11.「ドラファの四十六億年(1)」
「その名で呼ぶのは止めるのじゃ。今の妾にはドラファという名前があるからのう」
「そうだったな。ならばそうしよう」
人間たちとモンスター双方が、突如現れた神の想像を絶する巨躯に呆然とする中、ドラファは神と平然と会話し続ける。
「皆の者。全知全能の神として告げる。レジェンドドラゴン――ドラファの過去を。四十六億年前――」
「まぁ待て。そういうことだと思ったのじゃ」
神を制止したドラファは、深い溜め息をつく。
「どうせバラされるなら、妾自ら話すのじゃ。この四十六億年の間に何があったのかを」
「……ドラファ……?」
戸惑う僕の前で、観念したかのように目を瞑り、開けた彼女は、大勢のモンスターと人間に対して語り掛け始めた。
※―※―※
「この宇宙を創ったのはそこにおる神じゃ。全ては奴の思うがまま、創造された。が、その中で、一つだけイレギュラーがあった。それが妾じゃ」
ドラファによると、彼女は、今僕らがいるこの星の誕生と同時に、四十六億年前に生まれたらしい。
「当時の妾は、ただ破壊衝動のみで動いておったのじゃ。当時の妾の記憶は曖昧じゃ。まるで靄が掛かっておるような感じでのう。破壊しては、移動して。まだ破壊されていない物を見付けては、また破壊して。その繰り返しじゃ。生き物は勿論、山などの自然もことごとく壊してのう。ただ本能の赴くままに破壊を繰り返しておったのじゃ。そのため、他の生き物が生まれることがあっても、すぐさま妾によって滅ぼされるため、長く存続する生物などおらんかったのじゃ」
そんな彼女は、神から〝滅殺竜〟と呼ばれていた。
ドラファの力は、誕生した瞬間から、どんどん膨れ上がっていった。
最初は、まだこの星の上で暴れ回るだけだったのだが、一億年、二億年と時間が経つにつれて、他の星へと赴き、破壊し尽くすようになった。
十億年、二十億年が経過すると、星そのものを壊してしまうようになった。
三十億年、四十億年経過時には銀河すらも破壊するように。
最初の内は見逃していた神だったが、このままではせっかく創った宇宙そのものが破壊されかねないと思って、あるものをドラファに与えた。
それは――
「〝寿命〟じゃ」
「!」
二千年前――つまり、誕生から四十六億年後に、神によって〝寿命〟を与えられて、ドラファは死んだ。
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