招待状
一方その頃――。
漆黒の雲が渦巻く魔王城、その奥深くにある広間の円卓には、三人の猛者が座していた。
そこに並ぶは、魔王、帝国の勇者、そして獅子王。
魔王は杯を持ち上げ、愉快そうに笑う。
「よくぞ、この提案に乗ってくれたな、獅子王」
豪放な笑い声を響かせ、獅子王が牙を覗かせた。
「我らは戦の申し子よ。平和などという退屈なものに興味はない」
「そういうところが――好きなんだよなぁ」
勇者がにやりと口角を吊り上げると、三人は互いに笑い声を重ねた。
その笑みの裏には、次なる侵攻を企む闇が潜んでいた。
朝
リュスティア王国、王都。〈わし亭宿〉の一室では、サテンとユナがふかふかの布団に身を沈め、夢の中に沈み込んでいた。
カンカンカン!
「朝だ! 起きろ!」
怒号のような音と共に、扉を叩き開けて入ってきたのはユールとマイナだった。
「……やめろよ。めっちゃいい感じに寝てたのに」
サテンが枕を抱えたまま、不満げに顔をしかめる。
「んー……んー……」
ユナは目をこすりながら、まだ夢の名残を手放そうとしない。
「ほら、立て! 今日もやることが山ほどあるぞ」
マイナの声に、二人はしぶしぶ布団から這い出すのだった。
その後、サテンたちは冒険者ギルドに赴き、ルーフェリアとレオナードへ送る招待状をしたためていた。
「王都ではな、こういう時は〈転送機〉を使うんだ」
ユールが説明しながら、魔法陣の刻まれた台座に紙を載せる。
「魔力を込めて宛先――建物や人の姿を明確に想像すれば、世界中どこへでも届く。すごい技術だろ?」
「すげぇ……こんなの初めて見たよ」サテンが素直に感嘆する。
「ぷっ、サテンって本当に遅れてるね!」ユナがからかい、舌を出した。
「じゃあ、送るぞ」
ユールが魔力を注ぐと、光が走り、二通の封筒が音もなく消え去った。
その瞬間――。
エルフの森、静かな書斎に座していたルーフェリアの目の前に、ひらりと封書が現れた。
「きゃっ! な、なんだ……!? ……これはリュスティア王国の押印?」
驚きながらも手に取った彼女の目が、真剣な光を帯びていく。
同じ頃、グランバルド王国。
書類をまとめていたレオナードの額に、突然硬いものが落ちてきた。
「痛っ……なんだ急に……?」
拾い上げて目を凝らす。そこには確かにリュスティア王国の印が刻まれていた。
「……ふむ、招待状、か」
彼の口元に、静かに微笑が浮かぶのだった。
エルフの森、静かな議事の間。
ルーフェリアは届いた招待状を読み終えると、瞳を大きく見開いた。
「なるほど……! ついにドワーフとの同盟も結ばれ、三ヵ国同盟が成ったのですね!」
その声には希望が宿っていたが、すぐに険しさが混じる。
「ですが同時に、魔族、帝国、そして獣人族までもが攻めてきている……。これは悠長にしてはいられません。急ぎ、王都へ向かわねば!」
彼女は席を立ち、側近に指示を飛ばし始めた。
グランバルド王国。
戴冠から日も浅いレオナードは、玉座の間で封を切った招待状を手に、重々しく息を吐いた。
「帰還して早々に……これほどの災難とはな」
だがその声音に迷いはなく、むしろ炎のような決意が滲む。
「そうとなれば、我が務めはひとつ。至高の武器を作り、鍛え上げ……サテンたちに合流するのみ!」
傍らに控えていた近臣が驚いたように目を見開く。
レオナードはすでに腰を上げ、工房へ向かって歩き出していた。
「王たる前に、我は鍛冶師である。今こそその腕を尽くす時だ!」
かくして、エルフの長と新たな王――
それぞれが国を背に立ち上がり、リュスティア王国へと歩みを進める準備を始めるのだった。




