16.「エピローグ」
神の身体を内部から破裂させた、文字通り無数のモンスターたち。
このままだと、僕らも圧倒的な質量で押し潰されて死ぬため――
「ご苦労じゃったな。恩に着るのじゃ」
ドラファが、眼前に迫った彼らを消した。
「がはっ!」
「ぐはっ!」
限界を超えた力の行使に、僕とドラファは大量に吐血し、倒れる。
けど――
「……やった……ね……!」
「……ああ……妾たちの……勝利じゃ……!」
繋いだ手は離さなかった。
※―※―※
「カレレ、ありがとう!」
「妾たちが助かったのは、其方らのおかげじゃ」
僕たちが光って人間の兵士たちを吹っ飛ばした時に、彼らの内何人かが、いくつかハイポーションを落としたみたいで、カレレと彼女の両親がそれを拾って、僕らに飲ませてくれた。
「こちらこそ、助けて頂きありがとうございました!」
「娘を救って頂き、私たちまで救って頂いたこと、何とお礼申し上げればよいやら」
「本当に、本当にありがとうございました!」
頭を下げる親子三人。
ちなみに、麓に吹っ飛ばされた後、再び山を登って来ていた人間たちは。
「あれ……?」
「俺たち、何でこんなことしてるんだ?」
「帰ろうぜ」
それぞれの国に帰っていった。
ドラファ曰く、「レジェンドドラゴンに対する負の感情が、神によって増幅されていたが、その神が倒れたことで、怒りや憎しみが一気に消滅した」らしい。
否、一人だけだが、〝怒りや憎しみ〟ではない感情を行動原理とする者がいた。
「ええい、離せ! あともう少しで、レジェンドドラゴンが我が物となるのだ! 俺が組み敷いて毎晩ヒーヒー言わせてやるんだ!」
「国王さま、レジェンドドラゴンに無暗に関わるのは危険です!」と、羽交い締めにする騎士団団長から逃れようと、ジタバタと藻掻く国王。
「はぁ。面倒くさいのう」
深い溜め息をついたドラファが、山の中腹にいる国王に向かって手を翳すと。
「ぐっ!? うぐおおおおお!」
「国王さま!?」
突如国王が苦しみ出して、思わず騎士団団長が手を離すと、国王は膝をつき、頭を掻きむしった。
かと思うと、剣を杖にしつつバッと立ち上がった彼は。
「……ふぅ。王都に戻るぞ。生きることとは一体どういうことなのか。今後俺の生涯を掛けて解き明かすのだ」
「…………………………はっ!」
不自然な程にスッキリした顔で、唐突に哲学的なことを宣い始めた主に困惑しつつも、騎士団団長は敬礼した。
「ドラファ、何したの?」
「性欲を失くしてやったのじゃ」
「!?」
事も無げに恐ろしいことを呟く彼女は、「あ」と、思い出したように言葉を継いだ。
「勢い余って、あやつの股間にあった〝アレ〟も取っ払ってしまったのじゃ。まぁ別に問題ないじゃろう」
「………………」
今後、夫婦喧嘩は絶対にしないようにしようと、固く誓った僕だった。
※―※―※
十カ国連合軍が全員退却した後。
「ド、ドラファさま! よくぞ御無事で!」
「ハッ! ミチト、よくやったね!」
「ミチト! ドラファ様! うわああああん!」
マオミィ、ダエフィ、そしてオガリィが復活した。
ドラファが全盛期の魔力を取り戻したからだ。
「みんな、本当に良かった!」
抱き着いてくるオガリィを抱き締め返しながら、僕もまた涙する。
「ドラファさまと魔王さまの勝利スラ!」
「万歳イム!」
「「「「「ドラファさま! 魔王さま! ドラファさま! 魔王さま! ドラファさま! 魔王さま!」」」」」
他のモンスターたちも復活。
「はしゃぐのは良いが、最後は妾とミチトの二人の力で神を倒したのじゃ。それを忘れるな」
「「「「「ドラファさま! 魔王さま! ミチトさま! ドラファさま! 魔王さま! ミチトさま!」」」」」
何だか照れ臭いなぁ。
僕はドラファの力を共有していただけだから、全部ドラファのおかげなんだけどね。
でも、嬉しい!
