完全に手を開くと三日後、両手を開いても同じく三日後だった。


 そして、遂に。


「す、すごい!」


 左手の人差し指と中指と薬指を対象に向けつつ、右手の人差し指と中指と薬指と小指も同時に向けると、〝三秒後〟に発動出来た。


 これで、発動までの所要時間を大幅に短縮出来た。


 五種類の〝時限爆弾〟的な魔法を使用出来るようになったマオミィは、オガリィとタッグを組むことで、その真価を発揮した。


「あ、暗殺者たちに告ぐ。〝み、見えているぞ〟」

「「「「「!」」」」」


 オガリィの時と同じく、近くの木に結び付けられている魔導具〝スピーカー君〟から声が聞こえる。今回はマオミィの声だが。


 オガリィが、僕から聞いた歴史上の様々な戦争の話から、戦略、戦術、そして戦場における軍隊の動きを、僕たちの敵軍に置き換えて、その行動を予測。


 透明化の魔法など簡単に突破して感知出来る魔導具〝感知くん〟で敵の接近を感知して、同じく透明状態にある敵なんて容易に看破する〝見破る君〟によって見破った。


「こ、この時刻にその地点にくることは、〝よ、予測出来ていた〟。だ、だから、〝き、昨日の内〟に、〝し、仕掛けておいた〟」

「「「「「!?」」」」」


 山の麓を、透明化した状態で行軍する暗殺者たちが、戸惑う。


 と、次の瞬間。


 ドーン


「「「「「ぎゃあああああああ!」」」」」


 マオミィが昨日の内に唱えておいた爆発魔法が時間差で発動、暗殺者たち八人は吹っ飛び、退散した。


※―※―※


「みな、良くやったのじゃ」

「本当、すごかったよ、みんな!」

「ハッ! あたいの筋肉に掛かれば、あんなもんさ!」

「えへへ。オガリィも力になれて良かったの!」

「や、やっと魔王としての、め、面目躍如を果たせた」


 夕食の席で、一緒に料理を食べながら、誰々の何々が良かった、と、お互いに褒め合って、とても温かい時間を過ごせた。


 ちなみに、僕の我儘で、みんなには敵を殺さないように手加減してもらっている。


 勿論、僕の家族を傷付けようとする相手は、絶対に許さない! とは思ってるんだけど……


 でも……それでも、出来れば殺したくないんだよね……

 甘いっていうのは、自分でも分かってるんだけどさ。


 まぁ、それは置いておいて。


 改めて、本当に、みんなすごいよ!

 才能と努力が組み合わさると、あんなにも成果が出るんだね!

 

 でも、今はまだ、小規模部隊でしか攻めてこないから良いけど、大規模な軍隊が攻めてきたらどうしよう?


 でもまぁ、ドラファは世界最強だし、僕もドラファの力を使えるから、問題ないか!


 それに、ゴーレムやトロール、それこそ他の普通のドラゴンたちみたいな、すごく強いモンスターがいるんだし、きっと大丈夫だ!


※―※―※


 数日後。


「スライムの誇りに掛けて、絶対に勝つスラ!」

「ドラファさまの、そして魔王さまのしもべとして、恥ずかしくない姿を! 勇姿をお見せするイム!」

「「「「「スラスラスラスラスラスラああああああ!」」」」」

「「「「「イムイムイムイムイムイムうううううう!」」」」」


 最弱モンスターであるスライム千人が、王国の最強騎士団千人と、山の麓に広がる荒野にて、戦うこととなった。

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