平和を阻む者たち
サテンたちはリュスティア王国へ向けて旅立った。
「久しぶりのリュスティア王国だな!すごい懐かしいよ」
マイナが馬車の窓から見える風景に目を細める。
「グランバルド王国では、本当に色々あったからな」ユールが深く息をつき、肩を伸ばした。
「でも、目的は全部達成できたよね!」サナが嬉しそうに笑う。
サテンはしみじみと呟いた。
「そうだな……でも、久しぶりにこの四人だけってのは寂しいな。この前までドルガンやセレナが一緒だったし」
「おい、サテン!やめろよ」マイナが慌てて声を上げる。
「寂しくなってきたじゃねーか!」
「また行こうぜ、グランバルド王国に!今度は同盟国だし、すんなり入れてくれるだろ!」
「国王の友達ってことで、来賓扱いで行けるかもしれないな」ユールが冗談めかして言えば、サナが微笑む。
「それはレオナードさん次第だね」
馬車はゆっくりと進み、彼らは思い出話をしながら、少しずつ寂しさを和らげていった。
数日が過ぎ、ついにリュスティア王国の近くまで戻ってきた。
「なあ、王都に戻る前に少し休まないか?」サテンが提案する。
「賛成!」ユールとマイナが声を揃えた。
「このまま戻ったら、絶対すぐ部隊に駆り出されるだろ。さすがに疲れすぎだ」
「だな。寄り道しても罰は当たらんさ」サテンが笑う。
そうして彼らは王都に向かう前に、公爵領で一息つくことにした。
だが、公爵領を一望できる丘に立ったサテンは眉をひそめた。
「ん?……なんか様子がおかしくないか?」
「確かに……活気がまるでない」サナが周囲を見渡す。
「おいおい!これ襲撃された跡だぞ!」マイナが指差した先には、半壊した建物の群れが見えた。
「急がないと……」ユールの声に一行は駆け下りる。
領地の門前には、多くの人々が集まっていた。サテンたちの姿を認めると、誰かが叫ぶ。
「あれは……サテン様!」
「何があったんだ?」サテンが駆け寄る。
震える声で答える男性。
「奴隷商人が……奴らが男は殺し女子供を連れ去りました。しかし……今回は様子が違うのです。魔族と……帝国の勇者が一緒にいたのです」
「奴隷商人……ってことは獣人か」ユールが険しい顔をする。
「三つの勢力が手を組んでるってことか?」マイナが低く唸る。
サテンは拳を握りしめた。
「やばいな……」
サテンたちは休む間もなく、領地内に散らばる瓦礫や倒れている人々を探し始めた。
「……これはひどいな」サテンが呟く。崩れかけた城を見上げて顔をしかめる。
「城まで潰されてる。これ、勇者の力か?」
「多分そうだな」ユールが答える声は重い。「相当強力な奴だ」
「おい!こっちに倒れてる人がいる!」マイナが叫ぶ。
瓦礫に挟まれ、動けなくなっている人の姿があった。
「今行く!」サテンが駆け寄り、力を込めて瓦礫を押しのける。
「大丈夫、今助けるから!」サナはすぐに回復魔法を施す。
その後も、領地内で呻き声を上げる者、力尽きて倒れている者が次々と見つかった。
「よく見たら……結構倒れてるな。急ぐぞ!」サテンが仲間たちを鼓舞する。
門の前にいた住民たちも加わり、必死の救助活動が続いた。
やがて、生き残った人々も、既に息絶えた者たちも、全員を門前へと運び出すことに成功した。
サテンは静かに拳を握りしめた。
「……許されることじゃないな」
「本当に……」マイナも険しい表情を見せる。
「休んでる場合じゃなくなったな」
サテンは立ち上がり、仲間を見渡す。
「王都へ急ごう」
決意を込めたその言葉に、誰もが黙って頷いた。
帝国、魔族、獣人――三つの勢力が手を組んだ脅威を、リュスティア王国に伝えなければならない。
そして、このまま黙ってはいられなかった。
サテンたちがグランバルド王国と同盟を結んだという噂は、既に広まっていた。
それは平和を願う者たちに希望を与えたが、同時に、平和を望まぬ者たちを刺激することにもなった。
魔族、帝国、そして獣人族――彼らはこの新たな同盟を阻むため、動き出していたのだった。




