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ナミエル戦 終


セレナを救い出した直後、

サテンたちが息を整える暇もなく、

ズシン……!と大地が震えた。


視線の先、ナミエルがゆっくりと振り返る。


さっきまでドルガンが耐え抜いてた戦いだった。

しかし――次の瞬間。


「……っ!」

ドルガンが踏み込み、渾身の一撃を放とうとした瞬間だった。


ナミエルはふっと姿を消す。

そして――


ドゴォォンッ!!!


光速にも等しい掌底がドルガンの腹を抉った。


「ぐはッ……!!」

大地を削りながら十数メートル後方へ吹き飛ばされたドルガンは、

巨岩を砕いて倒れ込み、そのまま意識を失った。


ナミエルはゆっくりと振り返り、

真紅の瞳でサテンたちを見据える。


「……五つ子を壊したわね。」


その声音は、氷より冷たく、剣より鋭かった。

怒りというより――“感情を超えた執念”のような何かだった。


彼女は翼をたたみ、まるで散歩でもするかのような優雅さで歩みを進める。

一歩、また一歩とサテンたちに近づくたび、

草原全体が重圧に押し潰されるように空気が震えていく。


「お前たち……殺す順番、決めた方がいいかしら?」


サナたちは全身が竦むのを感じた。

それほどまでに、圧倒的な威圧感があった。


サテンは木の棒を握り直し、仲間を振り返る。


「ここから先は、俺がやる。」


「えっ!?」サナが目を見開く。

「サテン、一人でなんて無茶だよ! みんなで――」


「違う。」サテンの声は低く、しかし揺るぎなかった。

「これは俺の戦いだ。……お前らを守りながらは無理そうだ。」


マイナも悔しそうに唇を噛みしめる。

「……わかってるけど、なんか悔しいわね。」


ユールは視線を落とし、小さく呟く。

「……勝てるのかよ、あんな化け物に。」


「勝つさ。」

サテンは短く言い切った。


サテンとナミエルの距離、およそ十五メートル。

風が止み、草原の音が消える。

ただ、二人の呼吸音だけが響く。


ナミエルが妖艶に微笑んだ。

「あなた……面白いわね。

 他の小虫と違って、怯えてない。」


「怯える暇があったら、木の棒を振る。」

サテンが構えを取る。


ナミエルは長いまつ毛を伏せ、小さくため息を吐いた。

「じゃあ――遊んであげる。」


激突


ズドンッ!!!


次の瞬間、サテンの姿が消えた。

同時にナミエルの足元が陥没し、砂埃が舞い上がる。


サテンの木の棒がナミエルの頸動脈を狙って閃く――

だがナミエルはそれを片手で掴み止めた。


「速い……でも軽いわね。」

「ッ……くそ!」


サテンは即座に木の棒を引き、神力を込めた斬撃を放つ。

青白い光が奔り、空間を裂く。


ナミエルは一歩後ろへ下がりながら指先を動かすと、

**光のセラフィック・ウォール**を瞬時に展開し、

その斬撃を受け止めた。


ドガァァァァンッ!!


大地が爆ぜ、衝撃波が草原をえぐる。


だが、サテンは間髪入れず飛び込んだ。

ナミエルの顔面を狙って渾身の一撃――!


「《神牙・双閃》ッ!!」


二連撃の閃光が走り、ナミエルの右肩をかすめた。

白銀の羽根が一枚、ひらりと舞う。


ナミエルが初めて目を細めた。

「……ほう。かすり傷をつけるなんて、久しぶりね。」


サテンは呼吸を整えつつ、汗を拭う暇もなく構え直す。

一方のナミエルは、まだ本気の一割も出していない。

だが、彼女の表情からは余裕の笑みが消えていた。


「あなた……やっぱり普通の人間じゃないわね。」

ナミエルの紅い瞳がサテンを見据える。

「あなた、何者?」


サテンの瞳がわずかに揺れる。

しかし、返答する時間はなかった。


ナミエルの背後で六枚の光翼が展開する。

草原を揺らすほどの魔力の奔流。

次の瞬間――


「じゃあ、ちょっとだけ本気を見せてあげる。」


空気が震えた。

この時点で、サテンは初めて背筋を冷たい汗が伝うのを感じていた。


ナミエルの六枚の光翼が完全に展開された。

黄金の羽根が散り、空間が震える。

地平線の彼方まで広がる草原が、まるで世界ごと揺さぶられるような感覚に包まれる。


「……行くわよ、サテン。」

「来い、ナミエル。」


ズガァァァァンッ!!