山の頂上、斜面、そして麓を埋め尽くしたモンスターたちに向かってドラファと共に手を振ると、「「「「「うおおおおおお!」」」」」と、彼ら彼女らは拳を、翼を、触手を、そしてゼリー状の身体の一部を突き上げた。
※―※―※
百万のモンスターたちが、ドラファの空間転移魔法で、それぞれ元いたダンジョンに帰って行った後。
「本当、倒せて良かったよ。だって、神なんて、普通は倒せるもんじゃないし」
「何を言うておるんじゃ? 倒せてはおらんぞ?」
「えええ!?」
火山の噴火で吹っ飛んでいた家も元に戻り、また家族みんなで食卓を囲んでいる時に、ドラファが予想外の言葉を発して、僕は驚きのあまり叫んでしまった。
「正確には、〝完全に倒せたわけではない〟ということじゃ」
ドラファ曰く、相手は神であるため、あの程度では完全に倒せはしないらしい。
「が、退けたことは確かじゃ」
ということで、ドラファは、この隙に結界を張って、この異世界――つまり、この惑星に神が侵入出来ないようにした。
「二重の結界、三重結界、五重、十重、百重、一千重……一万重じゃ!」
二重や三重ではすぐに突破されてしまうとのことで、一万の結界を重ねた。
「相手は神じゃ。長くは持たんかもしれんが、これが限界じゃ」
「長くは持たないって、どのくらい? 一年とか?」
「一億年じゃ」
「充分だよ!」
時間感覚がおかし過ぎる。
伊達に四十六億生きていないね……
※―※―※
なお、カレレたち親子三人も、僕らのとは違う、また別の家を山頂に建てて、そこで暮らしてもらうことにした。
あれだけ酷い目に遭った後だから、人間社会には戻りにくいんじゃないかなって思ったら、案の定、三人ともそう思ってたみたいだ。
「ありがたいです!」
「受け入れてもらえて嬉しいです!」
三人が笑顔になってくれて、良かった。
※―※―※
その後、僕とドラファは結婚式を挙げた。
ドラファが「せっかくだから、ミチトの世界でのやり方を踏襲したいのじゃ」って言ってくれたから、ドラファの魔法で教会を作って、そこで。
カレレの父親は、神父役をやってくれた。
それは良かったし、ドラファの純白のウェディングドレス姿もすごく綺麗だったし、僕も白のタキシードなんて着ちゃって、それもまた良かったんだけど……
「ま、まさかこの我が、け、結婚出来る日が来るとはな」
「ハッ! めでたいね!」
「オガリィ、たくさん子ども産むの! 百人くらい!」
「何でみんなまで!?」
何故かマオミィ、ダエフィ、そしてオガリィまでが、ウェディングドレスに身を包んでいた。
「三人がどうしてもと言うからのう。まぁ、第一夫人が妾なら問題ないかと思い、許可したのじゃ」
「いや、問題大ありでしょ!」
ドラゴンとモンスターたちの感覚どうなってんの!?
「不束者ですが、宜しくお願いいたします、ミチト様」
「人間の方の感覚もおかしかったあああああ!」
みんなと同じくウェディングドレスを身に纏ったカレレが、可愛らしくカーテシーをする。
「いやいやいや、分かってるの!? オガリィは見た目だけで、実年齢は僕と同い年だけど、カレレは八歳だから! 本当の幼女だから!」
必死に抗おうとするも、カレレは「問題ないです!」と何故かキリッと真剣な表情で断言し、更に厄介なことにカレレの両親までもが何故かノリノリなのだ。
「ミチト様、是非ともうちの娘も、御娶り下さい!」
「是非、第五夫人に!」
どうなってるの、この人たち!?
五人の花嫁たちが、僕に迫る。
「ミチト!」
「ミ、ミチト!」
「ミチト!」
「ミチト!」
「ミチト様!」
「家族が欲しいとは言ったけど、こういうことじゃなあああああい!」
堪らず教会から逃げ出す僕の悲痛な叫び声が、青空に響いたのだった。
―完―
最後までお読みいただきありがとうございました! お餅ミトコンドリアです。
新しく以下の作品を書き始めました。
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