二人の衝突と同時に大気が弾け、轟音が響き渡る。

ナミエルの光剣が放つ一撃は、空を裂き、地をえぐる。

サテンは神力を**最大出力の10%**まで解放し、ギリギリの反応速度で迎え撃つ。


「《神牙・烈閃》ッ!!」

サテンの木の棒から青白い神力が爆ぜる。


ナミエルは天使族最強の魔術セラフィム・ジャッジメントを詠唱し、

幾億もの光の矢を放つ。


サテンはそれを切り裂きながら突進する。

互いの一撃はすべてが命を奪いかねない必殺。

しかし――拮抗していた。


「はぁ……はぁ……ッ!」

サテンの呼吸が荒くなる。

神力10%とはいえ、今の身体には限界を超えた負荷だ。

だが、退くわけにはいかない。


ナミエルの額にも、初めて汗が滲んでいた。

「あなた、本当に人間なの……?」

「さぁな……」


次の瞬間、サテンの脳裏に激しい閃光が走る。


――そして、意識が揺らぐ。




神々の世界 ― 遥かなる記憶


果てしない蒼穹の下、純白の宮殿がそびえ立つ。

最高神の間。

そこには、かつてのサテン――いや、最高神サテスが座していた。


円卓を囲むのは、転生神リュミナをはじめとした十数柱の神々。

サテスが口を開く。


「今回は、新しい世界を創造する。」

その声は深く、厳かで、すべてを統べる響きを持っていた。


「種族は――人間、エルフ、ドワーフ、人魚族、魔族、獣人族、竜人族……

 そして、天使族を創る。」


神々がざわめく。

多種族世界は、これが初の試みだった。


サテスは続けた。

「種族の長には、我ら神々の姿と知恵、そして力の一部を分け与える。

 均衡を保ち、争いを最小限に抑えるためだ。」


リュミナが微笑む。

「では、天使族は誰をモデルに?」


サテスは静かに目を伏せ、

そして、わずかに寂しげな微笑みを浮かべた。


「……我がかつての側近、ナミエルだ。」


場に沈黙が走る。


「若くして失われた魂だ。だが――この世界では導く者として、もう一度役割を与えたい。」


神々は頷き、一斉に賛同の意を示した。

その時、サテスの胸の奥で確かに願った。


――どうか、今度こそ幸せに。

――どうか、迷わずに。




現実世界


閃光が収まり、サテンは現在へ戻った。

ナミエルの光剣が迫る。

サテンは神力を極限まで高め、最後の一撃にすべてを込める。


「これで終わりだ、ナミエルッ!!」


木の棒を振り下ろす瞬間、サテンは静かに呟いた。


「……お前は、導けなかった。

 他人に二千年という業を背負わせて……

 失敗だったかもしれないな。」


ナミエルの動きが一瞬止まる。

サテンの瞳が揺れる。


「だが――それでも、お前は俺の大切な天使だった。

 今まで、ありがとう……俺のナミエル。」


ナミエルはサテンの言葉を理解できなかった。

記憶はない。だが――その声音に、確かに懐かしさを感じた。


そして、微笑む。


「……そう、なのね……」


ズバァァァァンッ!!


サテンの大技《神牙・終焉閃》がナミエルを貫いた。

光翼が霧散し、羽根が舞う。


ナミエルは静かに崩れ落ち、

その瞳から一筋の涙が零れた。


サテンは木の棒を納め、目を閉じた。

「……さよならだ、ナミエル。」


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